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太陽光発電システムの日陰の解析
この例では、太陽光発電 (PV) プラントまたはモジュールで日陰の影響を実装する方法を説明します。Solar Plant ブロックは Simscape™ 言語を使用して作成されます。ソーラー プラントまたはモジュールでの日陰は、太陽放射照度がすべてのソーラー PV モジュールやセルで一樣でない場合に発生します。この例を使用して、相互接続された大規模なソーラー プラントまたは単一の PV モジュール内における、日陰と PV セル接合部温度の効果を調べることができます。最大電力を高め、ソーラー パネルを過熱から保護するため、Solar Plant ブロックにはバイパス ダイオードとブロッキング ダイオードが組み込まれています。日陰を定義するには、放射照度および温度のパラメーターの値を設定します。
モデルの概要
Solar Plant ブロックの概要
次の図は Solar Plant ブロックを示しています。Solar Plant ブロックは Np
個の並列接続されたストリングで構成されています。各ストリングは Ns
個の直列接続されたソーラー PV モジュールで構成されています。
太陽光発電 PV モジュールの概要
Solar Plant ブロックは Ns*Np
個の PV モジュールで構成されています。各ソーラー PV モジュールは Np_cell
個の並列接続されたストリングで構成され、各ストリングは Ns_cell
個の直列接続された太陽電池で構成されています。Simscape™ Electrical™ ライブラリの Solar Cell ブロックによって、太陽電池のストリングはモデル化されます。PV モジュールのサイズを指定するには、モジュールのセル数 (Ns_cell
と Np_cell
) を定義します。市販のソーラー パネルを複製するため、ソーラー PV モジュールのパラメーターをソーラー パネル メーカーのデータシートから直接取得します。メーカーのデータシートに基づくパラメーター化の詳細については、Simscape Electrical の例 'SolarPanelValidation' を参照してください。
保護ダイオード
Solar Plant ブロックにはバイパス ダイオードとブロッキング ダイオードの両方が組み込まれています。Simscape Founcation ライブラリの Diode ブロックにより、保護ダイオードがモデル化されます。ソーラー PV ストリングの電流をサポートするに十分な放射照度がないストリングのソーラー PV モジュールをバイパスするために、バイパス ダイオードが PV モジュール間に接続されています。ブロッキング ダイオードは、ストリング電圧が低いソーラー PV ストリングを分離します。保護ダイオードにより出力電力は上がり、ソーラー PV モジュールの寿命は伸びます。
[Solar module protection type] パラメーターを設定して、ソーラー プラントの保護ダイオードを指定します。* No protection diode - ソーラー プラントにはバイパス ダイオードとブロッキング ダイオードがありません。* Only bypass diode across modules - ソーラー プラントでは、すべてのソーラー ストリングの各 PV モジュール間にバイパス ダイオードがありますが、ソーラー PV ストリング間にブロッキング ダイオードはありません。* Both bypass diode and series module strings blocking diode - ソーラー プラントに両方の保護ダイオードがあります。
パラメーターの概要
Number of series connected modules, Ns - ストリング内で直列接続されたソーラー PV モジュールの数。正の整数として指定します。この値はゼロより大きくなければなりません。
Number of parallel connected strings of modules, Np - 並列接続されたソーラー PV ストリングの数。正の整数として指定します。この値はゼロより大きくなければなりません。
Irradiance(Ns,Np) - 各ソーラー PV モジュール全体の太陽放射照度。太陽放射照度は、PV モジュール内のすべての太陽電池で一律であるものと見なされます。この行列には
Ns
行とNp
列がなければなりません。この行列の各要素は 0 以上でなければなりません。Cell temperature(Ns,Np) - 各ソーラー PV モジュール全体の太陽電池接合部の温度。接合部の温度は、PV モジュール内のすべての太陽電池で一律であるものと見なされます。この行列には
Ns
行とNp
列がなければなりません。Number of series cells, Ns_cell - ソーラー PV モジュール内で直列接続された太陽電池の数。正の整数として指定します。この値はゼロより大きくなければなりません。
Number of parallel cell strings, Np_cell - PV モジュール内で並列接続された太陽電池ストリングの数。正の整数として指定します。この値はゼロより大きくなければなりません。
他のパラメーターの詳細については、Diode ブロックと Solar Cell ブロックのドキュメンテーション ページを参照してください。
ソーラー PV プラントの構成
ソーラー PV プラントと PV モジュールの両方での日陰の影響を調べるために、Solar Plant ブロックを構成することができます。単一のソーラー PV パネルでの日陰の影響を調べるには、[Number of series cells, Ns_cell] および [Number of parallel cell strings, Np_cell] パラメーターを 1
