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Daimler AG における世界各地の燃料電池車から収集したテスト データの解析

著者 RDNA, Inc.、Tim McGuire 氏、Mercedes-Benz RDNA, Inc.、Taylor Roche 氏および Mercedes-Benz RDNA, Inc.、Andreas Weinberger 氏

Daimler AG (以前の名称は、DaimlerChrysler) のテスト車両には 100 を超える水素燃料電池車があり、通常のドライバーが世界中の実際の運転条件で運転しています。開発目的として、各車両にはテレマティクスシステムが搭載されており、車両性能および車両の GPS 座標、燃料タンクの燃料計、車両速度から運転手の足元のアクセル位置といったドライブパターンに関するデータを取得します。私たちのチームが担当するのは、テスト車両によって蓄積された数百万もの運転データを MATLAB ベースの自動化レポートおよび Web アプリケーションに変換する部分です。

Daimler のエンジニアはこれらのツールを使用して、車両の使用パターンの把握、燃料消費の追跡、水素燃料補給のインフラストラクチャの計画および走行パターンが車両性能に与える影響の把握を行います。このデータを調査することで、Daimler は車両の状態だけでなく、将来の水素ステーション配置に最適な場所を判断でき、車両の使用特性を特定して今後の車両運転に適した多様な車両プラットフォームを開発できます。

使用パターンの把握

さまざまな運転条件および天候において車両を運転することで、解析用の多様なデータセットが蓄積されます。データは各車両から、Daimler ワイヤレス インフラストラクチャ経由で中央データベースに転送されます。私たちのチームでは、車両の使用方法を調査して、当社および当社の顧客に車両の使用方法についてフィードバックを行う自動レポート システムを開発しました。

日本、シンガポール、米国、ヨーロッパ、中国およびオーストラリアの顧客らは、日常の移動手段として Daimler のゼロエミッション車両を使用しています。各車両の燃料電池内部では、水素と酸素の化学反応によって発電してモーターに電力を供給します。この化学反応の副産物は水蒸気のみであるため、燃料電池テクノロジーには全世界の温室効果ガス排出を削減する大きな可能性があります。

MATLAB および Database Toolbox™ を使用して、中央データベースに対してクエリを発行し、特定の地域内のすべての車両の走行距離と GPS データを取得します。MATLAB スクリプトは、GPS システムによって報告された動作していない部分や運転ファイルではないファイルなどの異常データを除外します。そしてスクリプトがすべてのデータを処理し、期間別および地理的領域別に走行距離を合計するプロットを生成します (図 1)。以前、Daimler では Excel を使用してこの解析を実行していました。このタスクでは、エンジニアが何百人時もかけてセット アップを行い、フルタイムの従業員が管理にあたり、完成させる度に多くの手作業のステップが必要でした。現在は、自動化された MATLAB スクリプトによってチームは Web ブラウザー経由で同じ結果にアクセスできます。

図 1. 地域の走行距離解析のサンプル。画像をクリックすると拡大表示されます。

図 1 は、車両の走行距離の累積プロットのサンプルを連続ベースおよび週ベースの両方で示します。この解析では、GPS データを使用して累積走行距離と車両が走行した地域をリンクさせることで、Daimler が地域の走行パターンに基づいて、未来の車両運転について場所と顧客を評価できるようにします。オペレーターの要求次第で、アクティビティを詳細に表示するために個々の車両に対して同様のプロットを生成できます。

地域の走行距離解析プロットから、12 月下旬から 1 月上旬にかけて走行距離が突然減少したことが明らかになります。車両の使用方法における季節的なトレンドを数値化することで、Daimler は休暇の季節およびその他の使用頻度の低い期間の車両メンテナンスおよび診断手順をスケジュールできました。

燃料消費の追跡

MATLAB および Mapping Toolbox™ で開発したツールを使用して、Daimler のエンジニアはテスト車両の動きを再構築しました。これにより、ユーザーは、利用可能な電気化学エネルギーの量を測定する燃料タンクの充電率 (SOC) を衛星の地形図に沿って追跡できます。Daimler は当初、静的な JPEG マップ イメージを作成するためにこのスクリプトを開発しましたが、このソリューションは柔軟ではなく、プロットに示される詳細情報は不十分でした。したがって、スクリプトは Google Earth で使用するための Keyhole Markup Language (KML) ファイルを生成するように変更され、柔軟性が向上しました。

図 2 に示すサンプルの燃料消費解析は、タンクの燃料計を車両のルートに沿って追跡します。この解析を実行するために、MATLAB スクリプトは Mapping Toolbox の機能を使用して車両の GPS と燃料タンクの SOC データを関連付けます。

