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三相 3 レベル インバーターの損失計算

この例では、Specialized Power Systems のブロックと Simscape のブロックを組み合わせて、三相 3 レベル インバーターにおけるスイッチング損失を計算する方法を説明します。

一般

+/- 1800V DC 電源 (電力 400kW) から、三相 3 レベル インバーターは可変電力を配電システムに送ります。インバーター出力は 2200 V / 25 kV 変圧器を経由して 25kV、40 MVA、50-Hz システムに接続されます。インバーター トポロジは [1] で説明されているモデルに基づいています。インバーターのそれぞれの 3 レベル レッグが 3 つの商用ハーフブリッジ IGBT モジュールを構成します。逆向きに接続されたダイオードのみが中性点クランプ形ダイオードとして機能しているので、モジュール 3 の IGBT パルス送信は必要ありません。制御システムには 2 つの PI コントローラー (1 つは PQ 制御器、もう 1 つは電流制御器) が組み込まれており、基準出力電力を実現するために必要なインバーター パルスを生成します。

Phase A レッグは、3 つの Half-bridge IGBT with Loss Calculation ブロックを使用して実装されています。スイッチング損失と伝導損失の両方が計算されてから、熱ネットワークに印加されます。このシミュレーションは、三相 3 レベル インバーターについて実現可能な出力電力とスイッチング周波数の関係を説明しています。

Half-bridge IGBT With Loss Calculation ブロック

ハーフブリッジは 2 つの IGBT/Diode ブロックによってモデル化されています。上部と下部の IGBT/Diode ブロックは外部パルス発生器から信号を受け取ります。損失計算は製造元のデータシートに記載されている仕様に基づいて行われます。

IGBT 損失は、以下のように計算されます。

  • ターンオン損失: デバイス全体の電圧のスイッチング前の値、デバイスに流れ込む電流のスイッチング後の値および接合部温度に基づき、3 次元ルックアップ テーブルを使用して、エネルギー損失が求められます。このエネルギーは、熱ネットワークに印加される電力パルスに変換されます。

  • ターンオフ損失: デバイスに流れ込む電流のスイッチング前の値、デバイス全体の電圧のスイッチング後の値および接合部温度に基づき、3次元ルックアップ テーブルを使用して、エネルギー損失が求められます。このエネルギーは、熱ネットワークに印加される電力パルスに変換されます。

  • 伝導損失: デバイスに流れ込む電流 (Ic) とその接合部温度の値に基づき、2 次元ルックアップ テーブルを使用して、IGBT 全体の飽和電圧 (Vce) が決まります。この Vce に Ic を掛けて、熱ネットワークに印加される損失が求められます。

ダイオードの損失は、以下のように計算されます。

  • 逆回復損失: デバイスに流れ込む電流のスイッチング前の値、デバイス全体の電圧のスイッチング後の値および接合部温度に基づき、3 次元ルックアップ テーブルを使用して、エネルギー損失が求められます。このエネルギーは、熱ネットワークに印加される電力パルスに変換されます。

  • 伝導損失: デバイスに流れ込む電流 (If) とその接合部温度の値に基づき、2 次元ルックアップ テーブルを使用して、ダイオード全体のオンステート電圧 (Vf) が決まります。この Vf に If を掛けて、熱ネットワークに印加される損失が求められます。

デバイス接合部の熱静電容量およびその接合部とケース間の熱抵抗は、Simulink® の State-Space ブロックを使用してモデル化された 1 セルのカウアー回路網によって表されます。

熱ネットワーク

Thermal Foundation ライブラリの Simscape ブロックを使用して、(ケースとヒート シンクの) 熱静電容量および (ケースとシンク間およびシンクと周囲空気間の) 抵抗に基づいて、2 セルのカウアー回路網が構築されます。簡略化のため、熱的現象のシミュレーションに必要な時間を短縮できるように、2 セルのカウアー回路網では熱静電容量に任意の値を使用します。

デモ

シミュレーションを実行し、次の操作点を観察します。

  • t = 0 秒~ t = 5 秒では、インバーターは 850 Hz のスイッチング周波数を使用して 372 kW (力率 = 0.85) を出力します。コンバーターの総損失は 2.7 kW であり、最高接合部温度 (125 C) はモジュール 1 の IGBT1 (またはモジュール 2 の IGBT1) で観測されます。Additional Scopes & Measurements ブロック内の Tj(Celsius) Scope ブロックを確認してください。

  • t = 5 秒~ t = 12 秒では、インバーターは 1850 Hz のスイッチング周波数を使用して 210 kW (力率 = 0.85) を出力します。コンバーターの総損失は 2.7 kW であり、最高接合部温度 (125 C) は引き続きモジュール 1 の IGBT1 で観測されます。

参考文献

[1] Raffael Schnell, Manager Application, ABB Switzerland, "High-Voltage Phase-Leg Modules for Medium Voltage Drives and Inverters".