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ドライブ パラメーターの調整

この例では、AC3 ドライブ モデルを使用した電気駆動装置のパラメーターの変更方法を説明します。この例では、モーターの定格出力が 200 hp から 5 hp に変わります。ドライブ パラメーターを再調整するには、以下を行ってください。

モーター パラメーターの変更

  1. ac3_example を開きます MATLAB® コマンド ウィンドウで「ac3_example」と入力します。

    200 hp モーター用に設定されたパラメーターが表示されます。

  2. アクセラレータ モードでモデルをシミュレートし、結果を観察します。

  3. Field-Oriented Control Induction Motor Drive ブロックをダブルクリックし、[Asynchronous Machine] タブを選択します。5 hp モーターの以下のパラメーターをドライブのマスクにコピーします。

    パラメーター
    Reference frameRotor
    Discrete solver modelForward Euler
    Electrical parameters > Nominal values > Power3730
    Electrical parameters > Nominal values > Voltage460
    Electrical parameters > Nominal values > Frequency60
    Electrical parameters > Equivalent circuit values > Main winding stator > Resistance1.115
    Electrical parameters > Equivalent circuit values > Main winding stator > Leakage inductance0.005974
    Electrical parameters > Equivalent circuit values > Main winding stator > Mutual inductance0.2037
    Electrical parameters > Equivalent circuit values > Main winding rotor > Resistance1.083
    Electrical parameters > Equivalent circuit values > Main winding rotor > Leakage inductance0.005974
    Electrical parameters > Initial Currents > Ia_Magnitude0
    Electrical parameters > Initial Currents > Ia_Phase0
    Electrical parameters > Initial Currents > Ib_Magnitude0
    Electrical parameters > Initial Currents > Ib_Phase0
    Electrical parameters > Initial Currents > Ic_Magnitude0
    Electrical parameters > Initial Currents > Ic_Phase0
    Mechanical parameters > Inertia0.02
    Mechanical parameters > Friction factor0.005752
    Mechanical parameters > Pole pairs2
    Initial values > Slip1
    Initial values > Angle0

磁束制御器のパラメーターの再調整

  1. 磁束制御器に関連付けられた信号を測定するには、以下のブロックを Demux サブシステムに追加します。

  2. Field-Oriented Control Induction Motor Drive ブロックのマスクにある [Controller] タブを選択します。[Regulation type][Torque regulation] に設定してコントローラーのパラメーターにアクセスします。

    速度調整器のパラメーターをバイパスして、ベクトル制御 (FOC) コントローラーに直接働きかけるには、トルク制御モードが必要です。

    FOC コントローラーにより制御される電流は、モーターの磁束に依存します。磁束コントローラーにより、必要な磁束がモーターに正しく適用されることが保証されます。

  3. 次のパラメーターをドライブのマスクにコピーします。

    パラメーター
    Machine flux > Initial0.705
    Machine flux > Nominal0.705
    Field oriented control > Flux controller > Proportional gain1
    Field oriented control > Flux controller > Integral gain0
    Field oriented control > Flux controller > Low-pass filter cutoff frequency 10e3
    Field oriented control > Flux controller > Flux output limits > Negative-0.705*1.5
    Field oriented control > Flux controller > Flux output limits > Positive0.705*1.5
    Field oriented control > Current controller Hysteresis bandwidth1
  4. モーターに定格トルクを適用するには、Speed reference サブシステムと Load torque サブシステム内にある Stair Generator ブロックのパラメーターを変更します。

  5. Scope ブロックの [ログ] タブで、[間引き]1 に、[変数名][simout1] に設定します。[ワークスペースにデータのログを作成] を選択し、[保存形式][時間付き構造体] に設定します。

  6. システムを 0.5 秒間シミュレートします。powergui ブロックの [FFT Analysis] ツールを開きます。

    [Input] リストで [Stator current] 信号を選択し、[Start time]0.23 に、[Number of cycles]1 に、[Fundamental frequency]7.5 に、[Max Frequency (Hz)]20000 にそれぞれ設定します。

    [Display] をクリックして FFT グラフを表示します。

  7. スイッチング周波数が約 5 kHz であることに注意してください。この周波数を減衰させるには、磁束コントローラーの [Low-pass filter cutoff frequency] パラメーターを 500 Hz に設定します。

  8. Scope ブロックを開き、磁束信号を観察します。定常偏差が高いことに注意してください。

  9. 満足な応答が得られるまで、磁束コントローラーの [Proportional gain] パラメーター値を徐々に大きくしてシミュレートします。特定の値よりもゲインを大きくすると、磁束コントローラーが飽和することがあります。次のプロットの曲線は、比例ゲイン 100 に基づいています。

