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ブラシレス DC モーター

この例では、ブラシレス DC モーター (サーボモーター) のシステムレベル モデルをデータシート情報に基づいて作成し、パラメーター化する方法を説明します。モーターとドライバーは、単一のマスク サブシステムとしてモデル化されています。Simulink® でモデルを表示する場合、Motor and driver ブロックを選択して Ctrl + U と入力すると、マスクの下を見てモデルの構造を確認できます。

このブラシレス DC モーターのモデルでは、標準的な構成が使用されます。内側のフィードバック ループが電流を制御し、外側のフィードバック ループがモーター回転数を制御します。速度要求は Vref ピンで示される電圧によって設定され、モーターの回転方向は Vdir ピンで示される電圧によって設定されます。Vbrk ピンでの電圧が高くなると Vref がオーバーライドされ、速度要求がゼロに設定されてブレーキ操作が実行されます。

このモデルでは速度要求が 2 V に設定されますが、これは 40,000 rpm に相当します。1 秒後、Vdir ピンが高い値に設定され、モーターは反転して -40,000 rpm になります。2 秒後、ブレーキ ピンである Vbrk が高い値に設定され、モーターは減速して 0 rpm になります。ブラシレス DC モーターの効率は、電力入力に対する機械動力の比として計算されます。したがって、回転子の慣性が原因で、一時的に 0 ~ 100 % の範囲外になることがあります。

ブラシレス DC モーターのメーカー データシートによれば、停動トルクは 0.44 mNm、最大許容速度は 100,000 rpm、機械的時定数は 5 ms、回転子の慣性は 0.005 gcm^2、効率は 41 % (0.23 mNm、40,000rpm のとき)、無負荷電流は 22 mA、定格電圧は 12 V です。時定数は、メーカーの、ブロック整流を使用するモーター ドライバーの使用に基づいています。速度の基準電圧が最大の +5 V になり、指令速度が 100,000 rpm になるように、モーター ドライバーを構成できます。

Motor and driver サブシステムの Servomotor ブロックを使用して、内部電流のフィードバック ループをモデル化し、さらに機械動力と電力のバランスを取ります。システム設計では、通常、モーター ドライバーによって制御される電流スイッチングをモデル化する必要はありませんが、トルク速度特性と DC 電源からの電流が適切であることを確認する必要はあります。最大トルク値のベクトルは、実際にはドライバーの最大電流によって決定されます。モーター ドライバーには通常、最大定格モーター トルクと一致させなければならない最大電流設定があるか、または、モーターが指定過剰の場合に負荷に適用される最大トルクがあります。ここでは、最大トルク値のベクトルは、最大速度 100,000 rpm までと、それを超えるモーター停動トルクに設定されます。モーターとドライバーが使用されるシステムによって、高トルクと高速の合わさった長時間の運転でモーターが過熱することのないように確実な処理が行われることが仮定されます。

モーターの電力損失は 2 項で構成されていると仮定します。最初の項は負荷と独立した固定損失で、Vcc*I0 として計算されます。ここで、Vcc は定格電源電圧であり、I0 はドライバー電源からの無負荷の DC 電流です。この例の基となっているドライバーでのようにブロック整流が使用されている場合、I0 は、励磁された相巻線の電流の 2 倍になります。2 番目の損失項は、モーターの瞬時巻線電流の 2 乗に比例します。これは、平均トルクの 2 乗に比例する項として近似できます。2 つの損失項は Servomotor ブロックによって実装されます。

データシート値に一致するよう調整しなければならない、3 つの Motor and driver マスク パラメーターがあります。速度フィードバック コントローラーの比例ゲインと積分ゲイン、そして内側ループ電流コントローラーの時定数です。ここでは、データシートで無負荷時定数が 5 ms に指定されています。通則として、内側の制御ループは外側のループより 10 倍以上高速にする必要があります。つまり、電流コントローラーでは時定数を 0.5 ms とします。この値を設定したうえで、速度時定数が約 5 ms になるまで比例項を大きくします。次に、負荷をかけて速度ステップを実行している間に積分ゲインを設定し、5 ms ほどで定常偏差が取り除かれるまでこれを増加させます。その後、無負荷において 5 ms の立ち上がり時間を回復するために、2 つのゲインを微調整する必要があります。

モデル

Motor and Driver サブシステム

Simscape ログからのシミュレーション結果

以下のプロットは、変化する条件下でのブラシレス DC モーターの速度を示しています。負荷トルクは定数値で、常にシャフトの回転と反対になります。方向反転とブレーキのコマンドが適用されます。

リアルタイム シミュレーションの結果

この例は、Intel® 3.5 GHz i7 マルチコア CPU を搭載した Speedgoat Performance リアルタイム ターゲット マシンでテストされました。このモデルは、150 マイクロ秒のステップ サイズでリアル タイム実行できます。