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AC マイクログリッドにおける過電流リレーによる保護

この例では、AC マイクログリッドの過電流リレーをモデル化する方法を説明します。この例を使用して、マイクログリッドの過電流リレーの協調を調べることができます。Relay ブロックは、相保護と地絡保護の 2 つの保護ユニットで構成されています。相保護ユニットは、マイクログリッドを高い相電流から保護します。地絡保護ユニットは、マイクログリッドを高い地電流から保護します。この例の "relay2" ブロックは、"distribution_line2" ブロックを保護します。"relay1" ブロックは "distribution_line1" ブロックを保護し、"relay2" ブロックの予備としても機能します。"distribution_line2" ブロックで故障が発生したときに "relay2" ブロックが動作しない場合、指定された時間の経過後に "relay1" ブロックが動作してシステムを分離します。システムのトリップを防ぐために、"relay1" ブロックと "relay2" ブロックは、どのようなときでも 1 つのリレーのみが動作するように機能します。"relay2" ブロックの時間乗数設定または目的の動作時間のいずれかを指定できます。

マイクログリッドの概要

以下の図は、電源、変圧器、配電線、変流器、回路ブレーカー、過電流リレー、および負荷をもつ AC マイクログリッドを示しています。

マイクログリッドは 132 kV で電力網に接続されます。三相変圧器が電源電圧を 132 kV から 33 V に降下させます。

変流器ブロックは、電流を過電流リレーの動作範囲内に降下させます。"relay1" ブロック "relay2" ブロックは、それぞれトリップ信号を "circuitBreaker1" ブロックと "circuitBreaker2" ブロックに送信します。

変流器の概要

この例の変流器は、3 つの単相変圧器ブロックで構成されています。変流器の 2 次巻線と直列に 1 Ωの抵抗器が接続され、電圧センサーが抵抗器にかかる電圧を測定します。この電圧の値は、抵抗器を流れる電流の値と等しくなります。この例では、それらを流れる負荷電流と安全余裕係数に基づいて、変流器の巻き数比を特定します。負荷電流 60 A が変流器の 1 次巻線を流れ、安全余裕係数が 0.25 に等しい場合、変流器ブロックの比は 100/1 に等しくなります。安全余裕係数を入力として指定できます。変流器の 2 次電流は、それぞれ "relay1" ブロック "relay2" ブロックへの入力です。

過電流リレー ブロックの概要

Relay ブロックは、相保護ユニットと地絡保護ユニットの 2 つの保護ユニットで構成されています。いずれかの相電流が動作値より大きい場合、相保護ユニットはトリップ信号をトリガーします。ゼロ シーケンス電流の値が動作値より大きい場合、地絡保護ユニットはトリップ信号をトリガーします。いずれかのユニットがトリップ信号をトリガーすると、リレーは、リレー動作時間と呼ばれる時間遅延の後、トリップ信号を回路ブレーカーに送信します。リレー動作時間は、リレーの動作値と時間乗数設定によって決まります。この Relay ブロックには、IEC 特性規格および IEEE 特性規格、定限時、IvsT など、合計 8 つの動作特性があります。次の式を使用して、IEC 規格および IEEE 規格の特性のリレー動作時間を計算できます。

ここで、TMS は時間乗数設定、PSM はプラグ設定乗数、a、b、c は定数です。定限時を選択した場合は、リレーの動作時間を直接指定します。IvsT 特性を選択した場合は、さまざまな電流値と時間乗数設定について、リレーの動作時間を 2 次元行列として指定します。リレー アルゴリズムが、指定された時間乗数設定と動作値について動作時間を計算します。

過電流リレーの設定

"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの動作時間の間には、常に時間遅延があります。時間遅延を設定するには、OvercurrentProtectionInput MLX ファイルの protection.tFactorile を指定します。たとえば、"distributionLine2" ブロックで故障が発生し、"relay2" ブロックがその分離に失敗した場合、"protection.tFactor" パラメーターで指定した値に等しい最小時間遅延の後に "relay1" ブロックがトリップ信号を "circuitBreaker1" ブロックに送信します。IEC 規格または IEEE 規格の特性を選択した場合、システムは "relay2" ブロックの時間設定に基づいて、"relay1" の時間設定を推定します。"relay2" ブロックの時間乗数設定を指定した場合、システムは "relay1" ブロックの時間乗数設定を推定します。"relay2" ブロックの動作時間を指定した場合、システムは "relay2" ブロックおよび "relay1" ブロックの両方の時間乗数設定を推定します。配電線の始点で故障が発生すると、"distributionLine2" ブロックで最大短絡電流が発生します。

この例では、相地絡 (L-G) 故障で相電流が最大になり、二相地絡 (L-L-G) 故障で地電流が最大になります。リレーの時間設定を推定するために、相保護では L-G 故障が考慮され、地絡保護では L-L-G 故障が考慮されます。次の式は、L-G 故障時におけるユニットあたりの故障電流を計算します。

ここで、Z0、Z1、および Z2 は、ゼロ シーケンス、正シーケンス、および負シーケンスのインピーダンスです。次の式は、L-L-G 故障時におけるゼロ シーケンス電流を計算します。

