Main Content

このページの内容は最新ではありません。最新版の英語を参照するには、ここをクリックします。

風力発電プラント - 二重供給誘導発電機 (DFIG) フェーザ モデル

この例では、風力タービンで駆動する二重供給誘導発電機 (DFIG) を使用した、9 MW 風力発電プラントのフェーザ シミュレーションを示します。

Richard Gagnon, Bernard Saulnier, Alain Forcione (Hydro-Quebec)

メモ: この例では DFIG 風力タービンの汎用モデルを使用します。このモデルは教育的および学術的作業に有用です。

説明

6 つの 1.5 MW 風力タービンで構成される 9 MW 風力発電プラントが 25 kV 配電システムに接続され、30 km 25 kV のフィーダーを通して 120 kV の送電系統に電力を搬送します。モーター負荷 (0.93 PF での 1.68 MW 誘導モーター) と 200 kW の抵抗負荷で構成される 2300 V、2 MVA のプラントが、母線 B25 で同じフィーダーに接続されています。風力タービンとモーター負荷は、電圧、電流、マシンの速度をモニターする保護システムをもちます。DFIG の DC リンク電圧もモニターされます。

風力タービンは、巻線形誘導発電機と AC/DC/AC IGBT を利用する PWM コンバーターで構成される、二重供給誘導発電機 (DFIG) を使用します。固定子巻線は 60 Hz グリッドに直接接続されますが、回転子は AC/DC/AC コンバーターから可変周波数で供給されます。DFIG 技術では、タービンの速度を最適化すると、低速の風から最大のエネルギーを取り出すことが可能になります。また、突風のときにタービンにかかる機械的なストレスを最小化します。特定の風速に対し最大の機械的エネルギーを生成する最適のタービン速度は、風速に比例します。風速が 10 m/s より低い場合、回転子は同期速度よりもゆっくり回転します。風速が高くなると、回転子は同期速度よりも速く回転します。タービン メニューを開き、[Turbine data] を選択して [Display wind-turbine power characteristics] をオンにします。タービンの機械動力がタービン速度の関数として、5 m/s から 16.2 m/s までの風速に対し表示されます。DFIG は、赤い曲線に従うように制御されます。タービンの速度の最適化は、この曲線の点 B と点 C 間で得られます。DFIG テクノロジーのもう 1 つの利点は、パワー エレクトロニクス コンバーターが無効電力を生成または吸収できることです。したがって、かご形誘導発電機の場合のように、コンデンサ バンクをインストールする必要がなくなります。

風力タービン モデルは、長いシミュレーション時間で過渡安定性のタイプを調べることができるフェーザ モデルです。この例では、システムは 50 秒間観察されます。

Wind Turbine ブロックのメニューを開き、タービン、発電機およびコンバーター (送電系統側と回転子側) 用に指定されている 4 組のパラメーターを確認します。6 つの風力タービンの発電プラントは、以下の 3 つのパラメーターを次のように 6 倍することによって、単一の Wind Turbine ブロックでシミュレーションが実行されます。

1. 風力タービンの定格機械出力: 6*1.5e6 ワットを [Turbine data] メニューで指定

2. 発電機の定格の電力: 6*1.5/0.9 MVA (0.9 PF で 6*1.5 MW) を [Generator data] メニューで指定

3. 基準の母線 DC のコンデンサ: 6*10000 マイクロファラッドを [Converters data] メニューで指定

また、[制御パラメーター] メニューで、[Mode of operation] が [Voltage regulation] に設定されていることに注意してください。端子電圧は、基準電圧 (Vref = 1 pu) と電圧降下 (Xs = 0.02 pu) によって制御された値になります。

シミュレーション

1.風速の変化に対するタービンの応答

風速を指定する "Wind Speed" ステップ ブロックを開きます。最初、風速は 8 m/s に設定されており、その後 t = 5 秒で、風速は突然 14 m/s に増加します。シミュレーションを開始し、"Wind Turbine" スコープで信号を観察して、風力タービンの電圧、電流、発電される有効電力と無効電力、DC 母線電圧およびタービン速度をモニターします。t = 5 秒で、タービン速度の増加とともに生成される有効電力が滑らかに増加し始め、およそ 15 秒で定格値の 9 MW に達します。その時間枠において、タービンの速度は 0.8 pu から 1.21 pu まで増加することになります。はじめ、タービン翼のピッチ角は 0°で、タービンの動作点は点 D までタービンの電力特性の赤い曲線に従います。次に、ピッチ角は 0°から 0.76°まで増加し、機械動力を制限します。電圧と生成された無効電力も観測してください。無効電力は、1pu 電圧を維持するように制御されます。基準電力で、風力タービンは 0.68Mvar (生成される Q = -0.68Mvar) を吸収して、1pu で電圧を制御します。[Generated reactive power Qref] を 0 に設定して動作モードを [Var regulation] に変更すると、風力タービンが一定の力率で定格電力を生成するときに、電圧が 1.021 pu まで増加することが観測されます。

