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静止型無効電力補償装置 (SVC)

この例では、+300 Mvar/-100 Mvar 静止型無効電力補償装置 (SVC) の動作を示します。

Pierre Giroux and Gibert Sybille (Hydro-Quebec)

説明

300-Mvar 静止型無効電力補償装置 (SVC) は 6000 MVA 735 kV システムの電圧を制御します。SVC は、735 kV/16 kV 333 MVA カップリング変圧器、変圧器の 2 次側に接続された 1 つの 109 Mvar サイリスタ制御リアクター バンク (TCR) と 3 つの 94 Mvar サイリスタ切り替えコンデンサ バンク (TSC1、TSC2、TSC3) で構成されます。TSC のスイッチの ON/OFF 状態を制御することにより、変圧器の 2 次側の無効電力は、94Mvar のステップ状に 0 から容量性 282Mvar (16kV で) まで、離散的に変動させることができます。一方、TCR の位相制御により、0 から誘導性 109Mvar まで連続的に変動させることができます。変圧器の漏れリアクタンス (15%) を考慮すると、変圧器の 1 次側から見た SVC の等価サセプタンスは、-1.04 pu/100 MVA (完全な誘導性) から +3.23 pu/100 Mvar (完全な容量性) まで連続的に変化させることが可能です。上図の SVC Controller サブシステムでは、変圧器の 1 次側の電圧を観測し、電圧レギュレーターにより要求されるサセプタンスとなるように、適切なパルスを 24 のサイリスタ (TCR、TSC1、TSC2、TSC3 について、それぞれ 6 つのサイリスタで構成) に送ります。

[マスク内を表示] を使って、TCR サブシステムと TSC サブシステムがどのように構成されているかを確認してください。三相バンクはそれぞれデルタ接続されているので、通常の平衡状態 (三相の中性点電圧が 0) では、基本波の 3 の倍数の高調波成分 (第 3、第 9、...) がデルタ結線内に閉じ込められるため、電力システムに投入される高調波成分が減少します。この例の電力システムは、誘導性の等価サセプタンス (短絡電力 6000MVA) と 200-MW の負荷で表されます。等価回路の内部電圧は、プログラム可能な電源を使って変化させることができ、システム電圧の変化に対する SVC の動的応答を観察できます。電圧源メニューを開き、プログラム設定された時間に応じて段階的に変化する電圧の大きさ (以下、電圧ステップと呼ぶ) を調べます。

シミュレーション

SVC の動的応答

シミュレーションを実行し、SVC scope ブロックで波形を観察します。SVC は電圧制御モードで、その基準電圧は Vref=1.0 pu に設定されています。制御器の電圧降下は 0.01 pu/100 VA (0.03 pu/300MVA) です。したがって、SVC の操作点が全容量性 (+300 Mvar) から全誘導性 (-100 Mvar) まで変化するとき、SVC の電圧は、1-0.03=0.97 pu と 1+0.01=1.01 pu の間で変化します。

はじめに、システムの電源電圧が 1.004pu に設定されているので、SVC が動作していないときには、SVC の端子で電圧 が 1.0pu になります。基準電圧 Vref が 1.0 pu に設定されているので、はじめの SVC はフローティング状態 (浮遊化状態でゼロ電流) です。この操作点は、動作中の TSC1 と、ほぼ完全導通状態 (α = 96 度) の TCR により得られます。t=0.1s において、電圧は 1.025pu まで急激に増加します (上図の Vmeas Vref (pu))。SVC は電圧を 1.01 pu に戻すために、無効電力 (Q=-95 Mvar) を吸収するように応答します。95% の整定時間は、およそ 135 ms です。この時点で、すべての TSC は動作を停止し、TCR はほぼ完全導通状態 (α = 94 度) となります。t=0.4s において、電圧は 0.93pu まで急激に低下します。SVC は、無効電力 256Mvar を供給するように動作し、電圧を 0.974pu まで減少させます (上図の Q(Mvar)、Vmeas Vref (pu))。この時点で、3 つの TSC (TSC1、TSC2、TSC3) は動作中であり、TCR は基準の無効電力 (TCR のサイリスタの点弧角 α =120°) のおよそ 40% を吸収します (上図の Q (Mvar)、alpha TCR (deg)、number of TSCs) 。上図の Scope ブロックに表示された最後の波形で TSC (TSC1、TSC2、TSC3) のサイリスタのスイッチが、連続してオンとオフになる様子を観測してください。TSC のサイリスタのスイッチがオンになる度に、TCR のサイリスタの点弧角 α は、180°(導通なし) から 90°(完全導通) へと急激に変化します (上図の alpha TCR (deg))。最終的に、t=0.7s において、電圧は 1.0pu まで増加し、SVC の無効電力はゼロまで減少します (上図の Q(Mvar)、Vmeas Vref (pu))。

サイリスタ開閉コンデンサ TSC1 の不点弧

TSC のサイリスタのスイッチがオフになる度に、電圧は TSC のコンデンサに吸収されます。"Signals and Scope" サブシステム内の "TSC1 Misfiring" スコープを見ると、A-B 相に対する TSC1 の線電圧 (最初のトレース) と TSC1 の線間電流 (2 番目のトレース) を観測できます。正方向のサイリスタ (正の電流を流すサイリスタ) にかかる線電圧は 3 番目のトレースに示され、このサイリスタに送られるパルス信号は 4 番目のトレースに示されます。正方向のサイリスタは、正常な点弧作用を行う場合は、サイリスタ バルブ電圧が最小で負方向の TSC の線間電圧の絶対値が最大となるときに点弧することがわかります。誤ってサイリスタを点弧するパルス信号が適切なタイミングで送られないと、TSC で非常に大きな過電流が観測されることがあります。

SVC Controller ブロック内で、TSC1 のサイリスタが不点弧になるシミュレーションの結果を見てください。Timer ブロックと OR ブロックは、Firing Unit サブシステムからの通常のパルスに、TSC1 のサイリスタが不点弧となるような微小時間のパルスを加え合わせるために使用されます。Timer ブロックのブロック パラメーターを設定するダイアログ ボックスを開き、[Times(s)] の項目に設定した [*100] を削除します。ここで、Timer ブロックは、時刻 t= 0.121 秒で 1 サンプル時間続く TSC1 のサイリスタの不点弧パルスを送るようにプログラム設定されています。シミュレーションを再度実行してください。TSC がブロックされた直後に、サイリスタ バルブ電圧が正の最大になるときに、サイリスタの不点弧状態を引き起こすスイッチングのパルス信号が送られることが観測されます。このサイリスタの不点弧は、サイリスタの大きな過電流 (18kA、基準のピーク電流の 6.5 倍) を生成します。さらに、サイリスタがブロックされた直後に、サイリスタ バルブ電圧は 85kV (基準のピーク電圧の 3.8 倍) に達します。そのような過電流と過電圧を回避するために、サイリスタ バルブは、通常、金属酸化物 (酸化亜鉛形など) の避雷器で保護されています。ここでは、その場合のシミュレーションはしていません。