ここで、Z0、Z1、および Z2 は、ゼロ シーケンス、正シーケンス、および負シーケンスのインピーダンスです。

相地絡 (L-G) 故障時におけるリレーの動作時間

以下の図は、"distributionline2" ブロックの 0.1 km 地点での L-G 故障発生時における、変流器の 2 次電流と、"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの動作時間を示しています。0.1 秒の時点で故障が発生します。"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの相保護ユニットと地絡保護ユニットに、[IEEE moderately inverse] の特性が選択されています。"relay2" ブロックの動作時間は、0.2 秒に等しくなっています。"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの間の時間グレーディング係数は、0.2 秒に等しくなっています。リレーの相保護動作値は 1 A に等しくなっています。リレーの地絡保護動作値は 0.05 A に等しくなっています。"relay1" ブロックの動作時間を観察するために、回路ブレーカーの保護は無効になっています。

二相地絡 (L-L-G) 故障時におけるリレーの動作時間

以下の図は、"distributionline2" ブロックの 0.1 km の地点での L-L-G 故障発生時における、変流器の 2 次電流と、"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの動作時間を示しています。0.1 秒の時点で故障が発生します。"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの相保護ユニットと地絡保護ユニットに、[IEEE moderately inverse] の特性が選択されています。"relay2" ブロックの動作時間は、0.2 秒に等しくなっています。"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの間の時間グレーディング係数は、0.2 秒に等しくなっています。リレーの相保護動作値は 1 A に等しくなっています。リレーの地絡保護動作値は 0.05 A に等しくなっています。"relay1" ブロックの動作時間を観察するために、回路ブレーカーの保護は無効になっています。

二相 (L-L) 故障時におけるリレーの動作時間

以下の図は、"distributionline2" ブロックの 0.1 km の地点での L-L 故障発生時における、変流器の 2 次電流と、"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの動作時間を示しています。0.1 秒の時点で故障が発生します。"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの相保護ユニットと地絡保護ユニットに、[IEEE moderately inverse] の特性が選択されています。"relay2" ブロックの動作時間は、0.2 秒に等しくなっています。"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの間の時間グレーディング係数は、0.2 秒に等しくなっています。リレーの相保護動作値は 1 A に等しくなっています。リレーの地絡保護動作値は 0.05 A に等しくなっています。"relay1" ブロックの動作時間を観察するために、回路ブレーカーの保護は無効になっています。

三相 (L-L-L) 故障時におけるリレーの動作時間

以下の図は、"distributionline2" ブロックの 0.1 km の地点での L-L-L 故障発生時における、変流器の 2 次電流と、"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの動作時間を示しています。0.1 秒の時点で故障が発生します。"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの相保護ユニットと地絡保護ユニットに、[IEEE moderately inverse] の特性が選択されています。"relay2" ブロックの動作時間は、0.2 秒に等しくなっています。"relay1" ブロックと "relay2" ブロックの間の時間グレーディング係数は、0.2 秒に等しくなっています。リレーの相保護動作値は 1 A に等しくなっています。リレーの地絡保護動作値は 0.05 A に等しくなっています。"relay1" ブロックの動作時間を観察するために、回路ブレーカーの保護は無効になっています。

リレー パラメーターの設定

  • Relay characteristic for phase protection - "Relay" ブロックには、IEC 規格および IEEE 規格の動作特性が含まれています。[IEC normal inverse]、[IEC extremely inverse]、[IEC very inverse]、[IEEE moderately inverse]、[IEEE extremely inverse]、[IEEE very inverse]、[Definite time]、または [IvsT] から選択します。

  • Relay characteristic for earth protection - "Relay" ブロックには、IEC 規格および IEEE 規格の動作特性が含まれています。[IEC normal inverse]、[IEC extremely inverse]、[IEC very inverse]、[IEEE moderately inverse]、[IEEE extremely inverse]、[IEEE very inverse]、[Definite time]、または [IvsT] から選択します。

  • Fundamental frequency (Hz) - 定格周波数 (Hz)。この値はゼロより大きい必要があります。

  • Relay sample time (s) - リレーのサンプル時間 (秒)。

  • *Relay operation enable - 回路ブレーカーの動作を有効または無効にします。リレーの動作を有効にするにはこの値を 1 に、無効にするには 0 に設定します。

  • Pick up value for phase protection (A) - 相保護ユニットをトリガーする最小電流 (A)。

  • Pick up value for earth protection (A) - 地絡保護ユニットをトリガーする最小電流 (A)。

  • Time multiplier setting for phase protection (s) - 相保護ユニットの時間遅延設定 (秒)。

  • Time multiplier setting for earth protection (s) - 地絡保護ユニットの時間遅延設定 (秒)。

  • Relay operating time for phase protection (s) - リレーがトリップ信号を回路ブレーカーに送信するまでの時間 (秒) (このパラメーターを有効にするには、[Relay characteristic for phase protection] を [Definite time] に設定)。

  • Relay operating time for earth protection (s) - リレーがトリップ信号を回路ブレーカーに送信するまでの時間 (秒) (このパラメーターを有効にするには、[Relay characteristic for earth protection] を [Definite time] に設定)。

  • Current setting for phase protection (A) - ルックアップ テーブルの電流値 (A) (これらのパラメーターを有効にするには、[Relay characteristic for phase protection] を [IvsT] 特性に設定)。

  • Time multiplier setting for phase protection (s) - ルックアップ テーブルの時間設定 (秒)。

  • Operating time for phase protection (s) - 相保護のリレー動作時間 (秒)。

  • Current setting for earth protection (A) - ルックアップ テーブルの電流値 (A) (これらのパラメーターを有効にするには、[Relay characteristic for earth protection] を [IvsT] 特性に設定)。

  • Time multiplier setting for earth protection (s) - ルックアップ テーブルの時間設定 (秒)。

  • Operating time for earth protection (s) - 地絡保護のリレー動作時間 (秒)。