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湿り空気システムのモデル化

対象とする用途

Moist Air ライブラリには、タンク、チャンバー、空気圧機械式変換器、センサー、およびソースなどの基本的な要素が含まれています。これらのブロックを使用して、HVAC システム、環境制御システム、その他類似のアプリケーションをモデル化します。

関連する産業には、自動車、航空宇宙、建築などが含まれます。これらアプリケーションの重要な側面は、モデルのさまざまな部分の湿度レベルを時間経過に沿って追跡する必要があることです。湿り空気ドメインは、空気と水蒸気から成る 2 種の気体ドメインです、さらに、水蒸気は凝縮してシステムの外に出る可能性があります。この効果は HVAC アプリケーションにとって重要です。水が凝縮する際の潜熱は流体の熱力学に影響するからです。

湿り空気混合体は乾燥空気と水蒸気で構成されます。微量気体は、湿り空気混合体に含まれるオプションの 3 番目の種です。微量気体の使用例は、二酸化炭素の追跡や、窒素酸化物 (NOx) などの汚染物質の追跡です。Moist Air Properties (MA) ブロックを使用して、接続されたループ内の湿り空気の特性を指定します。このブロックには、微量気体の特性をモデル化するためのいくつかのオプションもあります。Moisture & Trace Gas Sources ライブラリ内のブロックを使用して、空気混合体に含まれる水分と微量気体のレベルを増減します (水分レベルと微量気体レベルのモデル化を参照)。

混合体に含まれる気体の種はすべて半理想気体であると仮定されます。これはつまり、圧力、温度、および密度が理想気体の法則に従うということです。他の特性 (比エンタルピー、比熱、絶対粘度、熱伝導率) は、温度のみの関数です。

特に明記していない限り、湿り空気システムのモデル化で使用する圧力と温度はいずれも静圧と静温度です。

Moist Air のドメインとライブラリを使用して、以下のタスクを実行します。

  • 建築物、自動車、航空機などの環境に対応する HVAC システムの要件を開発する

  • 環境内で許容可能な温度、圧力、湿度、凝縮を確認する

  • 暖房、冷房、除湿の要件に合致する HVAC システムの容量を決定する

  • HVAC システムのパフォーマンス、効率性、コストを解析する

  • HVAC システム モデルをテスト データに対して検証する

  • HVAC のコンポーネントを設計およびシミュレートし、コンポーネント モデルを調整してリグ データをテストする

  • HVAC システム、環境モデル、コントローラーを含むモデルをシミュレートする

  • バルブ、ファン、コンプレッサーのコントローラーを設計して、安全かつ最適な動作を確保する

  • HIL テストを実行する

湿り空気ドメインのネットワーク変数

アクロス変数は、圧力、温度、比湿 (水蒸気の質量分率)、および微量気体の質量分率です。スルー変数は、混合体の質量流量、混合体のエネルギー流量、水蒸気の質量流量、および微量気体の質量流量です。変数をこのように選択すると、アクロス変数とスルー変数の積は仕事率ではないため、疑似ボンド グラフが得られます。

湿り空気システム内の水分と微量気体のレベルをモデル化するために、別個のドメインがあります。詳細については、湿り空気ソース ドメインを参照してください。

湿り空気の特性

Moist Air ライブラリの既定の流体特性は、乾燥空気、水蒸気、および二酸化炭素 (オプションの微量気体) に対応します。ただし、Moist Air Properties (MA) ブロックで流体特性を変更して、他の気体や蒸気の混合体をモデル化することができます。乾燥空気と二酸化炭素は他の種の気体に置き換えることができます。水蒸気を他の凝縮蒸気に変更することもできます (あるいは、飽和圧力に十分に大きい値を指定し、シミュレーション中に飽和に達することがないようにすれば、別種の不凝縮性気体に変更することもできます)。このようにして、任意の 3 種の気体混合体をモデル化できます。

混合体に含まれる気体の種はすべて半理想気体であると仮定されます。これはつまり、構成要素の圧力 p、温度 T および密度 ρ が理想気体の法則に従うということです。

pa=ρaRaT,pw=ρwRwT,pg=ρgRgT,

ここで、R は比気体定数です。添字 a、w、g は、それぞれ乾燥空気、水蒸気、微量気体を示します。

理想気体にはドルトンの法則が適用されます。

p=pa+pw+pg.

