このページの内容は最新ではありません。最新版の英語を参照するには、ここをクリックします。
打ち上げ中断システム
この例では、宇宙に向かう軌道周回宇宙船の打ち上げ中断システムをモデル化する方法を示します。打ち上げ中に不具合が発生すると、軌道周回宇宙船の打ち上げが中断されます。不具合の発生したタイミングに応じて、軌道周回宇宙船は、打ち上げ場に帰還する、飛行経路上の着陸場に帰還する、地球を 1 回周回してから着陸を試行する、安定した低軌道に進む、のいずれかを行います。Simulink 3D Animation™ のウィンドウに、これらのステップが可視化されて表示されます。この簡略化された例では、燃料、ブースターおよびタンクの各サブシステムのダイナミクスはモデル化されません。
軌道周回宇宙船の高度の監視
この例では、Stateflow® チャートが軌道周回宇宙船の飛行を監視し、軌道周回宇宙船に異常が発生したときに適切な打ち上げ中断をスケジュールします。
このチャートは、ModeLogic
と Abort
の 2 つのパラレル ステートで構成されています。ModeLogic
ステートには、軌道周回宇宙船の高度に基づいて起こり得る打ち上げ中断シナリオを説明する 4 つのサブステートが含まれます。
打ち上げ場への帰還 (
RTLS
) — 高度が 10,000 m 未満の場合、軌道周回宇宙船は燃料を放出し、固体のロケット ブースターと外部タンクを切り離してから、打ち上げ場に帰還します。飛行経路上の着陸 (
DRL
) — 高度が 10,000 ~ 100,000 m の場合、軌道周回宇宙船は固体のロケット ブースターと外部タンクを切り離してから、飛行経路上にある着陸場所に帰還します。1 周回後飛行中断 (
AOA
) — 高度が 100,000 ~ 400,000 m の場合、軌道周回宇宙船は外部タンクを切り離して地球を 1 周回してから再突入に進みます。軌道投入中断 (
ATO
) — 高度が 400,000 m を超える場合、軌道周回宇宙船は目的の軌道を断念して、安定した低軌道に進みます。
打ち上げ中断アクションのスケジュール
Abort
ステートは、異常が検出されたときの軌道周回宇宙船の動作を制御します。異常が発生すると、システムは Normal
サブステートから AbortLogic
サブチャートに遷移してから、AbortComplete
サブステートに遷移します。
AbortLogic
サブチャートに入る遷移は entry 端子に接続しています。同様に、サブチャートから出る遷移は exit 端子から始まります。各端子には、サブチャート内の入口または出口の位置をマークする、一致するジャンクションがあります。これらのジャンクションは、打ち上げ中断シナリオに応じて起こり得る次の 3 つのアクションをスケジュールするサブチャートの内部ロジックを分離します。
燃料を放出する。
固体のロケット ブースターを切り離す。
外部タンクを切り離す。
軌道周回宇宙船が ATO シナリオにある場合、これらのアクションはいずれも不要です。
entry 端子と exit 端子の詳細については、ステートの境界を越える入口および出口接続の作成を参照してください。
モデルのシミュレーション
モデルのシミュレーションを実行するには、次を行います。
Inputs
ブロックをダブルクリックします。信号エディターのダイアログ ボックスで、[アクティブなシナリオ] リストから打ち上げ中断シナリオを選択します。既定のシナリオはRTLS_Abort
です。[実行] をクリックします。Simulink 3D Animation のウィンドウに、打ち上げが可視化されて表示されます。
別の視点から軌道周回宇宙船を表示するには、Simulink 3D Animation のウィンドウにある [Viewpoint] ドロップダウン メニューを使用します。たとえば、[
Chase Plane
] を選択して軌道周回宇宙船の飛行全体を確認できます。
参考文献
Nelson, Douglas, John Bradford, and John Olds."Abortability Metrics:Quantifying Intact Abort Mode Availability for Reusable Launch Vehicles."In "Space 2006".San Jose, California:American Institute of Aeronautics and Astronautics, 2006. https://doi.org/10.2514/6.2006-7293.