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電気双極子モーメントと放射電力

この例では、楕円軌道で運動する 2 個の引き合う電荷 ("電気双極子") の平均放射電力を求めます。

共通重心

2 個の対立電荷 e1e2 は電気双極子を形成します。荷電粒子の質量はそれぞれ、m1m2 です。共通重心は m1*r1 + m2*r2 = 0 になります。ここで、r1 および r2 は荷電粒子までの距離ベクトルです。荷電粒子間の距離は r = r1 - r2 です。

syms m1 m2 e1 e2 r1 r2 r
[r1,r2] = solve(m1*r1 + m2*r2 == 0, r == r1 - r2, r1, r2)
r1 = 

m2rm1+m2

r2 = 

-m1rm1+m2

双極子モーメント

この系の双極子モーメントを求めます。

d = e1*r1 + e2*r2;
simplify(d)
ans = 

re1m2-e2m1m1+m2

単位時間あたりの放射電力

ラーモアの公式によって、単位時間内の全放射電力は J=23c3d¨2、または、荷電粒子間の距離で表すと、J=23c3m1m2m1+m2(e1m1-e2m2)2r¨2 となります。ここで、ドットは時間微分を意味します。クーロンの法則 mr¨=-αr2 から、系の減少質量 m=m1m2m1+m2 と粒子の電荷の積 α=|e1e2| によって、加速度 r¨ の値を求めることができます。

alpha = sym('alpha');
syms m c
m = m1*m2/(m1 + m2);
r2 = -alpha/(m*r^2);

J = simplify(subs(2/(3*c^3)*d^2, r, r2))
J = 

2α2e1m2-e2m123c3m12m22r4

楕円軌道のパラメーター

楕円軌道の長半径 a と離心率 ϵ は以下の式で与えられます。ここで、E は全軌道エネルギー、L=mr2ϕ˙ は角運動量です。

syms E L phi
a = alpha/(2*E)
a = 

α2E

eccentricity = sqrt(1-2*E*L^2/(m*alpha^2))
eccentricity = 

1-2EL2m1+m2α2m1m2

楕円軌道の方程式 1+ϵcosϕ=a(1-ϵ2)/r から、角度 phi によって距離 r を表すことができます。

r = a*(1 - eccentricity^2)/(1 + eccentricity*cos(phi));

平均放射電力

楕円軌道で運動する 2 個の荷電粒子の平均放射電力は、運動の周期で正規化された 1 サイクルの運動に対する放射電力の積分 Javg=1/T0TJdt です。運動の周期 T は以下のとおりです。

T = 2*pi*sqrt(m*a^3/alpha);

積分変数 tphi に変更すると、以下の結果が得られます。関数 simplify を使用すると、より短い積分結果が得られます。ここでは、subs を使用して J を評価します。

J = subs(J);
Javg = simplify(1/T*int(J*m*r^2/L, phi, 0, 2*pi))
Javg = 

-22α2e1m2-e2m122EL2m1+2EL2m2-3α2m1m23L5c3m1+m23α2m1m2E3m1+m2

一方の粒子が他方より非常に重い場合

一方の粒子が他方より非常に重い (m1>>m2) ときの電気双極子の平均放射電力を推定します。ここでは、m1 が無限大に近付くと仮定して、放射電力の式の極限値を計算します。

limJ = limit(Javg, m1, Inf);
simplify(limJ)
ans = 

-22α2e222EL2-3α2m23L5c3α2m2E3