したがって、混合体も理想気体の法則に従います。

p=ρRT,

ここで、

ρ=ρa+ρw+ρg,R=xaRa+xwRw+xgRg.

xa、xw、xg はそれぞれ、乾燥空気、水蒸気、微量気体の質量分率です。

各構成要素のその他の特性は、温度のみの関数であると仮定されます。

  • ha(T)、hw(T)、hg(T) ― それぞれ乾燥空気、水蒸気、微量気体の比エンタルピー。

  • μa(T)、μw(T)、μg(T) ― それぞれ乾燥空気、水蒸気、微量気体の絶対粘度。

  • ka(T)、kw(T)、kg(T) ― それぞれ乾燥空気、水蒸気、微量気体の熱伝導率。

理想気体の場合、混合のエンタルピーはゼロです。したがって、混合体の比エンタルピーは、構成要素の比エンタルピーを質量分率に基づいて組み合わせたものとなります。

h=xaha(T)+xwhw(T)+xghg(T).

混合のエントロピーは、モル分率から計算できます。

Δsmix=xaRaln(ya)+xwRwln(yw)+xgRgln(yg),

ya、yw、yg は、それぞれ乾燥空気、水蒸気、微量気体のモル分率です。

したがって、混合体の比エントロピーは次のようになります。

s=xasa+xwsw+xgsg+Δsmix.

一貫した比エンタルピーの基準温度

R2023b 以降

比エンタルピーは熱力学的な量であり、基準状態に対して測定されます。湿り空気混合体における一貫性を確保するために、すべての比エンタルピーの基準温度は同じでなければなりません。湿り空気ドメインでは、一貫した基準温度 0 degC を使用します。Moist Air Properties (MA) ブロックに比エンタルピー ベクトルを入力すると、ブロックは内部的にこれらのベクトルを 0 degC で 0 kJ/kg になるようにシフトします。その後、ライブラリ ブロックは内部計算でこれらの調整値を使用します。シミュレーション データのログには、調整された比エンタルピー値も表示されます。

Thermodynamic Properties Sensor (MA) ブロックの [エンタルピーの基準状態] パラメーターを使用して、異なる基準状態に関して調整された比エンタルピー値を表示することができます。

湿度と微量気体の特性の定義

湿度と微量気体の特性を記述する方程式では、次のような記号と特性定義を使用します。添字 awg は、それぞれ乾燥空気、水蒸気、微量気体の特性を示します。添字 ws は、飽和時の水蒸気を示します。

記号特性定義
p圧力湿り空気混合体の圧力 (水蒸気の分圧や微量気体の分圧ではありません)。
T温度乾球温度、つまり一般的な熱力学的意味での温度 (湿球温度は数値が異なり、水分レベルを測定します)。
R比気体定数

一般気体定数を種のモル質量で除算したもの。混合体の比気体定数は次のとおりです。

R=xaRa+xwRw+xgRg.

φw相対湿度

水蒸気のモル数を、同じ温度で飽和するために必要な水蒸気のモル数に対する割合として示したもの。水蒸気の飽和圧力は水の特性であり、温度のみの関数、pws(T) です。理想気体の法則 (半理想気体という仮定による) は、モル分率が分圧分率と等価であることを意味します。モル分率 yw を 1 より大きくすることはできません。したがって、温度が高い場合や圧力が小さい場合は、相対湿度 1 に達するのが不可能なことがあります。

φw=ywyws|T=ywppws(T)

xw比湿

水蒸気の質量を、湿り空気混合体の合計質量に対する割合として示したもの。水蒸気の質量分率を表すもう 1 つの用語です。飽和により、比湿 1 に達するのは不可能な場合があります。

