Main Content

このページの内容は最新ではありません。最新版の英語を参照するには、ここをクリックします。

複合三相モデルと展開三相モデルの作成とシミュレーション

この例では、三相の純粋な抵抗負荷を駆動する三相 AC 電圧源の動作をシミュレートする、単純な Simscape™ Electrical™ モデルの作成と解析を行います。次に、このモデルの負荷を変更して、次に変えることができます。

  • 三相無効負荷

  • 各相に展開された三相抵抗負荷

  • すべての相の抵抗が同一ではない三相展開負荷

システム コンポーネント ブロックの選択と三相抵抗モデルの作成

  1. Simulink® スタート ページを開きます。MATLAB® の [ホーム] タブで、[Simulink] ボタンを選択します。または、コマンド ラインで次のように入力します。

    simulink

  2. [Simscape] セクションで、Simscape Electrical でのモデル化用に事前に構成されたテンプレートを見つけます。Electrical Three-Phase テンプレートを選択します。これらのブロックが含まれるモデルが、Simulink キャンバスで開きます。

    ブロック

    目的

    ライブラリ

    Scope三相システムの相電圧と相電流を表示します。

    [Simulink][Sinks]

    Electrical Reference電気量保存端子を接地接続します。

    [Simscape][Foundation Library][Electrical][Electrical Elements]

    PS-Simulink Converter物理量信号を Simulink 信号に変換します。

    [Simscape][Utilities]

    Simulink-PS ConverterSimulink 信号を物理量信号に変換します。

    [Simscape][Utilities]

    Solver Configurationすべての物理モデリング ブロックに適用されるソルバー設定を定義します。

    [Simscape][Utilities]

    Grounded Neutral (Three-Phase)三相システムの各相を電気的に接地接続します。

    [Simscape][Electrical][Connectors & References]

    Line Voltage Sensor (Three-Phase)三相システムの線間電圧を測定し、3 成分の物理量信号ベクトルを出力します。

    [Simscape][Electrical][Sensors & Transducers]

    また、モデルには、ダブルクリックすると Simscape と Simscape Electrical のライブラリにあるブロックにアクセスできる 2 つのリンクも含まれています。Simscape Electrical を使用したモデル化でテンプレートを使用する方法の詳細については、Simscape Electrical を使用したアナログ回路アーキテクチャ、メカトロニクス システム、および電力システムのモデル化を参照してください。

  3. Simulink-PS Converter ブロックと Line Voltage Sensor (Three-Phase) ブロックを削除します。

  4. 次のブロックをモデルに追加します。

    ブロック

    目的

    ライブラリ

    RLC (Three-Phase)三相負荷の抵抗性、誘導性、容量性の各特性をモデル化します。

    [Simscape][Electrical][Passive][RLC Assemblies]

    Current Sensor (Three-Phase)三相負荷の各相に流れる電流をその電流に比例する物理量信号に変換します。

    [Simscape][Electrical][Sensors & Transducers]

    Phase Voltage Sensor (Three-Phase)三相システムの各相の電圧をその電圧に比例する物理量信号に変換します。

    [Simscape][Electrical][Sensors & Transducers]

    Voltage Source (Three-Phase)電圧源に流れる電流に関係なく、すべての出力端子で正弦波電圧を維持する、理想的な三相電圧源を提供します。

    [Simscape][Electrical][Sources]

  5. PS-Simulink Converter ブロックと Grounded-Neutral (Three-Phase) ブロックを右クリックして、キャンバス上の新しい場所にドラッグしてコピーします。

  6. 入力側をクリックし、表示された対話型キューを選択して、2 番目の入力端子を Scope ブロックに追加します。

  7. 以下に示すように、ブロックを接続します。

  8. Open Simscape Library と Open Simscape Electrical Library という名前のキャンバス上の注釈を削除します。モデルを simplethreephasemodel という名前で保存します。

    このモデルのブロックでは、複合三相端子が使用されています。詳細は、三相端子を参照してください。

シミュレーション パラメーターの指定

Simscape モデルの場合と同様に、トポロジ的に区別可能な物理ネットワークごとに Solver Configuration ブロックを含めなければなりません。このモデルには物理ネットワークが 1 つしかないため、1 つの Solver Configuration ブロックを使用します。

