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Three-Phase Transformer (Two Windings)

構成可能な巻線接続をもつ三相変圧器を実装する

ライブラリ

Simscape / Electrical / Specialized Power Systems / Power Grid Elements

  • Three-Phase Transformer (Two Windings) block

説明

このブロックは、3 つの単相変圧器を使用して三相変圧器を実装します。単相変圧器の電気モデルの詳細な説明については、Linear Transformerブロックを参照してください。

有効にした場合、飽和特性は、Saturable Transformer ブロックについて説明した飽和特性と同じです。磁束が指定されていない場合は、初期値が自動的に調整され、シミュレーションが定常状態で開始されます。

各巻線の漏れインダクタンスおよび抵抗は、変圧器のノミナル電力 Pn と巻線 (V1 または V2) のノミナル電圧に基づいて pu 単位で与えられます。pu 単位の説明については、Linear TransformerおよびSaturable Transformerを参照してください。

変圧器の 2 つの巻線は次のように接続できます。

  • Y

  • アクセス可能な中性点をもつ Y

  • 接地された Y

  • デルタ (D1): デルタが Y より 30 度遅れている

  • デルタ (D11): デルタが Y より 30 度進んでいる

巻線 1 にアクセス可能な中性点をもつ Y 接続を選択した場合、N というラベルの入力端子がブロックに追加されます。巻線 2 でアクセス可能な中性点を要求すると、n というラベルの追加の出力端子が生成されます。

D1 および D11 の表記は、基準の Y 電圧フェーザがクロック表示の正午 (12 時) の位置にあるものと想定するクロック規則を指します。D1 および D11 は、それぞれ午後 1:00 (Y 電圧より 30 度遅れているデルタ電圧) および午前 11:00 (Y 電圧より 30 度進んでいるデルタ電圧) を指します。

巻線接続の標準表記

2 巻線三相変圧器の慣習的表記では、2 文字の英字の後に数字を続けます。最初の英字 (Y または D) は高電圧の Y またはデルタ巻線接続を示します。2 番目の英字 (y または d) は低電圧の Y またはデルタ巻線接続を示します。数字は 0 ~ 12 の整数であり、クロック表示で高電圧正相電圧フェーザが 12:00 の位置にある場合の低電圧正相電圧フェーザの位置を示しています。

次の 3 つの図は、標準巻線接続の例です。ドットは極性マークを示しており、矢印は高電圧および低電圧の巻線における A 相から中性点への電圧フェーザの位置を示しています。フェーザは反時計回りに回転するものと想定されるため、数字が大きいほど、位相遅れが大きいことを示します。

  • Yd1: 低電圧の巻線 (d) が高電圧の巻線 (Y) より 30 度遅れています。[Winding 2 connection] パラメーターは [D1] に設定されます。

  • Dy11: 低電圧の巻線 (y) が高電圧の巻線 (D) より 30 度進んでいます。[Winding 1 connection] パラメーターは [D1] に設定されます。

  • Dy1: 低電圧の巻線 (y) が高電圧の巻線 (D) より 30 度遅れています。[Winding 1 connection] パラメーターは [D11] に設定されます。

D1 および D11 ブロック パラメーター設定に用意されている +30 ~ -30 度の位相シフトを組み合わせて、0 ~ 360 度 (30 度間隔) の間の位相シフトをもつ他の多くの接続を表すことができます。場合によっては、デルタ巻線の出力端子をネットワークの適切な位相に接続することで得られる追加の +/–120 度の位相シフトを使用することもできます。

この表では Three-Phase Transformer ブロックを設定して一般的な接続を得る方法について説明します。

クロック位置位相シフト (度)接続巻線 1 の接続巻線 2 の接続ネットワーク ABC 位相に接続するデルタ巻線の端末
00Yy0YY
Dd0D1D1abc
1–30Yd1YD1abc
Dy1D11Yabc
2–60Dd2D11D1abc
5–150Yd5YD1bca
Dy5D11Ycab
7+150Yd7YD11cab
Dy7D1Ybca
10+60Dd10D1D11abc
11+30Yd11YD11abc
Dy11D1Yabc

たとえば、Yd5 接続を得るには、次のように、[Winding 1 connection] パラメーターを [Y] に、[Winding 2 connection] パラメーターを [D1] に設定し、ネットワーク位相を巻線 2 に接続します。

変圧器巻線の慣習的な表記の詳細については、国際標準の IEC 60076-1 [1] を参照してください。

パラメーター

[Configuration] タブ

Winding 1 connection (ABC terminals)

