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地域間振動に対する 3 つの電力システム安定器 (PSS) の性能

この例では、Kundur の 4 つの電動機と 2 つの地域からなるテスト システムを使用した、3 つの電力系安定化装置 (PSS) モデルを示します。

I. Kamwa (Hydro-Quebec)

Kundur の 4 電動機 2 地域のテスト システムを使用した 3 つの電力系統安定化装置 (PSS) の比較

3 つの PSS は、次のようなすべての電動機に対して同じ設定を使って比較されます。

1) 簡易設定 (IEEE® Std 421.5 に従った IEEE® PSS4B 型) を使用した MB-PSS

2) P. Kundur の Conventional Delta w PSS (Ref. [1], pp.814-815, and Ref. [2] )

3) Conventional Acceleration Power (Delta Pa) PSS

説明

テスト システムは、長さ 220 km の 2 本の 230 kV 線で連結された 2 つの完全な対称領域で構成されています。これは、相互接続された大規模な電力システムにおける電気機械の低周波振動を調べるために、[1,2] で特別に設計されています。サイズは小さくても、実際の動作において標準システムの動作と非常によく似ています。各地域には 2 つの同一の円筒形回転子をもつ発電機が備えられており、定格値は 20 kV/900 MVA です。地域 1 で H = 6.5s、地域 2 [1] で H = 6.175s という慣性を除いて、同期機のパラメーターは同一です [1,2]。200 ゲイン [1,2] をもつ高速で静的な励磁機のほかに、熱プラントはすべての場所で同一の速度調整器をもつと想定します。負荷は、定数値のインピーダンスとして表され、地域 1 が 413 MW を地域 2 にエクスポートするなどの方法で地域間で分けられます。単一線分のサージ インピーダンス負荷が約 140 MW [1] なので、定常状態でもシステムに若干の負荷がかかります。スラック電動機と見なされる M2 の目標電力潮流は、すべての発電機が 1 台あたり約 700 MW を生成するようなものです。Powergui を開いて [Machine Initialization] を選択すると、結果を表示できます。各地域に 187 Mvar のコンデンサを追加することで負荷電圧のプロファイルが改善された (一定に近づいた) ので、[1] とは若干の違いがあります。さらに、伝送損失および発電損失は、電線の詳細レベルや発電機の表現によって異なる場合があります。

シミュレーション

1.システムの小信号解析

ネットワーク動作の基本的な理解のために、5% の振幅のパルスに対してその開ループ応答 (PSSmodel = 0) をシミュレートできます。M1 の基準電圧を制御するタイマーを開いて遷移時間ベクトルの増倍率を 100 から 1 に変更してこのテストをアクティブにできます。同様に、"Fault" デバイスと断流器 "Brk1" および "Brk2" の遷移時間ベクトルの増倍率を 1 から 100 に変更して、地絡故障を非アクティブにしなければなりません。シミュレーションを開始したら、メイン ブロック線図の "Machines" および "System" スコープを開いて信号応答を表示します。すべての信号が、不安定性を引き起こす不減衰振動を示します。4 つの電動機の加速力のモード解析は、次の主要な 3 つのモードを示します。

  • (1) 地域 2 に対する地域 1 全体を含む地域間モード (fn = 0.64 Hz、z = -0.026)。このモードは、"System" スコープに表示される連系線電力において明確に観察可能になります

  • (2) 各地域に対する地域 1 の電動機を含む地域 1 のローカル モード (fn = 1.12 Hz、z = 0.08)

  • (3) 電動機 M4 に対する電動機 M3 を含む地域 2 のローカル モード (fn = 1.16 Hz、z = 0.08) (つまり、慣性が小さくなるほど地域の固有振動数は大きくなります)

ブレーカー "Brk1" および "Brk2" を設定して 2 本の連系線のいずれかを開放した場合は、同じ発電パターンと負荷パターンで、別の定常状態を得ることができます。これは故障後ネットワークと呼ばれ、Powergui の [Machine Initialization] ツールを使用して簡単に初期化できます。基本的に、2 つのローカル モードの周波数と減衰に変わりはありませんが (地域 1 の fn = 1.10 Hz、z = 0.09 および地域 2 の fn = 1.15 Hz、z = 0.08)、M1 の基準電圧で 12 サイクル印加される、同じ 5% の振幅のパルスに対するこのネットワークの応答のモード解析は、負の減衰 (つまり、不安定性) をもつ地域間モードがずっと低い周波数にシフトすることを示しています (fn = 0.44Hz、z = -0.015)。