  1. Solver Configuration ブロックで [ローカル ソルバーを使用] を選択し、[サンプル時間]0.0001 に設定します。

    Simscape ベースのモデルでは、ローカル ソルバーはサンプルベースのソルバーで、物理ネットワークの状態を離散状態として示します。Simscape Electrical の大多数のモデルでは、ローカル ソルバーが最初の選択肢として適しています。ローカル ソルバーは [サンプル時間] で設定されるシミュレーション タイム ステップごとにブロックの状態を更新します。60 Hz AC システムのシミュレーションでは、1e-4 の位のサンプル時間を使用するのが適切です。ソルバー オプションの詳細については、Solver Configuration を参照してください。

    離散ソルバーでなく連続ソルバーを使用する場合は、Solver Configuration ブロックの [ローカル ソルバーを使用] チェック ボックスをオフにします。これにより、シミュレーションでは、モデルのコンフィギュレーション パラメーター ([モデル化][モデル設定]) で指定された Simulink ソルバーが使用されます。Simscape Electrical のモデルでは、適度にスティッフなソルバーである ode23t を選択するのが適切です。60 Hz AC システムの場合は、[最大ステップ サイズ]1e-4 の位の値を指定します。詳細は、陽的な可変ステップ連続ソルバーを参照してください。

  2. Simulink エディターでシミュレーションの [終了時間]0.1 に設定します。

負荷インピーダンス パラメーター

RLC ブロックは三相負荷の抵抗性、誘導性、容量性の各特性をモデル化します。コンポーネントの構造パラメーターを使用して、抵抗、インダクタンス、静電容量の直列または並列の組み合わせを指定することができます。

RLC ブロックでは、既定値は以下のとおりです。

  • コンポーネントの構造R

  • 抵抗1 Ω。

[コンポーネントの構造] の既定値 R を使用すると、抵抗性のみの特性をもった三相負荷がモデル化されます。"各" 相の抵抗は 1 Ω です。

表示パラメーターの指定

このモデルの Sensor ブロックは、三相システムの各相の電流と電圧をそれらに比例する物理量信号に変換します。PS-Simulink Converter ブロックは物理量信号を Simulink 信号に変換し、Scope ブロックで表示できるようにします。

  1. これら 3 つのタイプのブロックのうち、コンバーター ブロックにのみパラメーターがあります。この例では、次のように設定します。

    • [PS-Simulink Converter1] ブロックの [出力信号単位]V に設定します。この設定により、ブロックに入力される電圧信号と同じ振幅の信号がブロックによって出力されます。

    • [PS-Simulink Converter2] ブロックの [出力信号単位]A に設定します。この設定により、ブロックに入力される電流信号と同じ振幅の信号がブロックによって出力されます。

  2. Scope ブロックへの入力信号にラベルを付けます。各ラインをダブルクリックし、モデル図に示されているように、Voltages または Currents というラベルを該当するラインに入力します。

これで、モデルをシミュレートし、結果を解析する準備が完了しました。

三相抵抗モデルのシミュレーションと解析

  1. モデルを保存します。

  2. モデルをシミュレートします。

  3. 相電流と相電圧を表示します。Scope ブロックをダブルクリックします。

  4. スコープ メニューで [ビュー][コンフィギュレーション プロパティ] を選択します。[レイアウト] を 1 行 2 列の表示に設定します。

  5. データに合わせて Scope の座標軸をスケーリングするには、[オートスケール] ボタン をクリックします。

このシミュレーションでは、RLC (Three-Phase) ブロックの [コンポーネントの構造] パラメーターにより、三相負荷の電気特性を抵抗性のみに指定しています。このため、三相システムの各相では、電圧と電流が同相のままになります。各相の抵抗が 1 Ω であるため、相電圧の大きさは相電流の大きさと等しくなります。