巻線 1 の巻線接続。[Y][Yn][Yg] (既定)、[Delta (D1)]、および [Delta (D3)] から選択します。

Winding 2 connection (abc terminals)

巻線 2 の巻線接続。[Y][Yn][Yg] (既定)、[Delta (D1)]、および [Delta (D3)] から選択します。

Type

3 つの単相変圧器のモデルを使用して三相変圧器を実装する場合は、[Three single-phase transformers] (既定) を設定します。このコア タイプを使用して、電力グリッドなどで利用される非常に大きな電力変圧器 (数百 MW) を表すことができます。

3 リム コア三相変圧器を実装する場合は、[Three-limb core (core-type)] を選択します。ほとんどの用途では、三相変圧器では 3 リム コア (コア タイプ変圧器) を使用します。このタイプのコアでは、線形と非線形のいずれのモデルでも非対称的な故障時に正確な結果が得られます (飽和を含む)。非同期電圧条件の間は、コアタイプの変圧器のゼロシーケンス磁束が、エア ギャップ、構造用鋼およびタンクを通ってコアの外に戻ります。したがって、そのようなコアタイプ変圧器の自然なゼロシーケンス インダクタンス L0 (デルタ巻線なし) は通常、3 台の単相ユニットを使用する三相変圧器 (L0 > 100 pu) と比べて非常に小さくなります (一般的に 0.5 pu < L0 < 2 pu)。この小さい L0 の値が、線形操作と飽和操作の実行中、電圧、電流および磁束の不平衡に影響を与えます。

5 リム コア三相変圧器を実装する場合は、[Five-limb core (shell-type)] を選択します。まれですが、5 レッグ コア (3 つの位相レッグおよび 2 つの外部レッグ) をもつ非常に大規模な変圧器が構築されることがあります。このコア構成はシェル タイプとも呼ばれ、主に、変圧器の高さを低減し、輸送を容易にするために選択されます。不平衡な電圧条件下では、3 リム変圧器とは対照的に、5 リム変圧器のゼロシーケンス磁束は鉄心の中にとどまり、2 つの外側リムを通じて戻ります。したがって、自然なゼロシーケンス インダクタンス (デルタ巻線なし) は非常に大きくなります (L0 > 100 pu)。コアの非対称性に起因する電流の小さな不平衡を除けば、5 リム シェルタイプ変圧器の挙動は、3 台の単相ユニットを使用して構築された三相変圧器の挙動と似ています。

Simulate saturation

選択されている場合は、可飽和三相変圧器を実装します。既定はオフです。

Powergui ブロックのフェーザ モードで変圧器をシミュレートする場合は、このパラメーターをクリアする必要があります。

Simulate hysteresis

一価飽和曲線の代わりにヒステリシスを含む飽和特性をモデル化することを選択します。このパラメーターは、[Simulate saturation] パラメーターが選択されている場合にのみ表示されます。既定はオフです。

Powergui ブロックのフェーザ モードで変圧器をシミュレートする場合は、このパラメーターをクリアする必要があります。

Hysteresis Mat file

このパラメーターは、[Simulate hysteresis] パラメーターが選択されている場合にのみ表示されます。

ヒステリシス モデルで使用するデータが含まれている .mat ファイルを指定します。Powergui ブロックの [Hysteresis Design Tool] を開くと、hysteresis.mat ファイルに保存されている既定のヒステリシス ループおよびパラメーターが表示されます。Hysteresis Design Tool の [Load] ボタンを使用して、別の .mat ファイルを読み込みます。Hysteresis Design Tool の [Save] ボタンを使用して、新しい .mat ファイルにモデルを保存します。

Specify initial fluxes

選択されている場合、初期磁束が [Parameters] タブの [Initial fluxes] パラメーターによって定義されます。[Specify initial fluxes] パラメーターは、[Simulate saturation] パラメーターが選択されている場合にのみ表示されます。既定はオフです。

[Specify initial fluxes] パラメーターがシミュレーション時に選択されていない場合、Simscape™ Electrical™ Specialized Power Systems ソフトウェアは初期磁束を自動的に計算して定常状態でシミュレーションを開始します。計算された値は [Initial Fluxes] パラメーターに保存され、以前の値は上書きされます。