xw=MwM=m˙wm˙

yw水蒸気のモル分率

水蒸気のモル数を、湿り空気混合体の合計モル数に対する割合として示したもの。飽和により、水蒸気のモル分率 1 に達するのは不可能な場合があります。

yw=NwN=pwp

rw湿度混合比

乾燥空気および微量気体の質量に対する水蒸気の質量の比率。典型的な HVAC アプリケーションの条件では、比湿に近くなります。

rw=MwMa+Mg

ρw絶対湿度

水蒸気の質量を湿り空気混合体の体積で割ったもの。水蒸気の密度を表すもう 1 つの用語です。

ρw=MwV

xg微量気体の質量分率

微量気体の質量を、湿り空気混合体の合計質量に対する割合として示したもの。

xg=MgM=m˙gm˙

yg微量気体のモル分率

微量気体のモル数を、湿り空気混合体の合計モル数に対する割合として示したもの。

yg=NgN=pgp

水蒸気のモル分率は、比湿 (つまり質量分率) と次のように関連しています。

yw=RwRxw.

微量気体のモル分率は、微量気体の質量分率と次のように関連しています。

yg=RgRxg.

湿り空気体積をもつブロック

湿り空気ドメインのコンポーネントは検査体積を使用してモデル化されます。検査体積は、コンポーネント内の湿り空気を包含し、周囲の環境および他のコンポーネントからその湿り空気を区別します。検査面を通過する空気流量と熱流量は端子によって表されます。コンポーネント内の湿り空気体積は、内部ノードを使用して表されます。この内部ノードは表示されませんが、Simscape™ データ ログを使用してそのパラメーターと変数にアクセスできます。詳細については、シミュレーション データ ログについてを参照してください。

湿り空気体積に対しては、圧力、温度、水分レベル、および微量気体のレベルを指定しなければなりません。詳細については、有限の湿り空気体積をもつブロックの初期条件を参照してください。

以下に示す Moist Air ライブラリ内のブロックは、湿り空気体積をもつコンポーネントとしてモデル化されます。Controlled Reservoir (MA) ブロックおよび Reservoir (MA) ブロックの場合、体積は無限大であると仮定されます。

ブロック気体体積
Constant Volume Chamber (MA)有限
Pipe (MA)有限
Rotational Mechanical Converter (MA)有限
Translational Mechanical Converter (MA)有限
Reservoir (MA)無限
Controlled Reservoir (MA)無限

他のコンポーネントでは湿り空気体積が比較的小さく、そのため、コンポーネント内に湿り空気が入ってから出て行くまでの時間はごく短くなります。それらのコンポーネントは準定常状態であると見なされ、内部ノードをもちません。

参照ノードおよびグラウンディング ルール

機械ドメインと電気ドメインでは、ドメイン内でトポロジ的に異なる各回路が参照ブロックを少なくとも 1 つ含まなければなりませんが、湿り空気ネットワークのグラウンディング ルールは異なっています。

湿り空気体積をもつブロックには内部ノードが含まれており、コンポーネント内の圧力、温度、水分レベル、および微量気体レベルを提供することで、湿り空気ネットワークの参照ノードとして機能します。接続された各湿り空気ネットワークには、少なくとも 1 つの参照ノードがなければなりません。つまり、接続された各湿り空気ネットワークには、湿り空気体積をもつブロックにリストされているブロックの少なくとも 1 つがなければならないということです。言い換えれば、空気体積を含まない湿り空気ネットワークは無効なネットワークであることになります。

Foundation Moist Air ライブラリには Absolute Reference (MA) ブロックが含まれていますが、他のドメインとは異なり、湿り空気回路のグラウンディングにこのブロックを使用することはありません。Absolute Reference (MA) ブロックの目的は、Pressure & Temperature Sensor (MA) ブロックに参照を提供することです。ただし、R2023a 以降では、Pressure & Temperature Sensor (MA) ブロックに暗黙的な参照ノードが含まれ、Pressure & Temperature Sensor (MA) ブロックで Absolute Reference (MA) ブロックを使用することは不要になりました。湿り空気ネットワークの別の場所で Absolute Reference (MA) ブロックを使用すると、空気混合体の圧力と温度が絶対零度になることはないため、シミュレーションのアサーションがトリガーされます。

有限の湿り空気体積をもつブロックの初期条件

この節では、有限の湿り空気体積を使ってモデル化されたブロックに特有の初期化要件について説明します。これらのブロックは、湿り空気体積をもつブロックにリストされています。

