5Gとは

5G(第5世代移動通信)とは、4G LTEに続く次世代の移動通信システムです。現行の4G(第4世代移動通信)、LTEと比較して5G通信では、通信速度の超高速化や通信システムの大容量化といった性能向上が目標とされています。5Gの無線仕様である5G NR (New Radio)は、移動通信システムの標準化団体である3GPPによって、2018年6月に5G Phase1となるRelease 15の策定が完了しました。

5G実用化の2020年までに急増する通信量

近年、スマートフォンやタブレットの急速な普及により、高画質の動画視聴やAR(拡張現実)を使用するアプリケーション、ゲームなどインターネットを利用する場面は急増しています。また、5GはIoTや自動運転など、低遅延で高速に大容量のデータを送受信できる通信技術への要求が高まるアプリケーションの開発を加速させるテクノロジーとして期待されています。自動車以外でも、交通や農業、エネルギー、医療・ヘルスケア分野など、IoTの広がりにより、今後さまざまな分野でIoTデバイスやセンサが5Gネットワークに接続されるようになると考えられ、通信量はさらなる増大が見込まれています。2010年から通信量は毎年2倍に増加しており、5Gが実用化される2020年には2010年の1000倍に至ると予測されています。

5Gを活用した様々なサービスが検討されています。オリンピック会場のような大規模なイベントが行われているエリアでは、無線通信を利用した様々なサービスも検討されているため、スポット的に激増する通信量に柔軟に対応する必要があり、4G LTEよりもはるかに進化した5Gの技術革新なしでは、新たなサービス実現が困難な状況です。

5G(第5世代移動通信)が目指すあらゆるモノが無線通信でつながる世界

5Gに求められる条件

これまで以上に高度かつ幅広いサービスが求められる中、世界の70億のヒト、7兆個のモノが接続できる環境を2020年に実現するため、5Gには以下の条件が検討されています。

  • 収容容量:2010年と比較して1000倍
  • 通信速度:ピークデータレート 10Gbps以上
  • 超低遅延:無線区間遅延 1ms以下
  • 省電力:90%のエネルギー削減

 

5Gの構成技術

5Gに求められる条件を満たすため、現在、5Gの技術研究が世界中で盛んに進められています。日本では、電子情報通信学会 無線通信システム研究会(RCS)や、2014年に設立された、第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)が中心となり、5G通信を支える技術の研究を進めています。収容容量や通信速度など、5G通信に求められる高度で複雑な条件をクリアするには、以下の複数の先端技術の組み合わせが必要となります。

準ミリ波、ミリ波の利用

5Gでは、6GHz 以上の準ミリ波、ミリ波といった、3Gや4G LTEよりも高い周波数の利用が検討されています。広帯域が確保できる一方で、3Gや4G LTEで使用されている周波数と比較すると直進性が強い、天候などの影響を受けやすく伝播距離が短いなどの課題があり、これまでの技術だけでは、セルラーシステムでの利用は困難です。

Massive MIMO/ビームフォーミング

直進性が強く、伝送距離が短くなる準ミリ波、ミリ波を効率よく利用するためには 、多くのアンテナを利用し、電波の位相や強度を変更することで指向性を持たせ、目的の方向にビームを向けるMassive MIMOビームフォーミングの技術が5Gには不可欠です。

ヘテロジニアスネットワーク

5Gは現行の4G LTEと置き換わるものではなく、WiFiも含めた既存システムと共存するシステムです。ヘテロジニアスネットワークにより、規格や伝送距離が異なる無線システムを組み合わせ、それぞれのユーザーに最適なシステムを割り当てることで、周波数利用効率を向上させる技術が5Gの実用化を前に検討されています。

ピコセル/フェムトセル

ピコセル、フェムトセルは、マクロセルと比較して、送信出力が低くエリア半径が小さい小型の基地局を指します。屋内、電柱、街灯などへの設置も可能なサイズで低コストのため配置がしやすいというメリットがあります。5G通信向けに検討されている伝播距離の短い周波数では、ピコセルやフェムトセルなどのスモールセルを多数配置し、マクロセルと連携して(ヘテロジニアスネットワーク)、トラフィックの向上を目指しています。

NOMA

NOMAは、ひとつのサブバンドに複数のユーザー情報を多重することでスループットの向上を目指した技術です。NTTドコモが主導となり研究が行われており、ユーザー間の干渉が発生するものの、受信側に逐次干渉キャンセラを用いることで、特にチャネルの状態が大きく異なるユーザー同士を多重した場合に、高い効果が見込まれます。

キャリアアグリゲーション

キャリアアグリゲーションとは、複数の搬送波を束ねることで、広い帯域を確保し高速に通信を行う技術です。連続した周波数だけでなく、離れた周波数も束ねることができるため、帯域が十分取れない周波数の活用もできる技術です。

 

