計算コストの推定
計算コストの推定は、モデルをリアルタイム プロセッサ上でシミュレートした際にオーバーランが発生する可能性が高いかどうかの判断に役立ちます。計算コストは、シミュレーション中のタイム ステップごとの実行時間です。リアルタイム ハードウェア上でのモデルの実行にかかる時間を推定するには、リアルタイム ターゲット マシンのシミュレーション実行予定時間を推定します。
シミュレーション実行時間を推定するには、まず特定のモデルでデスクトップ シミュレーションの実行時間を測定します。次に、同じモデルで、リアルタイム ターゲット マシン上のタイム ステップごとの平均実行時間を特定します。1 つのモデルについてこれらの実行時間の比較状況を把握すると、他のモデルをテストする際に、デスクトップ シミュレーションの実行時間からリアルタイム ターゲット マシンでの実行時間を推定できるようになります。実行予定時間を推定すると、固定ステップ、固定コスト シミュレーションで実行可能なソルバー設定の組み合わせを選択するのに役立ちます。
各タイム ステップにおいて、リアルタイム ターゲット マシンは次の図に示す手順を実行しなければなりません。
シミュレーションのオーバーランを避けるために固定ステップ ソルバーに指定する最小ステップ サイズは、次の式で決定されます。
ここで、
TET はタスクの実行時間です。タスクの実行時間には、タイム ステップのシミュレーション結果の計算、開発コンピューターからの入力の処理と出力の書き込み、データのバッファリングやメモリへのアクセスなど一般的なコンピューターのタスクの実行が含まれます。
HLT はハードウェア レイテンシ時間です。ハードウェア レイテンシ時間には、スケジューリング、割り込み、および入出力 (I/O) のレイテンシが含まれます。
Tsmin は最小ステップ サイズです。
ターゲット マシンでシミュレーションの実行とレイテンシ プロセスの処理にかかる時間が、指定したタイム ステップより短い場合、プロセッサはステップの残り時間の間アイドル状態になります。すなわち、以下のようになります。
ここで、
Ts は固定ステップ ソルバーに指定するステップ サイズです。
IT はアイドル時間です。
この式は以下のように並べ替えることができます。
タスクの実行時間、ハードウェア レイテンシ時間およびアイドル時間は変化しますが、実行予定時間の計算においてアイドル時間を固定ステップ ソルバーのステップ サイズの関数として指定することで、安全余裕を実装できます。たとえば、ソルバーのステップ サイズに 1e-5 を指定し、20% の安全余裕を設定する場合は、IT = (0.2)*(1e-5) となります。
したがって、シミュレーションの実行に利用できる時間は次のように計算できます。
ここで、
SMT は希望の安全余裕です (% で指定)。