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地上デジタル ビデオ放送 (DVB-T)

この例では、地上デジタル テレビ信号を送信するための欧州電気通信標準化機構 (ETSI) EN 300 744 規格の一部を示します。この規格は送信機の設計について規定し、受信機の最小性能要件を設定しています。

例の構造

この例では以下を行います。

  • 標準で規定されている "2k モード" での DVBT 送信機のモデル commdvbt および受信機の設計案を示す

  • 受信機モデルが性能要件を満たしているかどうかを判断するのに役立つ誤り統計を生成する

  • Rectangular QAM Demodulator ブロックを使用して正確なビット単位の対数尤度比 (LLR) を計算するように変更された DVB-T 64-QAM Demapper サブシステムを使用する代替モデル commdvbt_alt を提示する

この規格ではデータに対して行われる主な処理がリストと回路図で示されています。commdvbt モデルのブロックの一番上の行は、送信機の回路図の構造を模倣したものです。commdvbt モデルのサブシステムは、主要なプロセスを実行します。

次の表に、回路図のサブシステムと対応するプロセスを示します。

モデルの一番下の行にあるアイコンは受信機を構成するサブシステムを示しています。また、このモデルにはランダム データのソース、チャネル モデル、誤り統計計算機およびいくつかのシンクも含まれています。

モデルの変数

モデルでは次の表に示す変数を使用します。

これらの変数の値は commdvbt_tablegen 補助ファイルによって計算されます。

受信機の設計

この規格ではデインターリーブなどのいくつかの逆操作は明確に定義されていますが、受信機の実装方法は指定されていません。この例では、以下の機能を使用して受信機設計案を示します。

  • 軟判定を行う 64-QAM デマッパー。その入力にある各複素数に対して 6 つの実数のセットを生成します。これら 6 つの数値は実数部および虚数部の第 1 ビット、第 2 ビット、および第 3 ビットでの軟判定を示しています。Viterbi Decoder サブシステムは軟判定数値を解釈し、その数値を使用してパンクチャド畳み込み符号を正しく復号化します。正確なマッピングをさらに詳しく調べるには DVB-T 64-QAM Demapper サブシステムと変数 dvbt_qam を参照してください。

  • Viterbi Decoder ブロックのトレースバック長 136。このブロックは最上位の Viterbi Decoder サブシステム内に表示されます。

受信遅延の計算

DVB-T 内部インターリーバーおよびデインターリーバーには、以下のフレーム サイズの再バッファーと対応する遅延が含まれます。

  • 2176 から 756、その結果として 756 サンプルの遅延

  • 756 から 9072、その結果として 9072 サンプルの遅延

  • 9072 から 756、その結果として 0 サンプルの遅延

  • 756 から 2176、その結果として 2176 サンプルの遅延

この結果として、12004 サンプルの遅延となります。2176 はビタビ復号化器への入力フレーム サイズなので、mod(12004,2176) は 1124 の遅延となります。これは、レート 3/4 符号化により 1124*3/4 = 843 サンプルに対応します。トレースバック長が 136 の場合、ビタビ復号化器はさらに 136 の遅延を追加することによって、合計遅延は 843+136 = 979 になります。畳み込みデインターリーバーへの供給前に実際のコードワードを整列させるために、1632-979 = 653 サンプルの遅延が別に追加されます。またレート 3/4 符号化により 12004 の遅延が 12004*3/4 = 9003 として現れます。したがって、畳み込みインターリーブおよび畳み込みデインターリーブを除くモデルの合計遅延は 9003+136+653 = 9792 となります。これは '内部' Error Rate Calculation ブロックでのフレーム サイズが 1632 なので 6 フレームに相当します。

12 行のシフト レジスタをもつ、畳み込みインターリーブや畳み込みデインターリーブは 11 フレームの遅延を追加します。このため、'外部' Error Rate Calculation ブロックの受信遅延は合計で 6 + 11 = 17 フレームとなります。

結果と表示

この例の性能を調べるには、例に含まれている Sink ブロックを使用します。このブロックを次の表に示します。

次の表示のシミュレーション パラメーターを設定します。

地上デジタル ビデオ放送 (DVB-T) の代替方法

commdvbt_alt モデルは受信機で 64-QAM デマッパーをモデル化するための代替方法を示しています。

代替バージョンで 64-QAM デマッパーがどのように実装されるかを確認するには、commdvbt_alt モデルの代替 DVB-T 64-QAM Demapper サブシステムと commdvbt モデルのオリジナルの DVB-T 64-QAM Demapper サブシステムを比較します。

commdvbt — オリジナル モデルではサブシステムベースの実装を使用して軟判定が計算されます。受信信号を適切にスケーリングした後に同相および直交位相信号成分が抽出され、さまざまなビットの軟判定を得るためにシフトされます。

commdvbt_alt — 代替モデルでは正確なビット単位の LLR を計算するために Rectangular QAM Demodulator ブロックが構成されます。ノイズ分散を指定しなければなりません。ノイズ分散は受信信号と DVB-T 64-QAM Mapper によって生成される信号を使用して計算されます。この方法では組み込みブロックを使用することによって信号コンスタレーションのための軟判定の導出が容易になります。

サポート ファイル

この例では、次の補助ファイルとモデルを使用します。

  • commdvbt_tablegen.m — 例のモデルで使用される変数を計算するための補助ファイル

  • commdvbt.slx"2k モード" 用に構成された DVBT 送信機と受信機設計案のモデル

  • commdvbt_alt.slx — Rectangular QAM Demodulator ブロックを使用して正確なビット単位の対数尤度比 (LLR) を計算するように変更された DVB-T 64-QAM Demapper サブシステムを使用する代替モデル

参考文献

ETSI Standard EN 300 744: Digital Video Broadcasting (DVB); Framing structure, channel coding and modulation for digital terrestrial television, European Telecommunications Standards Institute, Valbonne, France, 1997.