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ALOHA および CSMA/CA パケット化された無線ネットワーク

この例では、Simulink®、Stateflow® および Communications Toolbox™ を使用して標準の ALOHA または CSMA/CA MAC をシミュレーションする方法について説明します。

背景

ALOHA: ALOHA は、1971 年に運用可能になった将来性のあるランダム アクセス プロトコルです。ALOHA では、パケットの送信が可能になると、ノードは無線搬送波の検出を行わずすぐにパケットを送信します。その結果、同時に転送された場合に受信機で無線パケットが衝突を起こす場合があります。そのため、短い肯定応答パケットを送信することによって正常なパケット受信の肯定応答を行います。肯定応答が妥当なタイミングで受信されなかった場合は、バイナリ指数バックオフなどによって決定される後の時点でデータ パケットが再送信されます。

CSMA/CA: 搬送波感知多重アクセス/衝突回避方式は、無線ノードがデータ パケットを送信する前に最初に無線媒体の検知を行う際に従う、改良型のランダム アクセス スキームです。媒体が使用中であると検知された場合、たとえばバイナリ指数バックオフに従って、送信が延期されます。衝突回避は、(i) チャネルがアイドルであることが検出された後にフレーム間隔時間 (IFS) 待機すること、(ii) コンテンション ウィンドウから無作為に選択された、一定数の (必ずしも連続しなくてよい) 検出されたアイドル タイム スロット (すなわち、適応できる範囲の可能なバックオフの継続期間) の後に限り送信すること、(iii) Request-to-Send および Clear-to-Send (RTS および CTS) フレームをやり取りすることによって可能です。この例では、これらの 3 つの方法のうち最初の 2 つ (IFS とコンテンション ウィンドウ) をモデル化します。CSMA/CA は、数ある規格の中でも特に Ethernet、IEEE 802.11、および IEEE 802.15.4 に採用されています。

概要

この例では、3 ノードの PHY/MAC ネットワークをモデル化します。すべてのノードが範囲内にあり、2 つのノード間の転送は 3 番目のノードから受信および干渉することができます。

既定の構成では、ノード 1 からノード 3、ノード 3 からノード 2、およびノード 2 からノード 1 へデータ フレームを送信できます。肯定応答フレームは、ノード 3 からノード 1、ノード 2 からノード 3、およびノード 1 からノード 2 へ送信されます。

MAC スキームは ALOHA または CSMA/CA のいずれかにできます。これは最上位のスイッチにより決定されます。MAC フレームは、QPSK ベースの PHY 層を使用して PHY 波形に符号化または PHY 波形から復号化されます。

通常バックオフ持続時間はデータ フレームの期間よりもずっと短いので、MAC 層は非常に細かいタイムスケール (0.8 マイクロ秒ごと) で動作します。その結果、Simulink モデルはスカラーベースであり (すなわちほとんどの信号長が 1 に等しい)、MAC/PHY 層は、フレーム、すなわちサンプル群を処理しません。

無線トランシーバー

各無線トランシーバーは、受信および送信動作を可能にする PHY および MAC を結合した実装です。次の図の左側は PHY 層、右側はデータ リンク層 (MAC および論理リンク制御) に相当します。

受信側のチェーンでは、トランシーバーが受信した波形の PHY 層を復号化し、対応する MAC プロトコル データ単位 (MPDU) を MAC 層に渡します。MAC 層でデータと肯定応答フレームが処理されます。

送信側のチェーンでは、論理リンク制御サブ層が、新しいデータ フレームが挿入されたことを判断したとき、または MAC サブ層が、受信したデータ フレームに対して肯定応答を送信する必要があるときにデータ リンク層が MAC フレームの送信を開始します。データ MAC フレームは、上位の第 3 層 (ネットワーク層) からの入力であるペイロードの先頭に MAC ヘッダーを、および末尾に CRC MAC フッターを追加することによって生成されます。肯定応答 MAC フレームにはペイロードは含まれず、MAC ヘッダーと CRC フッターのみが含まれます。

論理リンク制御

論理リンク制御 (LLC) サブ層は、トランシーバーへデータ パケットを挿入する役割を担います。これは主に Stateflow チャートを使用して実装されます。パケット到着間隔は、指数関数的に分布し、これはポアソン過程に対応します。

次に Stateflow チャートは、次のパケットが到着するまでパケット到着間隔をカウント ダウンします。このチャートは、追加のフレーム送信数を割り出すことによる大きいパケットからより小さいデータ フレームへのセグメンテーションのモデル化も行います ("TxMore")。

ALOHA MAC 層

最上位の MAC スイッチが ALOHA に設定されている場合、データ リンク層の MAC サブシステムは、実質的に次の Stateflow チャートのように動作します。

チャートの左側は、受信したデータ フレームの肯定応答を担います。肯定応答を送信する前に、送信機はまず短いフレーム間隔 (SIFS) の間待機します。次に、肯定の 'TxAckOn' 信号を肯定応答フレームの期間に出力します。