湿り空気体積の流体状態は、圧力、温度、水分レベル、および微量気体レベルです。これらの流体状態は、混合体の質量保存、水蒸気の質量保存、微量気体の質量保存、混合体のエネルギー保存に基づいて動的に変化します。したがって、これらのブロックの初期条件を指定して、初期の流体状態を定義する必要があります。有限の湿り空気体積を使ってモデル化された各ブロックのダイアログ ボックスには [初期ターゲット] セクションがあり、ここで初期条件を指定できます。初期条件の一貫性を確保するには、4 つの変数について優先順位の高いターゲットを指定します。

  • 湿り空気体積の圧力

  • 湿り空気体積の温度

  • 次のいずれかの水分レベルを表す変数

    • 湿り空気体積の相対湿度

    • 湿り空気体積の比湿

    • 湿り空気体積における水蒸気のモル分率

    • 湿り空気体積の湿度混合比

  • 次のいずれかの微量気体レベルを表す変数

    • 湿り空気体積における微量気体の質量分率

    • 湿り空気体積における微量気体のモル分率

重要なのは、有限の湿り空気体積をもつ各ブロックで、説明したように 4 つの変数のみの優先順位が High に設定されていることです。追加の変数に高い優先順位の拘束を加えると、指定過剰になり、ソルバーは目的の初期値を満たす初期化解を見つけられなくなります。残りの変数の優先順位は None に設定してください。湿度と微量気体の特性の定義および微量気体モデル化のオプションの方程式を使用すると、水分や微量気体の測定の値を別の測定の値に変換できます。変数の初期化と指定過剰への対処の詳細については、マス-バネ-ダンパー システムの変数の初期化を参照してください。

これらのブロックの湿り空気体積の流体状態は、物理量信号出力端子 [F] によって報告されます。端子 [F]Measurement Selector (MA) ブロックに接続して、シミュレーション時の圧力、温度、水分レベル、および微量気体レベルの測定値を抽出します。

無限大の湿り空気体積を使ってモデル化されるブロックでは、体積の状態は準定常的であると仮定され、初期条件を指定する必要はありません。代わりに、これらのブロックは湿り空気ネットワークの境界条件を表します。

飽和と凝縮

有限の湿り空気体積をもつブロック (湿り空気体積をもつブロックを参照) は、相対湿度 φw が飽和時の相対湿度 φws に達すると飽和する可能性があります。飽和状態は、特定の圧力および温度において湿り空気体積が保持できる最大量の水分を表します。それ以上の水分はすべて凝縮して液体の水になります。

定義上、飽和時の相対湿度は 1 です。ただし、φws に別の値を指定して、経験的効果や他の現象をモデル化することができます。φws > 1 のときは、水蒸気の分圧が水蒸気の飽和圧力より大きくなる可能性があります。φws < 1 のときは、水蒸気の分圧が水蒸気の飽和圧力に達する前に水分が凝縮する可能性があります。

凝縮は即座には発生しません。そのため、φw が φws よりわずかに大きくなる可能性があります。凝縮の時定数は、十分な水分が凝縮して φw が φws に戻るのにかかる特性時間を表します。時定数の値を大きくすると、φw が φws を超える度合いは大きくなりますが、数値的によりロバストになります。

凝縮する水分は湿り空気ネットワークから外に出たと見なされるため、凝縮した液体水の質量とエネルギーは湿り空気体積から差し引かれます。凝縮速度は物理量信号出力端子 W によって報告されます。凝縮した液体水の流れをモデル化する場合は、凝縮速度を別の流体ネットワーク (等温流体、熱流体、二相流体、または別の湿り空気のネットワーク) の入力として使用できます。次の例は、Constant Volume Chamber (MA) からパイプを通って排出される凝縮液を、熱流体ネットワークを使用してモデル化する方法を示しています。

Simscape Fluids™ のライセンスがある場合は、Tank (TL) ブロックを使用して凝縮収集トレイをモデル化することもできます。タンク内の水位は、収集されてタンクからまだ排出されていない凝縮の量を表します。