5G(第5世代移動通信)のサービスイメージ図

MATLAB/Simulinkを利用した5G開発

従来の無線通信システム開発には、それぞれの開発フェーズで異なるツールを使用し、異なる指標で評価が行われてきました。同じ内容のテストベンチをそれぞれのフェーズで異なる環境で構築するため、工数の増加だけでなく、ヒューマンエラーが入る機会も増加しています。

5Gの技術開発において、高度で複雑な先端技術の組み合わせが必要になるのは確実な中、ベースバンドやRF、アンテナといった異なる技術要素を、個別に最適化する従来の開発手法では、効率よく進めることが難しくなりつつあります。このため、5G開発にはシステム全体で最適化する、統合的な開発アプローチが重要となります。

MATLAB®/Simulink®を利用した開発環境では、新規アルゴリズムの検討から、プロトタイプを作成し実信号を利用した試験まで、統一したプラットフォームでカバーすることができます。設計工程からモノづくりにいたる開発フェーズを、統合的にサポートするMATLAB/Simulinkは5Gの技術開発に最適な環境を提供します。

MATLAB/Simulink環境での5G開発のポイント:

5G NR 準拠の設計

3GPP Release 15に準拠したシミュレーションや検証のために、5G Toolbox™はリンクレベルシミュレーション、実装のためのゴールデンリファレンスの設計、および波形生成を提供します。

  • NR5G物理層の振る舞いをシミュレーション
  • 送信機、受信機の信号処理
  • TDL/CDLチャネルモデル
  • NR波形生成
  • リンクレベルシミュレーション
  • スループット測定
  • 同期バースト (SS)
  • セルサーチ
  • 多数の詳細なサンプルコード
  • リソースブロックの可視化

異なるパターンでビーム形成される各SSブロック

信号カバレッジの可視化

MATLABは、信号伝搬経路に対する地形の影響を考慮して、カバレッジを確認するためにマップ上のRF信号のSINR (信号対干渉雑音比) を可視化するためのツールを提供します。

SINR マップ (5Gアーバンマクロセルテスト環境)

送信機と受信機間のLoS (Line-of-Sight) プロット

5Gに並行したLTE/WLAN の進化

トラフィックの増加をカバーするには、5Gの開発と並行して、LTE/WLANの高度化も必要です。LTE Toolbox™WLAN Toolbox™は、規格に準拠した信号の生成、解析が行うことができ、短期間でのシステム構築および検証を可能にします。

Release 12に準拠したキャリアアグリゲーション波形

フィルタリング後の波形

EVM

Massive MIMO、ビームフォーミング

Phased Array System Toolbox™Antenna Toolbox™は、5G通信に必要なアンテナアレイ設計およびエレメントの配置を高速化します。アレイ信号処理、ビームフォーミングおよびビームステアリング解析、そしてアンテナ特性の解析が可能です。

アンテナアレイとビームフォーミングの例

ハードウェアプロトタイピング

MATLAB/Simulinkは、5Gアルゴリズムをハードウェアに実装するのに必要なコストと開発時間を削減できるツールも提供しています。

Embedded Coder®は、組み込みプロセッサをターゲットにしたC/C++コードを自動的に生成します。HDL Coder™は、FPGAをターゲットにしたHDLコードを自動的に生成します。さらに、SDR (ソフトウェア無線) サポートパッケージにより、市販のSDRプラットフォームを使用して、実際のRF信号でプロトタイプを作成することができます。

プロトタイプによる送受信システム

LTEとビームフォーミングのシナリオ

フィールドテストデータの取得、解析、表示

5Gをはじめとした次世代の無線通信システムの実証検証や、既存の無線通信システムの基地局のパラメータ変更を目的とした電波強度やSINRなどの計測が盛んに行われています。計測後は、数値データそのままでは理解し難いため、取得したデータを強度ごとに色分け表示して直感的に理解することが求められています。MATLABを使用することで、テストデータと測定結果の取得、分析、可視化の自動化が可能です。これらのワークフローは、以下のタスクを実行する対話型アプリとして配布できます。

ワークフローの各ステップの詳細は、MATLABが提供するフィールドテストデータ解析で解説しています。

  • 計測器を接続、制御
  • DAT、CSVなど様々なフォーマットで提供されるテストデータを読み込んで前処理
  • データの解析、演算
  • グラフや地図で結果を可視化

電波強度測定器で取得したデータの表示


Massive MIMOおよびミリ波

アレーアンテナ、送受信機、空間信号処理の手法をモデリング、シミュレーション


新しい無線波形の設計

物理層アルゴリズムとリンクレベル性能をシミュレーション、解析


ハードウェアプロトタイプ作成とテストベッド開発

実信号テストを行い、FPGAベースのハードウェアにカスタムアルゴリズムを展開

参考: Wireless Transceiver, OFDM, ローカル5G

MATLABによる5G開発