Medrad 社が MRI 血管造影剤注入ポンプの安全性を確保

課題

患者への薬品投与を安全なレベルに管理するMRI 血管造影剤注入ポンプの設計

ソリューション

ポンプの圧力センシング技術の向上に MathWorks ツールを活用

結果

  • 設計期間を数か月短縮
  • 栄誉ある業界の賞を受賞
  • FDA の認可を獲得

「MathWorksツールにより、システムレベルでコンポーネント間の相互作用を理解することが可能となり、物理特性をモデリングし、ポンプの安全限界を非常に効率的かつ迅速に判断することができました。」

John F. Kalafut, Medrad
Medrad の Spectris Solaris 造影剤注入システム

Medrad (現在はBayer HealthCare傘下) が開発した造影剤注入ポンプによって、医師は、放射線画像や磁気共鳴 (MR) 画像を利用して、すばやく動脈閉塞を見つけ、1 本の血管に焦点を当て、鼓動する心臓の健康状態を判断することができます。Medrad の Spectris Solaris ポンプは、MR 画像の撮影中に毎分最大 10 ml の速度および最高 325 psi の圧力で、造影剤や生理食塩液を患者に自動的に注入します。患者の安全を確保しながら高画質の画像を撮影するためには、正確な量を注入しなければなりません。

Medrad のエンジニアは MathWorks ツールとモデルベース デザインを活用して、コストのかかるハードウェア プロトタイプを製作することなく、安全性を確保できるポンプの圧力を予測しました。

Medrad の製品革新・高度開発グループの上級研究員である John F. Kalafut 氏は次のように述べています。「正確な量の造影剤を注入することは、当社の安全性アーキテクチャにとって非常に重要なことです。MathWorks ツールのおかげで、設計の安全性を確保するために適切な判断を下すことができました」

課題

確実に安全なポンプの圧力を予測するために、Medrad では患者への注入圧力を測定するテクノロジーを向上する必要性に迫られていました。このため、注入圧力の測定器にモーターの電流を使用する代わりに、歪みゲージを使って圧力の監視を向上することにしました。また、モーターのコントローラーとしてデジタル信号プロセッサー (DSP) を使用することにしたため、モーター制御信号の計算に固定小数点演算を使用する際の影響を評価する必要がありました。

さらに、安全性と最適な性能を確保するために、ポンプの圧力測定システムが他のシステム コンポーネントや DSP モーター コントローラーとどのように応答し、機能するかを完全に理解しなければなりませんでした。

Kalafut 氏は次のように述べています。「この装置の流体の動特性やユニットの圧力生成に対し、異なるサブシステムがどのような影響を与えるかを理解することが必要でした」

また Medrad は、数学モデリングとシミュレーションを活用することで、FDA の認可を受けるために必要なハードウェア テストを補完し、効率化したいとも考えていました。

さらに、競争の激しい市場に迅速に対応するために、設計期間の短縮が迫られていました。

ソリューション

Medrad の Spectris Solaris 造影剤注入システムは、複数のサブシステムで構成されています。Medrad では MathWorks ツールを使用して、ポンプのモーター制御と安全装置を設計しました。

Kalafut 氏は次のように述べています。「モデルベースデザインのアプローチにより、各サブシステムを数学的にモデリングできました。これによって、システムの動作を理解し、ポンプの圧力が上昇するスピードを決定できるようになりました」

Medrad では MATLAB®、Simulink®、Control System Toolbox™ を活用して、システムの要求仕様の定義、システムの性能の定量化、モーターの制御ループ応答の調整、モーターの引き込み電流の予測、ならびにバッテリの予測寿命の判断といった作業を行いました。

これらの作業はいずれも、実際のハードウェアが利用可能になり、ソフトウェアが作成される時点よりもずっと以前の段階で行われています。

Kalafut 氏は次のように述べています。「Simulink があれば、システムやサブシステム モデルのデモを行えるので、関係者にコンポーネント間の関係を視覚的に理解してもらうことができます」

最終テストでは、歪みゲージに対する高周波(RF)エネルギー結合により、望ましくないシャットダウンが発生することが発見されました。このため、Signal Processing Toolbox™ と DSP System Toolbox™ を利用して、信号を適切な状態に調整する高度なフィルターが設計され、徹底的なシミュレーションが行われました。

Kalafut 氏は次のように述べています。「DSP System Toolbox と Signal Processing Toolbox を利用して、元の単純な平均化フィルターを、より高度なフィルターに作り替えました。この作業では、プロジェクトの期間を 3 週間短縮できました」

Medrad では会社全体で MathWorks ツールを活用して、開発期間の短縮、製品の品質向上、新しいテクノロジーや革新的な製品の研究などを行っています。 新しい心臓血管注入システムを担当する別のチームは、既存の Simulink モデルを利用して、さまざまなシステムの要求仕様を定義することができました。Kalafut 氏は次のように述べています。「これこそが、モデルベース デザインと Simulink が C や Fortran よりも多くの利点をもつ領域です」

また、新しい患者モニター システムでは、Embedded Coder® を利用して Simulink ブロック ダイアグラムから組込みソフトウェアを自動的に作成しています。

さらに、Simulink Real-Time™ で造影剤注入ポンプの流体の動特性と人間の血管系の HIL シミュレーションを作成しました。ポンプ コントローラーの設計を検証する際には通常、実際に液体を使ったテスト (ウェット テスト) が必要とされますが、Medrad ではこのリアルタイム シミュレーションのおかげで、ウェット テスト の回数を減らすことができるでしょう。

結果

  • 設計期間を数か月短縮. Kalafut 氏は次のように述べています。「Simulink のおかげで、ハードウェアの製作やソフトウェアの作成を行わずに、安全性を確保できる圧力を調査して予測することができました。これによって、圧力サブシステムの設計期間を数か月短縮できました」

  • 栄誉ある業界の賞を受賞. Kalafut 氏は次のように述べています。「Quality For Life® と呼ばれる当社の厳しい品質基準は、製品のコンセプトから製造やサービスにいたるまで適用されており、Malcolm Baldridge National Quality Award の受賞へとつながりました。MathWorks ツールのおかげで、高品質な製品を設計することができたのです」

  • FDA の認可を獲得. Kalafut 氏は次のように述べています。「MathWorks ツールのおかげで、数学モデリングやシミュレーションを活用して、安全な製品を設計したことを厳密に実証することができました」