Measurements

巻線端子にかかる電圧を測定するには、[Winding voltages] を選択します。

巻線を流れる電流を測定するには、[Winding currents] を選択します。

ボルト秒 (V.s) 単位の鎖交磁束、および Rm でモデル化される鉄損を含む合計励起電流を測定するには、[Fluxes and excitation currents (Im + IRm)] を選択します。

ボルト秒 (V.s) 単位の鎖交磁束、および Rm でモデル化される鉄損を含まないアンペア (A) 単位の磁化電流を測定するには、[Fluxes and magnetization currents (Im)] を選択します。

巻線の電圧、電流、磁化電流、および鎖交磁束を測定する場合は、[All measurements (V, I, Flux)] を選択します。

既定は [None] です。

選択した測定値をシミュレーション中に表示するには、モデルに Multimeter ブロックを配置します。Multimeter ブロックの [Available Measurements] リスト ボックスでは、後ろにブロック名が続くラベルで測定値が識別されます。

[Winding 1 connection (ABC terminals)] パラメーターが [Y][Yn]、または [Yg] に設定されている場合、ラベルは次のとおりです。

測定

ラベル

巻線 1 の電圧

Uan_w1:

または

Uag_w1:

巻線 1 の電流

Ian_w1:

または

Iag_w1:

磁束

Flux_A:

磁化電流

Imag_A:

励起電流

Iexc_A:

巻線 2 についても同じラベルが適用されます。ただし、ラベルに含まれている 12 に置き換えられます。

[Winding 1 connection (ABC terminals)] パラメーターが [Delta (D1)] または [Delta (D3)] に設定されている場合、ラベルは次のとおりです。

測定

ラベル

巻線 1 の電圧

Uab_w1:

巻線 1 の電流

Iab_w1:

鎖交磁束

Flux_A:

磁化電流

Imag_A:

励起電流

Iexc_A:

[Parameters] タブ

Units

このブロックのパラメーターの入力に使用する単位を指定します。pu 単位を使用するには [pu] を選択します。SI 単位を使用するには [SI] を選択します。[Units] パラメーターを [pu] から [SI] または [SI] から [pu] に変更すると、ブロックのマスクに表示されるパラメーターが自動的に変換されます。pu 単位の変換は、巻線の変圧器の定格電力 Pn (VA)、ノミナル周波数 fn (Hz)、およびノミナル電圧 Vn (Vrms) に基づきます。既定は [pu] です。

Nominal power and frequency

変圧器のボルト アンペア (VA) 単位のノミナル定格電力とヘルツ (Hz) 単位のノミナル周波数。[Units] パラメーターが [SI] に設定されている場合は、ノミナル パラメーターは変圧器モデルに影響しません。既定は [ 250e6 , 60 ] です。

Winding 1 parameters

巻線 1 の相間ノミナル電圧 (Vrms)、抵抗 (pu)、および漏れインダクタンス (pu)。既定値は [Units] パラメーターが [pu] の場合は [ 735e3 , 0.002 , 0.08 ][Units] パラメーターが [SI] の場合は [7.35e+05 4.3218 0.45856] です。

Winding 2 parameters

巻線 2 の相間ノミナル電圧 (Vrms)、抵抗 (pu)、および漏れインダクタンス (pu)。既定値は [Units] パラメーターが [pu] の場合は [ 315e3 , 0.002 , 0.08 ][Units] パラメーターが [SI] の場合は [3.15e+05 0.7938 0.084225] です。

Magnetization resistance Rm

磁化抵抗 Rm (pu)。既定値は [Units] パラメーターが [pu] の場合は 500[Units] パラメーターが [SI] の場合は 1.0805e+06 です。

Magnetization inductance Lm

飽和不能なコアの磁化インダクタンス Lm (pu)。[Configuration] タブの [Saturable core] パラメーターが選択されている場合は、[Magnetization inductance Lm] パラメーターにはアクセスできません。既定値は [Units] パラメーターが [pu] の場合は 500[Units] パラメーターが [SI] の場合は 2866 です。

Inductance L0 of zero-sequence flux path return

3 リム コア変圧器タイプにおける、ゼロシーケンスの磁束の帰還路のインダクタンス L0 (pu)。

このパラメーターは、[Type] パラメーターが [Three-limb core (core type)] に設定されている場合にのみ表示されます。既定値は [Units] パラメーターが [pu] の場合は 0.5[Units] パラメーターが [SI] の場合は 2.866 です。