チャートの右側は、データ フレームの送信を担います。データ フレームを送信する前に、送信機はまず短いフレーム間隔 (SIFS) の間待機します。次に、データ フレームの期間に肯定の 'TxDataOn' 信号を出力することによって、無線媒体を検出せずに信号を送信します。その後ノードは、肯定応答の受信を一定の時間間隔内待機します。タイムアウト前に肯定応答を受信すると、現在のデータ フレーム送信を終了します。そうでない場合は、ノードがバックオフ状態に入り、最初のバックオフ インスタンスを除いてコンテンション ウィンドウ (CW) を毎回 2 倍にします。バックオフ持続時間は、間隔 [0, CW] から無作為に選択されます。バックオフ試行の最大回数に達すると、トランシーバーはこのデータ フレームの送信失敗を宣言します。

CSMA/CA MAC 層

最上位の MAC スイッチが CSMA/CA に設定されている場合、データ リンク層の MAC サブシステムは、実質的に次の Stateflow チャートのように動作します。

CSMA/CA チャートは ALOHA チャートとある程度類似していますが、異なる点もあります。

  • トランシーバーは無線媒体を検出します。

  • データ フレームは、無線媒体がアイドルであることが検出されてから、フレーム間隔 (IFS) の時間が経過するまでは送信されません。

  • バックオフ カウンターは、媒体がアイドルであることが検出された場合にのみデクリメントされます。

物理層

送信機: 送信機は、MPDU ビットでの QPSK 変調を実行します。ビット レートは 20 MHz、シンボル レートは 10 MHz です。QPSK シンボルは次に "Tx/Rx Switch" サブシステムのレイズド コサイン フィルターでフィルター処理されます。

チャネル: フィルター処理された PHY 波形は、マルチパス フェージングおよびホワイト ガウス ノイズが適用されるネットワーク チャネルを通過します。ネットワーク チャネルは、複数の他のノードによって送信された重ね合わされた信号を各ノードが受信できるようにします。マルチパス フェージングは、NetworkChannel System ブロックを使用して適用されます。ホワイト ノイズは、AWGN Channel ブロックのマルチチャネル機能を使用して追加されます。

受信機: トランシーバーは、振幅が一定のしきい値を超えた場合にのみ信号波形を処理します (Signal Detection サブシステムを参照)。その後、受信された波形は、判定フィードバック イコライザー (DFE) を使用してイコライズされます。このコンポーネントは、マルチパス フェージングによって生じる符号間干渉 (ISI) を低減し、小さいシンボル タイミング オフセットと搬送波オフセットを補正し、その高速収束がパケット化されたネットワークに適応します。次に、イコライズされた QPSK シンボルが復調されます。フレームの開始、PHY ペイロード長およびフレーム タイプ (データまたは肯定応答) を特定するために対応するビットが CRC 検出器に渡されます。

シミュレーション結果

モデル シミュレーションでは、各トランシーバーに 1 つのスコープが示されています。各スコープは、各トランシーバーの送信された信号 (上の軸) およびバックオフ カウンター (下の軸) を示します。

同時に、最上位のモデルは、3 つの Display ブロック内のノードごとのスループットを示します。スループットは、正常に肯定応答されたデータ パケットの数を測定することによって計算されます。

その他の調査

  • 使用した MAC スキームは、ALOHA と CSMA/CA (既定の設定) を切り替えることができます。MAC スキームを ALOHA に変更すると、既定のパケット到着率のノード スループットが低くなります。これは、ノードが無線搬送波を感知しないため ALOHA パケットがより頻繁に衝突するからです。

  • パケット到着率は、各ノードのダイアログ マスクでカスタマイズできます。ネットワーク飽和点は、各ノードの同じパケット到着率を漸増することなどによって、経験的かつ反復的に見つけることができます。低い到着率を増加することによってノードのスループットを増加できます。一方、高い到着率を (飽和点を超えて) 増加すると、パケットの衝突およびノードのバックオフがより頻繁になるため実のところスループットに有害な影響を与えることがあります。

  • 各ノードの到着率を不均衡にすると、不公平なシナリオを確立できます。たとえば、1 つのノードが非常に頻繁に媒体を取得して低いコンテンション ウィンドウを維持する一方で、他のノードは長時間バックオフし、媒体には散発的にのみアクセスする可能性があります。

  • ノードの乱数シードをそれらのブロック マスクにおいて変更し、別のランダム アクセス シナリオを可能にすることができます。たとえば、指定のパケット到着率の場合、乱数シードは、最初の送信をどのくらい早く発生させるかを決定します。

参考文献

  1. N. Abramson, The ALOHA System Final Technical Report, NASA Advanced Research Projects Agency, October 11, 1974

  2. IEEE Standard for Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications, Nov. 1997. P802.11