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2 レベルの PWM コンバーターとむだ時間

この例では、50 kW マイクロタービンで使用される 2 レベル コンバーターの高調波歪みに対するむだ時間の影響を示します。

説明

回路は、600 V 電力グリッドに接続された 480 V、50 kW マイクロタービンの DC から AC への変換ユニットを表します。この例の目的はインバーターによって生成される高次数の高調波を示すことなので、ガス タービンと永久磁石発電機のゆっくりしたダイナミクスは表現されていません。Turbine-Generator-Rectifier グループは、要求された DC 電源を DC 母線に投入する簡単な DC 電流源としてモデル化されています。インバーターは、PWM、2 レベル IGBT コンバーターを使用します (Universal Bridge ブロックを使用)。SPWM 変調器は、15 kHz の搬送周波数を使用します。制御システムは、次の 2 つの制御器を使用します。母線 B2 の電流を制御する内部電流ループおよび DC 母線電圧を制御する DC 電圧レギュレーター。LC フィルターを使用して、480 V 母線 B2 で発生する高調波電圧 (15 kHz の整数倍である高調波周波数) を減少させます。1 Ω の抵抗が分離フィルターの 30 uF コンデンサに直列に接続されています。これらの抵抗は、LC フィルターによって生じる共振 (1.9 kHz) から発生する特性情報のない低次数の高調波をダンプするために使用します。

理想的なスイッチを使用する 2 レベル電圧源コンバーター (VSC) では、各アームの上部および下部 IGBT に送信される 2 つのパルスは相補的である場合があります。しかし、実際の VSC では、蓄積効果のために半導体スイッチがオフになるのが遅れます。したがって、その他の IGBT のスイッチをオンにする前にオフになる IGBT を完全に消去するには、数マイクロ秒の遅延 (蓄積時間 + 安全余裕) が必要です。そうしないと、DC 母線で短絡が発生することがあります。むだ時間は、コンバーター ブロックのパルス入力に On/Off Delay ブロックを導入することによってモデル化されます。そのブロックで指定された遅延がパルスの立ち上がりエッジに適用されます。

15 kHz のスイッチング周波数で許容可能な精度を満たすため、サンプル時間 Ts_Power = 0.5 マイクロ秒を使用して回路を離散化します。離散制御システムは、より長いサンプル時間を使用します (Ts_Control = 50 マイクロ秒)。

シミュレーション

1.むだ時間 0 でのシミュレーション

シミュレーションを開始し、Scope ブロックで電圧、電流、電力、および制御信号を観察します。シミュレーションは自動的に初期化されており、定常状態で開始されます。一定の力率で電力を生成するために q 軸電流 Iq_ref が電流制御器コントローラー内部で 0 に設定されます。したがって、母線 B2 (トレース 1) の電圧と電力は同相です。DC 電圧 (トレース 4) は 900 V で調整されます。トレース 3 では、電力需要 (50 kW の基準電力に設定) および母線 B2 の測定出力電力 (コンバーターとフィルターで 1 kW 失われるので 49 kW) を観察できます。

シミュレーションが完了した後、Powergui を開いて [FFT Analysis] を選択し、ScopeData 構造体 (Scope ブロックで指定された変数) に保存された信号の周波数スペクトルを表示します。入力 VaIa_B2 (pu) および信号番号 1 が選択されていることを確認します。FFT は母線 B2 の A 相電圧の最終サイクルで実行されます。次に、[表示] をクリックして、0 ~ 50000 Hz の周波数スペクトルを観察します。予期したとおり、高調波が主にスイッチング周波数 (15 kHz) の倍数の周囲で観察されます。全高調波歪み (THD) がスペクトルの上に表示されます (THD = 0.75%)。THD は、シミュレーション中に "Discrete THD" ブロック (Scope1 のトレース 5) によっても測定されます。

2. 高調波歪みのむだ時間の影響

次に、手動スイッチを上の位置に動かして、点弧パルスに 1 マイクロ秒のむだ時間を適用します。最大 3 マイクロ秒までシミュレーションと FFT 解析を繰り返します。むだ時間が増えると THD が増加することが確認できます。周波数解析の結果が、0 ~ 3 マイクロ秒の間のむだ時間のモデルのテーブルに表示されます。この表は、むだ時間が増えたとき、メイン周波数特性の振幅 (15 kHz 前後) が大きく異ならないことを示します。THD の増加は、主に低次数の高調波 (主に第 5 次、第 7 次、および第 11 次) によって発生します。3 マイクロ秒のむだ時間の場合、THD は 0.74% から 1.75% に増加します。テーブルでは、むだ時間が増えると変調指数が増加し、DC 電圧の使用効率が低下することも確認できます。900 V DC 電圧では、むだ時間が 3 マイクロ秒以上に増えると、変調指数が 1 以上になり、過変調によって追加の歪みが生じます。"Power Demand" 定数ブロックと "Vdc_ref" 定数ブロック (Control System 内) で新しい値を指定することによって、異なる電力出力と DC 電圧の高調波歪みを確認できます。

初期条件の再生成

このモデルを定常状態で開始するために必要な初期状態は、"TwoLevelPWMConverter.mat" ファイルに保存されています。このモデルを開くと、InitFcn コールバック ([モデル プロパティ]、[コールバック] 内) によってこの .mat ファイルの内容 ("xInitial" 変数) がワークスペースに自動的に読み込まれます。

このモデルを変更するか、電力コンポーネントのパラメーター値を変更すると、"xInitial" 変数に保存された初期条件は無効になり、Simulink® によりエラー メッセージが表示されます。変更したモデルの初期条件を再生成するには、以下に示した手順に従います。

1. [シミュレーション]、[コンフィギュレーション パラメーター]、[データのインポート/エクスポート] パラメーター メニューで、[初期状態] をオフにします。

2. シミュレーション終了時間を 1 秒に変更します。60 Hz 電圧源位相角の初期条件を生成するには、停止時間が 60 Hz サイクルの整数である必要があります。

3. シミュレーション モードを "ノーマル" から "アクセラレータ" に変更します。

4. シミュレーションを開始します。シミュレーションが完了した後、スコープに表示された波形を見て、定常状態に達したことを確認します。最終状態は、時間と共に "xFinal" 構造体に保存され、次回のシミュレーションの初期状態として使用できます。次の 2 つのコマンドを実行すると、これらの最終状態が "xInitial" にコピーされ、この変数が新しいファイル (myModel_init.mat) に保存されます。

>> xInitial=xFinal;
>> save myModel_init xInitial

5. [ファイル]、[モデル プロパティ]、[コールバック]、[InitFcn] ウィンドウで、初期化ファイルの名前を "TwoLevelPWMConverter.mat" から "myModel_init.mat" に変更します。次回、このモデルを開くと、myModel_init.mat ファイルに保存された変数 xInitial がワークスペースに読み込まれます。

6. [シミュレーション]、[コンフィギュレーション パラメーター] メニューで、[初期状態] をオンにします。

7.シミュレーションを開始し、モデルが定常状態で開始することを確認します。

8. シミュレーション終了時間とシミュレーション モードを元の値に戻します (0.2 秒とノーマル)。

9. モデルを保存します。