に設定します。ソーラー パネルの太陽電池の数を定義するには、[Number of series connected modules, Ns] および [Number of parallel connected strings of modules, Np] パラメーターの値を指定します。[Irradiance(Ns,Np)] 行列および [Cell temperature (Ns,Np)] 行列のパラメーターは、ソーラー パネルの各太陽電池の太陽放射照度と温度の値を定義するために使用されます。日陰のフィールド領域をカスタマイズするには、Solar Plant ブロックのパラメーター Ns、Np、Ns_cell、Np_cell を適切に指定します。また、Ns_cell および Np_cell パラメーターを使用して、太陽放射照度と温度が一律である PV セルのクラスターを定義することもできます。Ns および Np パラメーターを使用すると、太陽放射照度や温度が異なるセル クラスターの数を定義できます。
すべての太陽電池は、ソーラー プラント全体で同様であるものと見なされます。
日陰のないソーラー プラントの I-V 特性
以下のプロットは、太陽放射照度と温度が一律であるソーラー プラントの I-V 曲線と P-V 曲線を示しています。接合部の温度は、ソーラー プラント全体で一律であるものと見なされます。
Cell junction temperature in degC, maximum power point current in A, voltage in V and Power in W JuntionTemperature MaximumCurrent MaximumVoltage MaximumPower __________________ ______________ ______________ ____________ 25 12.156 90.226 1096.8 50 11.981 81.117 971.88
日陰があり保護ダイオードのないソーラー プラントの I-V 特性
以下のプロットは、保護ダイオードなしのソーラー PV モジュール全体で太陽放射照度に違いがある (irradianceMat) ソーラー プラントの、I-V 曲線と P-V 曲線を示しています。接合部の温度は、ソーラー プラント全体で一律であるものと見なされます。ソーラー プラントの最大出力電力は大幅に低下しています。
Cell junction temperature in degC, maximum power point current in A, voltage in V and Power in W JuntionTemperature MaximumCurrent MaximumVoltage MaximumPower __________________ ______________ ______________ ____________ 25 5.5836 94.78 529.21 50 5.5517 85.297 473.55
日陰とバイパス保護ダイオードをもつソーラー プラントの I-V 特性
以下のプロットは、バイパス ダイオードのみをもつソーラー PV モジュール全体で太陽放射照度に違いがある (irradianceMat) ソーラー プラントの、I-V 曲線と P-V 曲線を示しています。接合部の温度は、ソーラー プラント全体で一律であるものと見なされます。以下のプロットと表は、最大出力電力に改善があることを示しています。バイパス ダイオードがある場合、出力電力の局所的最大が多数観察されます。この効果は、最大電力点追従 (MPPT) アルゴリズムの性能評価の際に極めて重要です。
以下のプロットは、最高電圧 (大きな抵抗負荷) 付近でソーラー PV ストリングの 3 つの PV モジュールがいずれも電力を供給していることを示しています。中程度の電圧では、太陽放射照度が最も低い PV モジュール (PV ストリングの 3 番目の PV モジュール) はバイパスされます。低い範囲の電圧 (小さな抵抗負荷) では、太陽放射照度が最も高い PV モジュールのみが電力を供給します。この例では、負荷に電力を供給するのは最初の PV モジュールであり、残りの 2 つの PV モジュールはダイオードによりバイパスされます。
Cell junction temperature in degC, maximum power point current in A, voltage in V and Power in W JuntionTemperature MaximumCurrent MaximumVoltage MaximumPower __________________ ______________ ______________ ____________ 25 9.4275 61.518 579.96 50 9.3418 55.307 516.66
日陰と両方の保護ダイオードをもつソーラー プラントの I-V 特性
以下のプロットは、バイパスとブロッキング両方の保護ダイオードをもつソーラー PV モジュール全体で太陽放射照度に違いがある (irradianceMat) ソーラー プラントの、I-V 曲線と P-V 曲線を示しています。接合部の温度は、ソーラー プラント全体で一律であるものと見なされます。この場合、ブロッキング ダイオードでの電圧低下のため電圧は低くなります。この効果により、最大出力電力も低下します。
Cell junction temperature in degC, maximum power point current in A, voltage in V and Power in W JuntionTemperature MaximumCurrent MaximumVoltage MaximumPower __________________ ______________ ______________ ____________ 25 9.4227 60.944 574.26 50 9.3358 54.737 511.01
保護ダイオードの有無による日陰のあるソーラー プラントの特性
以下のプロットは、保護ダイオードがある場合とない場合の、ソーラー プラントの I-V 曲線と P-V 曲線を示しています。保護ダイオードによって出力電力は増大しますが、特性には出力電力の局所的最大が多数あります。
リアルタイム シミュレーションの結果
この例は、Intel® 3.5 GHz i7 マルチコア CPU を搭載した Speedgoat Performance リアルタイム ターゲット マシンでテストされました。このモデルは、70 マイクロ秒のステップ サイズでリアル タイム実行できます。