2. 120 kV システムにおける電圧低下のシミュレーション

ここでは、120 kV システムにおいて遠隔の障害により生じる電圧低下の影響を観測します。まず、Wind Speed ステップ ブロックで、[最終値] を 14 から 8 m/s に変更して風速のステップを無効にします。次に、120 kV 電圧源のメニューを開きます。パラメーター [Time variation of] で、[振幅] を選択します。t = 5 秒で、0.15 pu の電圧低下が 0.5 秒間発生するようプログラムされています。制御モードが Var regulation で Qref = 0 のままであることを確認します。シミュレーションを開始し、"Grid" スコープを開きます。モーター回転数の他にプラントの電圧と電流を観測してください。風力発電プラントが 1.87MW を発電することに注意してください。t = 5 秒で、電圧は 0.9 pu よりも低下し、t = 5.22 秒で、保護システムはプラントを回路から切断します。これは、0.2 秒を超えて続く電圧低下が検出されたためです ("Plant" サブシステムの保護設定とステータスを確かめてください)。プラントの電流は 0 まで低下し、モーター回転数が徐々に減少します。一方、風力発電プラントは 1.87MW の電力レベルで生成を続けます。プラントが始動後、電力 1.25MW (母線 B25 で測定される P_B25) がグリッドに送られます。

次に、風力タービンの制御モードを [Voltage regulation] に変え、テストを繰り返します。プラントが動作していないことがわかります。これは、電圧低下の間に風力タービンで生成される 5 Mvar の無効電力が供給する電圧維持により、プラント電圧が保護しきい値 0.9 pu より高く保たれるためです。電圧低下中のプラント電圧は、ここでは 0.93 pu となります。

3. 25 kV システムにおける故障のシミュレーション

最後に、B25 母線の 25 kV 送電線で起こる、単相対地故障の影響を観測します。まず、120 kV の電圧ステップを無効化します。次に、"Fault" ブロックのメニューを開いて [Phase A Fault] を選択します。9 サイクルの単相地絡故障を t = 5 秒で適用するよう、故障がプログラムされていることを確認します。

風力タービンが "Voltage regulation" モードのとき、風力タービン端子の正相電圧 (V1_B575) は故障中に 0.8 pu へと低下することが観察されますが、これは不足電圧保護のしきい値 ( t > 0.1 秒のときに 0.75 pu) よりも高い値です。したがって、風力発電プラントは稼動状態のままとなります。しかし、 "Var regulation" モードが Qref = 0 で使用されると、電圧は 0.7 pu よりも低下し、不足電圧保護により風力発電プラントが回路から切断されます。ここで、タービンの速度の増加が観測できます。t = 40 秒でピッチ角が増加しはじめ、速度を制限します。

初期条件の再生成

この例は、シミュレーションが定常状態で開始されるようにすべて初期化された状態でセットアップされています。初期条件は、"WindFarmDFIGPhasorModel.mat" ファイルに保存されています。このモデルを開くと、InitFcn コールバック ([モデル プロパティ]、[コールバック] 内) によってこの .mat ファイルの内容 ("xInitial" 変数) がワークスペースに自動的に読み込まれます。

このモデルを変更するか、電力コンポーネントのパラメーター値を変更すると、"xInitial" 変数に保存された初期条件は無効になり、Simulink® によりエラー メッセージが表示されます。変更したモデルの初期条件を再生成するには、以下に示した手順に従います。

1. [コンフィギュレーション パラメーター] ペインで、[初期状態] パラメーターをオフにして、[最終状態] パラメーターをオンにします。

2. "Wind Speed (m/s)" というラベルの付いた Step ブロックをダブルクリックし、ステップ時間を 100 で乗算して、風速の変更を一時的に無効にします。

3. Breaker ブロックをダブルクリックして、故障が一切適用されないようにします (A、B、C 各相のチェック ボックスをオンにしない)。

4. 120 kV 電圧源ブロックをダブルクリックして、[Time variation of] パラメーターが必ず [なし] に設定されるようにします。

5. シミュレーションを開始します。シミュレーションが完了したら、スコープに表示される波形を観察して、定常状態に達したことを確認します。"xFinal" 配列に保存されている最終状態は、次回のシミュレーションで初期状態として使用できます。次の 2 つのコマンドを実行すると、これらの最終状態が "xInitial" にコピーされ、この変数が新しいファイル (MyModelInit.mat) に保存されます。

>> xInitial=xFinal;
>> save MyModelInit xInitial

6. [モデル プロパティ] ペインの [InitFcn] ウィンドウで、"xInitial = init_WindFarmDFIGPhasorModel;" を "load myModel_init.mat" に置き換えます。次回、このモデルを開くと、MyModelInit.mat ファイルに保存された変数 xInitial がワークスペースに読み込まれます。

7.[コンフィギュレーション パラメーター] ペインで、[初期状態] をオンにします。

8. シミュレーションを開始し、モデルが定常状態で開始したことを確認します。

9. "Wind Speed (m/s)" というラベルの付いた Step ブロックをダブルクリックし、t = 5 秒での風速の変更を再度有効にします (100 の増倍率を削除)。

10. モデルを保存します。