チョーク流れ

Local Restriction (MA) ブロック、Variable Local Restriction (MA) ブロック、または Pipe (MA) ブロックを通る湿り空気の流れがチョーク状態になることがあります。チョークは、流速が局所音速に達すると発生します。流れがチョークしている場合、チョーク点における速度がそれ以上高まることはありません。ただし、空気混合体の密度が高くなる場合は、質量流量をさらに増加させることができます。これは、たとえば、チョーク点より上流の圧力を上げることによって達成できます。湿り空気ネットワークに対するチョークの効果は、チョーク ブロックを含む分岐を通る質量流量が上流の圧力と温度に完全に依存するということです。このチョーク時質量流量は、チョーク条件が維持されている限り、下流の圧力に生じるいかなる変化の影響も受けません。

次のモデルはチョーク流れを示しています。このモデルでは、Ramp ブロックの勾配は 0.005 で、開始時間は 10 です。Simulink-PS Converter ブロックでは [入力信号の単位][MPa] に設定されています。他のすべてのブロックのパラメーターは既定の値です。シミュレーション時間は 50 秒です。モデルをシミュレートすると、Local Restriction (MA) ブロックの端子 A における圧力は 10 秒の時点で大気圧から線形的に上昇し始めます。端子 B での圧力は大気圧に固定されています。

次の 2 つのプロットは、ログに記録された Local Restriction (MA) ブロックのシミュレーション データを示しています。制限におけるマッハ数 ([Mach]) は 20 秒前後で 1 に達しており、流れがチョークしていることを示しています。流れがチョークする前の質量流量 ([mdot_A]) は、増加する圧力差に対し典型的な二次挙動をたどっています。しかし、流れがチョークした後の質量流量は線形になっています。チョーク時質量流量は上流の圧力と温度のみに依存し、上流の圧力が線形的に上昇しているためです。

チョーク時質量流量が上流の条件のみに依存しているという事実が、チョーク ブロックの下流に接続された Mass Flow Rate Source (MA) ブロックまたは Controlled Mass Flow Rate Source (MA) ブロックとの不適合の原因となることがあります。Controlled Pressure Source (MA) ブロックの代わりに Controlled Mass Flow Rate Source (MA) ブロックを含む次のモデルについて考えます。

ソースによって Local Restriction (MA) ブロックを左から右に通る質量流量の増加が要求された場合、Controlled Mass Flow Rate Source (MA) ブロックがチョーク ブロックの上流になるため、流れがチョークしてもシミュレーションは成功します。しかし、このモデルでは、Gain ブロックが流れの向きを反転させ、Controlled Mass Flow Rate Source (MA) ブロックはチョーク ブロックの下流になっています。Local Restriction (MA) ブロックの上流の圧力は大気圧で固定されています。したがって、この状況でのチョーク時質量流量は一定になります。要求される質量流量が増加すると、いずれはこのチョーク時質量流量の定数値より大きくなります。その時点で、要求される質量流量とチョーク時質量流量は調整不能になり、シミュレーションは失敗します。ログに記録されたシミュレーション データを Simscape 結果エクスプローラーで表示すると、ちょうどマッハ数が 1 に達し、流れがチョークした時点でシミュレーションが失敗することが示されています。

一般に、モデルにチョークが発生する可能性が高い場合には、質量流量源ではなく圧力源を使用します。モデルに質量流量源ブロックが含まれており、シミュレーションが失敗する場合は、Simscape 結果エクスプローラーを使用して、質量流量源と同じ分岐に沿って接続されている Local Restriction (MA)Variable Local Restriction (MA)Pipe (MA) のブロックすべてでマッハ数変数を検査します。マッハ数が 1 に達するとシミュレーション エラーが起こる場合は、可能なチョーク時質量流量より大きい質量流量を求める質量流量源が下流にある可能性があります。

ブロックの端子における断面積

湿り空気ドメインの多くのブロックでは、入口端子と出口端子における断面積をブロック パラメーターとして指定できます。相互に接続する端子には同じ断面積を指定することを推奨します。たとえば、Constant Volume Chamber (MA) ブロックの端子 APipe (MA) ブロックに接続する場合、Constant Volume Chamber (MA) ブロックの [端子 A での断面積] パラメーターを Pipe (MA) ブロックの [断面積] パラメーターと同じ値に設定します。

流速が速い (マッハ数が 1 に近い) 場合は特に、接続された端子の面積の違いが予期しない温度差となって現れることがあります。詳細については、端子における断面積の指定を参照してください。

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