三相無効モデルのシミュレーションと解析

モデルを変更して、無効負荷を作成できます。無効負荷には誘導性または容量性の特性があります。

  1. このモデルのバージョンを simplethreephasemodel_reactive という名前で保存します。

  2. RLC (Three-Phase) ブロックで、以下を設定します。

    • コンポーネントの構造: Series RL

    • インダクタンス: 0.002

  3. モデルをシミュレートします。

  4. シミュレーション結果を表示します。Scope の座標軸をオートスケールします。

  5. 結果を詳しく調べます。たとえば、ズーム ボタン をクリックし、いずれかのプロットの最初の 1/3 にボックスをドラッグします。

    三相負荷の電気特性は純粋な抵抗性ではなくなっています。負荷に誘導性があるため、各相で流れる電流は電圧より遅延します。

展開平衡三相モデルの作成

  1. 最初に作成した三相抵抗モデル simplethreephasemodel を開きます。

  2. RLC (Three-Phase) ブロックを削除します。

  3. [Simscape][Electrical][Connections & References] を選択し、このライブラリから Phase Splitter ブロックのコピーを 2 つ、このモデルにドラッグします。

  4. Phase Splitter ブロックの 1 つを左右反転します。ブロックを選択します。ツールストリップの [書式設定] タブで、[左右を反転] Flip left-right button をクリックします。

  5. [Simscape][Foundation Library][Electrical][Electrical Elements] を選択し、このライブラリから Resistor 素子をモデルにドラッグします。

  6. 他のコンポーネント用にスペースを空けるため、Resistor 素子のラベルを非表示にします。抵抗器を右クリックし、[形式][ブロック名を表示] を選択してこのオプションの選択を解除します。

  7. Resistor 素子のコピーをもう 2 つ作成します。

  8. 以下に示すように、コンポーネントを接続します。

  9. この変更したモデルのバージョンを simplethreephasemodel_expanded_balanced という名前で保存します。

    このモデル名は、前に RLC ブロックによってモデル化した負荷が各相に展開されたことを表しています。負荷はそのまま平衡がとれています。つまり、各相の抵抗は同じです。

展開不平衡三相モデルの作成

  1. 1 つの相の抵抗を変更して、simplethreephasemodel_expanded_balanced の負荷を不平衡にします。相 c の抵抗器素子をダブルクリックします。[抵抗]2 に変更します。

  2. この変更したモデルのバージョンを simplethreephasemodel_expanded_unbalanced という名前で保存します。

    このモデル名は、前に RLC ブロックによってモデル化した三相負荷が各相に展開されたことを表しています。負荷は不平衡になっています。つまり、いずれかの相の抵抗が他の 2 つの相の抵抗より高くなっています。

展開平衡三相モデルと展開不平衡三相モデルのシミュレーションと結果の解析

  1. simplethreephasemodel_expanded_balanced モデルをシミュレートします。Simulink エクスプローラーのメニュー バーで、[実行] ボタンをクリックします。

  2. シミュレーション結果を表示します。Scope ブロックをダブルクリックします。

  3. データに合わせて Scope の座標軸をスケーリングするには、[オートスケール] ボタン をクリックします。

    simplethreephasemodel では、RLC (Three-Phase) ブロックの [コンポーネントの構造] パラメーターで、三相負荷が抵抗性のみになるように指定しています。このモデルのバージョンでは負荷は各相の個々の抵抗素子として展開されますが、各相の抵抗は不変です。三相システムの各相では、電圧と電流が同相のままになります。各相の抵抗が 1 Ω であるため、相電圧の大きさは相電流の大きさと等しくなります。

    これらの結果を三相抵抗モデルの結果と比較すると、複合三相端子のあるブロック (元のモデルの RLC (Three-Phase) ブロック) が、相の展開されたブロックと同じ忠実度で結果を生成していることがわかります。

  4. simplethreephasemodel_expanded_unbalanced モデルを開きます。

  5. モデルをシミュレートします。Scope の座標軸をオートスケールします。

    このモデルのバージョンでは、三相負荷の c 相の抵抗は他の相の抵抗の 2 倍になります。したがって、2 番目のプロットが示すように、この相で流れる電流は半分です。ただし、負荷は抵抗性のみであるため、電圧と電流が同相のままになります。

関連するトピック