2. PSS の調整

0.1 Hz と 5 Hz の間のほぼフラットな位相応答を実現するために、帯域ごとの中心周波数とゲインを変えて、MB-PSS 設定を簡単に選択できます。Delta w PSS 設定は、Kundur [1] に従い、20 から 30 へゲインを増加し、15 ms の変換器時定数を追加するという 2 つの変更を行います。これらの PSS の周波数応答を表示するには、メイン ブロック線図にある [Show Bode plot of PSS] アイコンをクリックします。

この図から、MP-BSS 位相が対象の周波数範囲内で約 20 ~ 40 度であり、事実上フラットであることが確認できます。Delta w PSS では、特に約 1 ~ 2 Hz のときに位相の全体像が悪くなり、マルチユニットの電力プラントで高速ローカル モードまたは電動機間モードを扱うことができなくなります。一方、Delta Pa PSS は、180 度の位相進みを示す低周波数では非実用的で、ゲインが小さくても不安定となりますが、0.3 Hz 以上ではゲインと位相進みの組み合わせが良くなっています。最後に、Delta w PSS を決定する低周波数の形状が全体的に条件を満たしている場合でも、MB-PSS よりも減衰が 5 倍弱いので (これを表示するには、振幅プロットをズームします)、DC 除去 (ウォッシュアウト) は効果的ではありません。

3. 小信号性能評価 (G1 の基準電圧の 12 サイクル パルス)

小信号閉ループ システムの応答をシミュレートするには、上記のように (節 1) 遷移時間を 100 で乗算して、メイン ブロック線図のブレーカーおよび故障デバイスの遷移時間ベクトルを無効にする必要があります。100 の乗算を削除して (つまり、100 を 1 に変更して)、同様に M1 の基準電圧を制御するタイマー ブロックを有効にします。PSSmodel = 1、2、3 を設定して、シミュレートする PSS を選択します。シミュレーションを開始し、後に比較する変数を記録します。電動機の速度や端子電圧などの便利な変数の大部分は、行列 W および Vt に保存されます (メイン ブロック線図にある "Machine Signals" ブロックおよび "System Data" ブロックを見てください)。3 つの PSS に対してこのプロセスを繰り返します。比較を表示するには、アイコンの [Show results: Step on vref of M1] をダブルクリックします。この図には 4 つのプロットがあります。1 番上のプロットは地域 1 から 2 に伝送される電力を示します。2 番目のプロットは M1 の速度、3 番目は M1 の加速力で、1 番下のプロットは M1 端子電圧です。

すべての PSS によって、本来は不安定なシステムを安定させることができます。ただし、MB-PSS が他の 2 つの PSS に対して優れているのは明らかです。特に上記で強調した 0.5 Hz を上回る位相/ゲインの形状が悪い Delta w PSS に対して、すべてのモードで十分大きな減衰をもたらします。2 つの連系線を使用した地域間モードの減衰性能は次のとおりです。MB-PSS: (fn = 0.50Hz、z = 0.30)。Delta w: (fn = 0.64Hz、z = 0.25)。Delta Pa:(fn = 0.35 Hz、z = 0.30)。1 つの連系線を使用した地域間モードの減衰性能は次のとおりです。MB-PSS: (fn = 0.40 Hz、z = 0.36)。Delta w: (fn = 0.43 Hz、z = 0.35)。Delta Pa: (fn = 0.23 Hz、z = 0.14)。

4. 大信号の性能とロバスト性評価 (8 サイクル、ライン障害による三相故障)

PSS を評価する場合は、小信号性能は十分ではありません。大摂動時での性能の良さ、および動作条件の変更に対して良好なロバスト性を得ることは、同様に重要な条件です。ブレーカー "Brk1" および "Brk2" を開き、上記と同じ手順に従って、8 サイクル欠落した三相故障へのシステム応答をシミュレートすることができます。すべての PSS が、強い負荷が与えられた新しい動作点に滑らかに遷移できる訳ではありませんが、連系線がなくても、システムは定常状態の安定した動作点に到達できます。比較するために、アイコンの [Show results: 3-phase fault] を開きます。

Delta Pa PSS の場合、システムは同期を失いますが、MB-PSS および Delta w PSS では安定性を維持できていることがわかります。後者の 2 つは、伝送電力の動揺の減衰においてどちらも非常に効率的です。ただし、MB-PSS の閉ループ動揺の周波数は低くなります。その一方で、Delta w PSS は端子電圧の回復が遅すぎます。これは、非効率的なウォッシュアウトによる副作用です。さらに、加速力が他の PSS よりも MB-PSS でさらに減衰されます。

参考文献

[1] P. Kundur, Power System Stability and Control, McGraw-Hill, 1994, Example 12.6, p. 813

[2] Klein, Rogers, Moorty and Kundur:"Analytical investigation of factors influencing PSS performance," IEEE Trans. on EC, Vol. 7 , No 3, September 1992, pp.382-390