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サイリスタ制御直列コンデンサ (TCSC) フェーザ モデル

この例では、サイリスタ制御直列コンデンサ (TCSC) のフェーザ テスト システムを示します。

Dragan Jovcic (University of Aberdeen, Scotland, UK)

フェーザ TCSC モデル

このフェーザ テスト システムは、ライブラリにある TCSC サイリスタベースのテスト システムに類似しています。しかし、フェーザ モデルでは基本周波数で等価のインピーダンスを使用し、すべての過渡特性を無視するため、サイリスタ モデルほど正確ではありません。それでも、フェーザ モデルはずっと単純であり、シミュレーションの速度は高くなります。応答を詳細モデルと比較すると、定常状態におけるすべての変数がよく一致していることを観察できます。いくつかの小さな不一致は、サイリスタの抵抗や、フェーザ モデルには含められていない他の TCSC 損失が原因となっています。

説明

TCSC は、送電効率を高めるために、500 kV の長距離伝送線路に配置されます。TCSC なしの電力伝送はおよそ 110 MW で、これは、TCSC がバイパスされる最初の 0.5 秒のシミュレーションで観察されます。TCSC は、各相の基本周波数における等価インピーダンスを使用して、電圧源としてモデル化されています。ノミナル補償は 75% です。すなわち、コンデンサ (点弧角 90°) だけが想定されています。TCSC の自然発振周波数は 163 Hz で、これは基本周波数の 2.7 倍です。テスト システムは [1] に記述されています。

TCSC は容量性モードまたは誘導性モードでの動作が可能ですが、後者は実際にはあまり使用されません。この TCSC では共振が点弧角約 58°で発生するため、点弧角 49°~ 69°の範囲では操作が禁じられています。システム全体 (線路インピーダンスを含むとき) の共振は 67°あたりで起こることに注意してください。容量性モードは 69 ~ 90°の点弧角で実現します。インピーダンスは 90°で最低となります。したがって、電力伝送は点弧角が小さくなると増加します。容量性モードでは、インピーダンス値の範囲はおよそ 120 ~ 136 Ω となります。この範囲は、490 ~ 830 MW の電力伝送範囲 (100% ~ 110% の補償) と概ね対応します。補償のない線路での 110 MW の電力伝送と比較すると、TCSC では電力伝送レベルが著しく改善されています。

操作モード (誘導性/容量性/手動) を変更するには、コントロール ブロック ダイアログの切り替えスイッチを使用します。誘導性モードは 0 ~ 49°の点弧角に対応し、インピーダンスは 0°で最低となります。誘導性操作モードではインピーダンスの範囲は 19 ~ 60 Ω で、これは、電力伝送レベルの 100 ~ 85 MW の範囲に対応します。誘導性モードでは、線路上の電力伝送が減少します。一定の点弧角を適用することも可能で、上記と同じ制限が該当します。

TCSC コントロール

TCSC が一定インピーダンス モードで動作する際は、TCSC インピーダンスの計算に電圧と電流のフィードバックを使用します。指令インピーダンスは間接的に電力レベルを決定しますが、自動電力コントロール モードを導入することも可能です。

各動作モードで別々の PI コントローラーが使用されます。容量性モードではまた、位相進み補償器も使用されます。各コントローラーにはさらに、広範な動作範囲でパフォーマンスを改善するために、適応制御ループが含まれています。コントローラーのゲイン スケジュールは、インピーダンスの変化を原因とする、システムにおけるゲインの変化を補償します。

TCSC は、各相でコントロール可能な電圧源としてシミュレーションが実行されます。電圧の大きさは、等価な複素インピーダンスと線電流の積です。TCSC インピーダンスの式は、[1] に記載されています。

シミュレーション

シミュレーションを実行し、main variables と名前が付けられた Scope ブロックで波形を観察します。TCSC は容量性インピーダンス制御モードで、指令インピーダンスは 128 Ω に設定されています。最初の 0.5 秒間、TCSC はバイパスされ (回路ブレーカーを想定して)、電力伝送は 110 MW です。0.5 秒で TCSC はインピーダンスを 128 Ω に制御し始め、これによって電力伝送は 610 MW に増加します。切り替えによる線路での外乱を最小限にするため、TCSC は α = 90°で起動することに注意してください。

動的応答

2.5 秒で、指令インピーダンスに 5% の変化が加えられます。応答から、TCSC では指令インピーダンスに追従し、整定時間は約 500 ms であることがわかります。3.3 秒で、電源電圧を 4% 減少し、その後 3.8 秒で 1 p.u. に戻ります。TCSC コントローラーはこうした外乱を補償し、TCSC インピーダンスは一定に保たれることが観察されます。TCSC の応答時間は 200 ms ~ 300 ms です。過渡応答の形状はフェーザ モデルでは不正確で、過渡特性を調べるにはサイリスタ ベースのモデルを使用する必要があることに注意してください。

参考文献

[1] D.Jovcic, G.N.Pillai "Analytical Modelling of TCSC Dynamics" IEEE® Transactions on Power Delivery, vol 20, Issue 2, April 2005, pp. 1097-1104