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ステッピング モーターの引き込み特性

この例では、メーカーのデータシートの情報およびテスト ハーネスを使用してステッピング モーターのパラメーター化と調整を行う方法を説明します。データシートから取得した数値データを使用してモデルをパラメーター化します。シミュレーションによって生成される引き込みトルクの特性を、メーカー提供の引き込み曲線と比較できます。ステッピング モーター モデルを調整するために、この例では、駆動タイプおよび負荷のパラメーターを変更するテスト ハーネスを使用します。

テスト ハーネス

ステッピング モーターは、Simscape™ Electrical™ ライブラリの Stepper Motor ブロックを使用してモデル化します。ステッピング モーター ドライバーは、電流源と 1 次フィルターによってモデル化します。モーターをテスト ハーネス内に配置します。テスト ハーネスは、テスト対象の各ステップ レート要求に関して滑りが発生するまで、負荷を徐々に増加します。滑りの検出は、Slip Detection サブシステム内に実装します。このサブシステムには Simulink® の Assertion ブロックが含まれ、これによって回転子の予測角度と実際の角度の差が特定されます。

引き込みトルクの特性

以下のプロットは、テスト ハーネスのシミュレーションによって生成される引き込み特性を示しています。メーカーのデータシートの引き込み曲線の上に、結果が重ねられています。ほとんどのデータシートではテスト条件が指定されていないため、引き込み特性を完全に一致させることは難しい場合があります。さらに、ステッピング モーターをモデル化するために必要な数値がすべて提供されていないデータシートもあります。この場合は、シミュレーションで得られた引き込み曲線を使用して、引き込み曲線の一致度が許容範囲となる代表値を特定します。

引き込み特性に対する駆動と負荷のパラメーターの影響

引き込みモードでは、ステッピング モーターは同期を失わずに始動、停止しなければなりません。ステッピング モーターは動的な性質であるため、引き込みトルクの速度パフォーマンスは、ステッピング モーターの駆動構成および負荷のパラメーターの影響を受けやすくなっています。

ステッピング モーターのモデル化や調整を行う場合は、次の点を考慮してください。

  • 負荷慣性を大きくすると、高いステップ レートでのステッピング モーターの引き込みトルクが小さくなります。通常は、高いステップ レートでの操作の場合、負荷慣性は回転子の慣性の 3 倍未満です。一般に許容されている慣例では、負荷慣性は回転子の慣性の 10 倍未満に制限されます。

  • 負荷の減衰成分が多い場合は、低いステップ レートでのパフォーマンスが向上します。減衰によってステッピング モーターの共振の影響を克服できるからです。同様に、内部モーターの回転子の減衰も、低いステップ レートでのパフォーマンス向上に役立つ場合があります。

  • 巻線抵抗が小さいステッピング モーターは、多くの場合、定電流駆動を使用して駆動されます。電流立ち上がり時間を短縮するために、定格より高い電圧がモーターに印加されます。電源電圧が高いと、高いステップ レートでの引き込みトルク能力が高くなります。

  • メーカーのデータシートで提示されている引き込みトルク曲線は、通常は特定のドライバーおよび負荷の構成 (負荷のタイプ、負荷慣性、負荷減衰) に対して与えられています。メーカーは、ステッピング モーターをテストする際に、動力計の設定を使用するか、回転子のホイールに摩擦を適用する傾向があります。テスト方法がデータシートに含まれていることはほとんどありません。したがって、パラメーター化を検証するために、ステッピング モーターをシミュレートして曲線を生成することが常に重要となります。

以下のプロットは、引き込みトルクが回転子の減衰、駆動電圧、負荷慣性、負荷タイプの影響をいかに受けやすいかを示しています。

どのステッピング モーターに関しても、引き込みトルク特性が一致する一連のモデル パラメーター値は、通常は一意ではありません。パラメーター化が代表的であることを確実にするために、引き込み曲線を生成してデータシートと比較する処理も行うことを推奨します。