Saturation characteristic

このパラメーターは、[Configuration] タブの [Simulate saturation] パラメーターが選択されている場合にのみ使用可能です。既定値は [Units] パラメーターが [pu] の場合は [ 0,0 ; 0.0024,1.2 ; 1.0,1.52 ][Units] パラメーターが [SI] の場合は [0 0;0.66653 1910.3;277.72 2419.7] です。

可飽和コアの飽和特性。ペア (0,0) から順に一連の電流/磁束ペア (pu) を指定します。

Initial fluxes

変圧器の各位相の初期磁束を指定します。このパラメーターは、[Configuration] タブの [Specify initial fluxes] パラメーターおよび [Simulate saturation] パラメーターが選択されている場合にのみ使用可能です。既定値は [Units] パラメーターが [pu] の場合は [ 0.8 , -0.8 , 0.7 ][Units] パラメーターが [SI] の場合は [1273.5 -1273.5 1114.3] です。

[Specify initial fluxes] パラメーターがシミュレーション時に選択されていない場合、Simscape Electrical Specialized Power Systems ソフトウェアは初期磁束を自動的に計算して定常状態でシミュレーションを開始します。計算された値は [Initial Fluxes] パラメーターに保存され、以前の値は上書きされます。

[Advanced] タブ

このブロックの [Advanced] タブは、powergui ブロックの [Simulation type] パラメーターが [Continuous] に設定されている場合、または powergui ブロックの [Automatically handle discrete solver] パラメーターを選択した場合には表示されません。このタブは、powergui ブロックの [Simulation type] パラメーターが [Discrete] に設定されている場合、および powergui ブロックの [Automatically handle discrete solver] パラメーターがオフになっている場合に表示されます。

Break Algebraic loop in discrete saturation model

選択されている場合、鎖交磁束 (台形法で計算される入力電圧の積分) の関数として磁化電流を計算する飽和モデルの出力に遅延が挿入されます。この遅延により、台形離散化法によって生じる代数ループが削除され、モデルのシミュレーションが高速化します。ただし、この遅延により、モデル内に 1 シミュレーション ステップの時間遅延が追加されるため、サンプル時間が大きすぎる場合に数値振動が発生する可能性があります。ほとんどの場合、正確な解を得るには代数ループが必要になります。

オフ (既定) にした場合、[Discrete solver model] パラメーターで飽和モデルの離散化手法を指定します。

Discrete solver model

代数ループを解決するには、次のいずれかの手法を選択します。

  • Trapezoidal iterative — この手法では正しい結果が得られますが、特に可飽和変圧器の数が増えると、Simulink® が低速化して収束できない (シミュレーションが停止する) ことがあるため、推奨されません。また、Simulink の代数ループの制約のため、この手法はリアルタイムで使用できません。R2018b 以前のリリースでは、[Break Algebraic loop in discrete saturation model] パラメーターがオフのときにこの手法を使用していました。

  • Trapezoidal robust — この手法は、[Backward Euler robust] の手法より少しだけ精度が高くなります。ただし、変圧器の負荷がないときに、変圧器の電圧にわずかな減衰数値振動が生じる可能性があります。

  • Backward Euler robust — この手法では、優れた精度が得られ、変圧器の負荷がないときに振動が生じません。

ロバストな手法の最大反復回数は、powergui ブロックの [Preferences] タブの [Solver details for nonlinear elements] セクションで指定します。リアルタイム アプリケーションでは、反復回数を制限する必要が生じる場合があります。通常、反復回数を 2 に制限すると、許容可能な結果が得られます。変圧器の飽和モデルを離散化するには、2 つのロバストなソルバーが推奨される手法です。

ご利用の用途で使用する手法の詳細については、電気回路の離散化によるシミュレーションを参照してください。

power_transfo3ph 回路では、可飽和コアがシミュレートされる Three-Phase Transformer ブロックを使用します。巻線はいずれも、接地された Y の構成で接続されています。2 つの巻線の中性点は内部的に接地接続されています。

500 kV/ 230-kV の可飽和変圧器が 500-kV システムで励磁されます。位相 A、B、および C に対してそれぞれ 0.8 pu、−0.4 pu、および 0.4 pu の残留磁束が指定されています。シミュレーションを実行し、コア飽和による突入電流を確認してください。三相 Yd および Dy 変圧器の接続の 4 つのタイプを示す power_xfonotation モデルも参照してください。

参考文献

[1] IEC. International Standard IEC 60076-1, Power Transformer - Part 1: General, Edition 2.1, 2000–04. "Annex D: Three-phase transformer connections." 2000.

バージョン履歴

R2006a より前に導入