図 2. 燃料消費解析。この例では、テスト車がタンクが満杯の状態 (赤) で燃料補給所を出発し、タンクがほぼ空の状態 (青) で戻ってくることがわかります。画像をクリックすると拡大表示されます。

エンジニアはこれらの結果を使用して、燃料の減少率が運転環境の影響をどの程度受けるかを特定できます。水素ステーションと標準的なガソリンスタンドのプロットを地図上にオーバーレイすることで、燃料供給インフラストラクチャを評価できます。

私たちが開発した MATLAB スクリプトにより、エンジニアは実際の場所と車両性能をリンクさせて、世界各地の車両に対するリモートでの診断解析を簡単に行うことができます。たとえば、車両に搭載されている燃料電池システムによってエラー コードが転送されると、MathWorks のツールを使用してエラーが発生した際の車両の場所を正確に示して可視化できます (図 3)。たとえば、車両がラッシュ アワー時にロサンゼルスのダウンタウンにあることがわかると、イベント時の運転条件についての知識を使用してトラブルシューティングをさらに効率的に行うことができます。

水素補給インフラストラクチャの計画

将来設置される水素ステーションを顧客にとって最も効率的に機能する場所に配置するために、燃料電池車両が最も頻繁に訪れる地域を特定します。Daimler は MATLAB、Mapping Toolbox および Google Earth を使用して、車両の GPS データおよび地形道路データに基づき空間ヒストグラムを作成します。

図 4. SOC 空間ヒストグラム。画像をクリックすると拡大表示されます。

図 5. 空間ヒストグラム解析。画像をクリックすると拡大表示されます。

空間ヒストグラムはグリッドを地理的領域上にオーバーレイして、対象の信号をビンに入れて、それを衛星の地形図上に表現します。図 4 は、燃料タンクの SOC に基づいたシンガポールの空間ヒストグラムを示します。図 5 のヒストグラムは、各グリッドの方眼内に車両が留まった時間の割合を計算します。このような図を組み合わせることで、燃料の少ない車両が多く行き交う地域を正確に示すことができます。

これらの解析結果を武器に、Daimler のエンジニアは新しい水素ステーションの場所を推奨することができ、燃料供給所を交通量の多い地域の近くに配置して、顧客が水素を入手しやすいようにすることで補給所の運営者が負うリスクを削減できます。

走行パターンの解析

Daimler の燃料電池車両は全世界で利用されています。各車両のアクセル ペダルの位置を解析すると、顧客がさまざまな種類の車両をどのように運転して、地理的領域全体でパターンがどのように異なるかを理解できます。たとえば、ペダル位置解析 (図 6) は、北カリフォルニアの車両がスロットルを適度に使用して走行している一方で、重量のある車両の場合は非常に軽いかフル スロットルで運転していてその中間がないことがほとんどであることを示します。この解析により、エンジニアは顧客のパワーに対するニーズに関してフィードバックが得られます。そしてエンジニアは制御方法とパワートレインをそれぞれ最適化できます。

図 6. ペダル位置解析。画像をクリックすると拡大表示されます。

GPS データと関連付けると、運転行動における地域的なトレンドが明らかなります。たとえば、ドイツでは、高速道路でペダルを 100 パーセント押した状態での高速運転が頻繁に見られます。シンガポールでは、運転はよりゆっくりと円滑であり、ペダルを 40 パーセント以上押すことはほとんどありません。これらのトレンドを把握することで、エンジニアは異なる地域向けの制御方法をカスタマイズしました。

小さなチームによる大きな問題の解決

Daimler のエンジニアやマネージャーからの私たちのサービスに対する需要が増加していることが、有益な結果が提供されていることを示す評価の 1 つです。私たちには依頼が押し寄せています。MATLAB 統合環境でのデータベースへのアクセス、複数の解析の実行、結果のプロット、洞察力に満ちたレポートの作成が可能であることは大きな利点です。これは、私たちのチームにリソースを簡単に追加できることを意味します。

チームのエンジニアは複数のアプリケーションではなく 1 つのソフトウェア パッケージ、MATLAB について知っていればよく、さまざまなツールの統合に時間を割く必要はありません。その代わりに、有益な結果を生み出します。

我々は現在の解析を改良して、新しい解析を開発し続けることで、燃料電池自動車の性能とインフラストラクチャについてのより深い解析や理解を行います。

年作成 2008 - 91597v00


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