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巻線機

はじめに

巻線機はワインダーとも呼ばれ、繊維、鉄鋼、プラスチックの各産業のほかに、パルプ産業や製紙業でも使用されます。

多くの巻線機において重要なことは、巻線機で巻き上げる材料にかかる力を一定に維持することです。このため、巻線機を構成するローラーの半径の大きさに応じて、材料を巻き上げる巻線機のトルクを比例的に制御する必要があります。ここでは、材料が一定の速度で巻線機に供給されているものと仮定します。このことは、巻線機の角速度が、ローラーの半径の大きさに応じて、比例的に変化しなければならない (ローラーの半径が大きくなると、巻線機の角速度を小さくする) ことを意味します。巻線機の機械トルクと角速度の積が一定であるので、巻線機は一定の電力により駆動します。

巻線機の説明

以下の図は巻線機の構成を示します。ここで、W はローラーの幅、r1 は巻線の芯の半径、r2 はローラーの半径、MT は材料の厚さを表します。

巻線機の構成

前述の巻線機の物理量の他に、シミュレーションには、以下のパラメーターや変数が必要になります。

MV

単位体積あたりの材料の質量

L

材料の長さ

M

材料の質量

Jr

材料の慣性モーメント

Jc

巻線の芯の慣性モーメント

Bω

巻線機の粘性摩擦係数

巻線機の制御システムを表す図

巻線機の制御システムを表す図は、上記の巻線機に、DC モーターや減速装置を付加し、それらを制御するコントローラーから構成されるシステムを、Simulink® のモデルとして作成したものです。このシステムは、Winder Control ブロック、DC Motor Drive ブロック、Speed Reducer ブロック、および Winder Model ブロックの 4 つのブロックで構成されています。

ブロックの説明

Winder Model ブロック

このブロックは、以下の関係式を使って、巻線機の動特性を表したモデルです。

ローラーの表面速度S

S=ωr2

ここで ω は巻線機の角速度です。

材料の長さ L

L=Sdt

ローラーの半径 r2

r2=LMTπ+r12

材料の質量 M

M=MVπW(r22r12)

巻線機の慣性モーメント Jt と材料の慣性モーメント Jω の合計

Jt=Jω+Jc

ここで、

Jω=12M(r22+r12)

巻線機の角速度 ω は、次の微分方程式を使って計算されます。

Te=Jtdωdt+Bω+Tl

ここで、Tl は巻線機の負荷トルクであり、Te は DC モーターの発生トルクを表します。巻線の材料にかかる張力または力 F の計算には、上記と同じ差分方程式を利用します。ここで、負荷トルクは Tl = F·r2 と表されます。以上のことから、上記の差分方程式を F について解くと、次式となります。

F=Te(Jtω˙)(Bω)r2

この推定された力は、Winder Control ブロックにフィードバックされ、調整されます。

上記 2 つの方程式において、項 ωJ˙t はここで検討している例では無視できることが判明しているため、省略されていることに注意してください。

Winder Control ブロック

このブロックは、巻線の材料にかかる張力を制御するための PID コントローラーを含んでいます。この Winder Control ブロックの出力は、巻線機を動かす DC モーター ドライブのトルク指令値となります。また、Winder Control ブロックに示す Winder Control ブロックには、巻線機に材料を一定速度で供給する外部過程の張力-速度特性が含まれています。この「張力-トルク特性」は、ある一定のローラーの表面速度 Ls における巻線の基準物質にかかる張力 T の比に等しい傾きをもつ直線で表されます。

Winder Control ブロック

DC Motor Drive ブロック

このブロックには、三相電圧源をもつ、2 象限動作をする三相整流回路、DC モーターから構成される DC モーター駆動システムを表したモデルです。DC モーター ドライブは定格値が 5hp、220V、50Hz であり、トルク制御が行われます。

Speed Reducer ブロック

DC モーターは、減速装置 (Speed Reducer ブロック) を介して巻線機に接続されています。この減速装置の減速比は 10 です。つまり、巻線機はモーターよりも 10 倍遅い速度で回転することになります。一方、巻線機はモーターよりも 10 倍大きなトルクになります。この例では、巻線機が必要とするトルクは、およそ 200N.m です。

シミュレーション結果

巻線機の制御システムを表すサンプル モデル、cs_winder を開きます。シミュレーション パラメーターは、ロール幅が 10 m の紙巻器のものを表します。ファイルを開き、Simulink でマスク設定された Winder Model ブロック、Winder Control ブロック、DC Motor Drive ブロック、Speed Reducer ブロックのパラメーターを確認してください。Winder Control ブロックにおいて、張力の指令値は 300 N であり、ローラーの表面速度の指令値は 5 m/s であることがわかります。

張力の指令値の変化の割合は、内部で 25N/s に制限されるので、張力の指令値が最終値 (300N) に到達するのに 12s 必要になります。cs_winder.mdl のシミュレーションの時間ステップは、減速装置 (Speed Reducer ブロック) の影響を考慮して、1µs と設定することに注意してください。この Speed Reducer ブロックは、最小のシミュレーション時間ステップを必要とするブロックです。

シミュレーションを開始し、材料にかかる張力とその表面速度がそれぞれ、材料にかかる張力ローラーの表面速度に指定された値にどれだけ良好に追従するのかを観測します。巻線機の角速度、機械的トルク、出力 」は、巻線機の角速度、機械的トルク、出力電力を示します。動作点 (300N、5m/s) に到達すると、その後は角速度が減少し、トルクが増加します。ただし、機械的な出力はほぼ一定の関係を満たしながら、角速度とトルクが両方とも線形的に変化することに注意してください。機械動力が正確に一定でなく、僅かに減少する理由は、巻線機がもつ粘性摩擦の影響により、巻線機の速度がわずかに減少しますが、この粘性摩擦の影響による損失部分で、巻線機を駆動するための電力の一部が使われているためです。

材料にかかる張力

ローラーの表面速度

巻線機の角速度、機械的トルク、出力