  10. 偏差が少なく、満足な定常状態の結果が得られるまで、磁束コントローラーの [Integral gain] を徐々に大きくしてシミュレートします。次のプロットは、積分ゲイン 90 に基づいています。

速度調整器のパラメーターの再調整

  1. Field-Oriented Control Induction Motor Drive ブロックのマスクにある [Controller] タブを選択し、[Regulation type][Speed regulation] に設定してコントローラーのパラメーターを編集します。

    パラメーター
    Speed controller > Torque output limits > Negative-1200*1.5
    Speed controller > Torque output limits > Positive1200*1.5
    Speed controller > PI regulator > Proportional gain1
    Speed controller > PI regulator > Integral gain0
    Speed controller > Speed cutoff frequency 500
    Field oriented control > Maximum switching frequency500

    速度ランプの加速はトルク出力制限を超えないように算出しなければなりません。モーターを 1750rpm/s で加速するために必要なトルクは、次のように算出します。

    Taccel=JAccel((rpm)/s)30πTaccel=0.02175030π=3.67 Nm

  2. モーターに定格トルクを適用するには、Speed reference サブシステムと Load torque サブシステム内にある Stair Generator ブロックのパラメーターを変更します。

  3. スコープの間引きを 25 に設定してメモリ オーバーロードを防止します。シミュレーションを開始します。

    Scope ブロックの速度信号を観察します。定常偏差が高く、応答時間は許容範囲にありません。

  4. オーバーシュートのない満足な応答時間が得られるまで、速度コントローラーの [Proportional gain] パラメーターを徐々に大きくしてシミュレートします。ゲインが大きすぎる場合は、システムが振動することに注意してください。次のプロットは、比例ゲイン 3 に基づいています。

  5. 最小限の定常偏差で、満足な定常状態値が得られるまで、速度コントローラーの [Integral gain] を徐々に大きくしてシミュレートします。この曲線は、積分ゲイン 100 に基づいています。

DC 母線電圧のパラメーターの再調整

  1. Field-Oriented Control Induction Motor Drive ブロックのマスクにある [Converter and DC bus] タブを選択し、DC 母線のコンデンサとブレーキ チョッパーのパラメーターを調整します。

  2. [DC Bus Capacitance] パラメーターを 167e-6 に設定します。

    DC 母線の静電容量は、電圧リップルを低減するために、

    C=Pmotor12fΔVVDC

    ここで、

    • Pmotor はモーター ドライブの定格電力 (W)。

    • f は AC 電源の周波数 (Hz)。

    • ΔV は目的の電圧リップル (V)。

    • VDC は平均 DC 母線電圧 (V)。

    この方程式から、特定の電圧リップル レベルに必要なコンデンサの概算値が得られます。この場合の目的の電圧リップルは 50 V です。

    5 hp (3728 W) のモーター ドライブは、60 Hz の三相電源から電力供給を受けます。平均 DC 母線電圧は、次のように表されます。

    VDC = 1.35·VLL,

    ここで、VLL は電源の線間電圧の実効値を表します。電源の線間電圧は 460 Vrms であるため、DC 電圧は VDC = 621 V となります。

    したがって、必要なコンデンサは次のようになります。

    C=3728126050621=167 μF.

  3. [Braking chopper] の [Shutdown voltage] を 660 V に、[Braking chopper] の [Activation voltage] を 700 V に設定します。

    モーター モードでの DC 母線のピーク電圧は次のようになります。

    Vpeak=VLL2=4602=650 V.

    ブレーキ チョッパーのシャットダウン電圧 (Vshut) は、この値よりも少し高くするべきです。回生ブレーキ中の電圧の上昇を制限するために、シャットダウン電圧は 660 V に、起動電圧 (Vact) は 700 V に設定されています。

  4. ブレーキ チョッパーの [Resistance] を 131Ω に設定します。

    ブレーキ チョッパーの抵抗は、次の式を使って計算されます。

    R=Vact2Pmotor=70023728=131 Ω

シミュレーションと結果の解析

システムをシミュレートし、シミュレーション結果の 6 つのセクションを観察します。

  1. 無負荷状態の加速

  2. 定格負荷トルクの適用

  3. 定常状態の速度

  4. 定格生成トルクの適用: DC 母線電圧のオーバーシュートの観察

  5. 減速

  6. 負の加速