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積分法の選択

はじめに

Powergui ブロックを使用して次の 3 つの積分法が選択できます。これらのオプションとは、以下のとおりです。

  • Simulink® の可変ステップ ソルバーを使った連続積分法

  • 固定時間ステップの離散化積分法

  • Simulink の可変ステップ ソルバーを使ったフェーザ法

連続積分と離散積分

Simscape™ Electrical™ Specialized Power Systems ソフトウェアの重要な特徴の 1 つとして、連続可変ステップ積分アルゴリズムか、あるいは離散化システム使った固定ステップのどちらかで電気システムをシミュレートする機能があります。小規模なシステムでは、連続積分法が通常使われ、精度の良い結果が得られます。さらに、可変ステップ積分法は、固定ステップのシミュレーションよりステップ数が少なくて済むので、ほぼ同じような精度で早いシミュレーションが期待できます。ラインへの転流が起こるような電力システムでは、可変ステップのようにイベントに敏感なアルゴリズムはダイオードやサイリスタの電流のゼロクロッシングを高い精度で検出するので、電流の断ち切れは観測されません。しかし、このような大規模なシステム (多数の状態数、あるいは非線形ブロックを含むようなシステム) に対して、連続積分法の欠点は、その高精度であることが逆にシミュレーションの実行を遅くしてしまうことです。このような場合には、離散化法の方が有利になります。

小規模とは、電気的な状態の数が 50 未満で電子スイッチが 25 未満のシステムと考えてください。回路ブレーカーは、テスト期間中に 2 ~ 3 回動作するだけなので、シミュレーション時間に影響を与えません。

フェーザ法

スイッチの ON/OFF における電圧と電流の大きさと位相だけを知りたい場合には、R、L、C 回路部品に関するすべての微分方程式 (状態空間モデル) を解く必要はありません。その代わり、電圧と電流の複素表現を使った簡単な代数方程式系を解くだけでよいのです。フェーザ法では、さらにシンプルな 1 組の方程式を解くことができます。その名前が示すとおり、この方法では電圧と電流を複素表現で計算します。フェーザ法は、特に、大きな発電機やモーターを含むシステムの過渡的状態の安定性を調べるために有用です。この種の問題では、電動機の慣性モーメントと電気的調整器の相互作用として生ずる電気機械振動に関心がもたれます。これらの振動は、低周波数 (典型的な例では 0.02Hz から 2Hz の範囲) における電圧と電流の大きさと位相に変調を引き起こします。このような低周波数を調べるために、長いシミュレーション時間 (数十秒) が必要になります。したがって、連続積分法や離散積分法は、この種の問題には適当ではありません。

フェーザ法では、高速に変化する動作モードは無視して、回路網を記述する微分方程式を 1 組の代数方程式で置き換えます。また回路網の状態空間モデルも、基本周波数と、その周波数に関係する入出力に関して記述される複素行列で置き換えます。その入力は電動機から回路網に印加される電流であり、出力は電動機の端子電圧です。フェーザ法は、電動機、タービン、調整器に関する低周波数モードの状態からなる縮退した状態空間モデルを使います。したがって、シミュレーション時間は著しく短縮されます。

連続の可変ステップ ソルバーは、このタイプの問題を解く際に非常に有効です。推奨されるソルバーは、基本周波数の 1 サイクル (1/60 秒または 1/50 秒) を最大時間ステップとする ode23tb です。この高速化手法は、あくまでも基本周波数の近傍での解を得るだけであることに注意してください。