DC モーターの性能の評価
この例では、電気ドメインと機械ドメインにまたがるシステムをシミュレートする方法を説明します。ここでは、Simscape™ ブロックで物理的コンポーネントをモデル化し、これらを現実的なモデルに接続し、Simulink® ブロックを使用して、モーター モデルのシミュレーションと変更を行う方法を学びます。
このモデルは Faulhaber Series 0615 DC マイクロモーターを基にしています。このモデルでは、1.5 V モーターの等価回路パラメーターを使用して、メーカーの見積もりによる無負荷速度、無負荷電流および停動トルクを確認します。このモデルを使用すると、必要な機械負荷モデルを追加することにより、特定用途でのモーターの性能を評価できます。
モデルの探求
- 永久磁石 DC モーターのモデル例を開きます。MATLAB® コマンド プロンプトに以下を入力します。 - openExample('simscape/PermanentMagnetDCMotorExample')- メイン モデル  - このモデルには、2 つの電気回転端子と 2 つの機械回転端子をもつ DC Motor サブシステムが含まれます。 - ブロック線図の読みやすさを向上させるため、各 Simscape ドメインは、接続ラインに対して、異なる既定の色とライン スタイルを使用します。たとえば、このブロック線図では、電気回路は濃い青色の接続ラインで示され、機械回転端子間の接続ラインは薄い緑色で示されます。物理量信号線は茶色です。 - モーターの電気端子は電気回路に接続しています。電気回路は電気接地を表す Electrical Reference ブロックと 1.5 V DC Voltage Source ブロックで構成されています。 - 機械側では、Mechanical Rotational Reference ブロックが他の要素の基準点を表しています。 - モーターの負荷は Load Torque という名前のブロックにより表されます。これは Ideal Torque Source ブロックです。このブロックは一方の側で Mechanical Rotational Reference ブロックに接続し、もう一方の側でモーター シャフトに接続します。負荷トルクは Step Input サブシステムによって指定します。このサブシステムは、Load Torque ブロックの制御端子 S への物理量信号を介して接続されています。  - Step Input サブシステムには、通常の Simulink Step ソース ブロックが含まれ、これが制御信号を生成します。Simulink-PS Converter ブロックは制御信号を物理量信号に変換し、Connection Port ブロック S を介して Load Torque ブロックの制御端子に適用します。 - このブロック線図にはまた、どの Simscape モデルでも必要とされる Solver Configuration ブロックが含まれています。これには、Simscape シミュレーションの数値アルゴリズムに関連するパラメーターが含まれています。 
- DC Motor サブシステムをダブルクリックして開きます。 - DC Motor サブシステム  - このモーターは、Rotational Electromechanical Converter ブロックにより接続された電気回路と機械回転回路で構成されています。電気回路は、Resistor ブロックと Inductor ブロックで構成されています。また、2 つの電気端子があり、モーターの V+ および V- 電気端子に対応しています。機械回路には Rotational Friction ブロック、Inertia ブロック、2 つの機械回転端子 C および R (それぞれモーターのケースと回転子に対応) が含まれています。物理ネットワークで変数の正しい方向を維持するために、Rotational Friction ブロックと Rotational Electromechanical Converter ブロックの端子 C と端子 R がどのようにモーターの端子 C と端子 R に接続されているかに注意してください。 
モデルの実行
- Motor RPM スコープをダブルクリックして開きます。シミュレーション中、このウィンドウはシャフトの速度を時間の関数として表示します。 
 をクリックしてシミュレーションを開始します。Simscape ソルバーはモデルを評価し、初期条件を計算して、シミュレーションを実行します。この処理には数秒かかることがあります。モデル ウィンドウの左下の隅のメッセージで、ステータスを確認できます。 をクリックしてシミュレーションを開始します。Simscape ソルバーはモデルを評価し、初期条件を計算して、シミュレーションを実行します。この処理には数秒かかることがあります。モデル ウィンドウの左下の隅のメッセージで、ステータスを確認できます。
- Motor RPM スコープ ウィンドウでシミュレーションの結果を調べます。  - 最初の 0.1 秒の間はモーターに外部負荷がかからず、速度が無負荷値まで上がります。0.1 秒後に、モーター シャフトへの負荷として停動トルクが加えられます。Motor RPM のスコープを拡大表示すると、モデルが無負荷速度と停動トルクに対するメーカーのパラメーターと一致していることがわかります。 
- モデル例では、MATLAB コードを使用してシミュレーション結果を解析する方法についても説明しています。電流と負荷トルクをプロットするには、モデルの注釈で - Plotハイパーリンクをクリックします。Figure に表示される電流は、無負荷電流に対するメーカーのパラメーターと一致します。 
電源電圧の変更
電源電圧を 1.25 V に低下させ (バッテリーの残量低下のシミュレーションを実行するため)、負荷トルクを変動させて、この電圧低下状態での最大トルクを検出します。
- DC Voltage Source ブロックをダブルクリックします。[定電圧] を - 1.25 Vに設定します。 
- シミュレーションを実行します。電圧低下による無負荷速度への影響に注意してください。  
- 負荷トルクを変動させて、この電圧低下状態での最大トルクを検出します。Step Input サブシステムを開き、Step ソース ブロックをダブルクリックします。入力信号に別の最終値を入力して、シミュレーションを再実行します。 - 次の図は、[最終値] が - -0.2e-3に設定されている場合のシミュレーション結果を示しています。トルク速度曲線の大きさは DC モーターの電圧に比例するため、この値は- (1.25/1.5)*0.24mNmに対応します。 
モーター負荷の変更
トルク源を単純な機械負荷 (ファンなど) に置き換えます。この負荷に対するトルクは alpha*speed^2 で定義され、alpha は -1e-10 Nm/(rad/s)^2 です。
- Step Input サブシステムをモデルから削除します。 
- Simscape ブロック ライブラリで、Foundation Library、Mechanical、Mechanical Sensors を開きます。 
- Ideal Rotational Motion Sensor ブロックをモデル ウィンドウにドラッグします。 
- Foundation Library、Physical Signals、Functions を開きます。 
- PS Product ブロックと PS Gain ブロックをモデル ウィンドウにドラッグします。 
- 次の図にようにブロックを接続します。ブロックを回転させるには、そのブロックを選択して Ctrl + R キーを押します。  
- PS Gain ブロックをダブルクリックします。[ゲイン] パラメーターの隣にある最初のエディット ボックスに、値 - -1e-10を入力します。2 番目の、単位のドロップダウン リストをもつコンボ ボックスに、単位式「- N*m/(rad/s)^2」を入力して [適用] をクリックします。
- シミュレーションを実行して、新しい負荷でのモーターの性能を評価します。 