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1 相につき 22 個の電力モジュールをもつ MMC-STATCOM

この例では、1 相につき 22 個の電力モジュールを使用した 12 MVA、34.5 kV の自励式無効補償装置を説明します。

Pierre Giroux (Hydro-Quebec)

説明

電力網では、多くの場合、無効電力と電圧の制御に分流補償が使用されます。この例では、最新の送電系統で使用されることの多くなってきた分流補償装置であるモジュラーマルチレベル (MMC) STATCOM をモデル化します。MMC STATCOM は Full-Bridge MMC ブロックを使用して作成され、1 相につき 22 個のモジュールからなるパワー エレクトロニクス コンバーターを表します。忠実度を維持しながらシミュレーションを高速化するために、スイッチング関数モデルが選択されています。

動作原理

STATCOM では無効電力の吸収や生成が可能です。無効電力の伝達は相のリアクタンスを通じて行われます。コンバーターは送電系統電圧と同相で電圧を生成します。コンバーター電圧の振幅が送電系統電圧より低い場合、STATCOM は無効電力を吸収するインダクタンスのように機能します。コンバーター電圧の振幅が母線電圧より高い場合、STATCOM は無効電力を生成するコンデンサのように機能します。

シミュレーション 1: 動的応答

シミュレーションを実行し、Scope 1 で波形を観察します。シミュレーションが定常状態で開始され、STATCOM が設定点 Qref (-5 Mvar) に従って誘導性モードで動作しているのが確認できます。0.1 秒の時点で、設定点が -5 Mvar から +10 Mvar に変わります。STATCOM の制御システムは、10 Mvar の無効電力を生成するために、すぐに反応してインバーターの出力電圧を変更します (容量性モード)。

シミュレーション 2: 低水準制御 - コンデンサ電圧の平衡化

低水準制御 (DC 電圧の平衡化) の動作を解析するために、次の変更を行ってシミュレーションを実行します。1. シミュレーション時間を 2 秒に設定します。2. Qref (赤色の Step ブロック) の初期値を 10e6 に設定します。この変更によって、シミュレーション中に設定点が変わることがなくなります。3. 赤色の Breaker ブロックのスイッチング時間を 1 秒に設定します。これにより、1 秒の時点で小さな抵抗負荷が C 相のみに接続され、電力の不平衡が発生するようになります。4. シミュレーションを実行し、緑色の Additional Scopes サブシステム内にある Vc および Vc_mean スコープ上のコンデンサ電圧の一部を観察します。低水準制御システムが適切に機能し、コンデンサ電圧の平衡が維持されているのが確認できます。5. 青色の Low-Level Control ブロックをダブルクリックし、DC 電圧平衡化システムの相平衡制御器をオフにします。シミュレーションを実行すると、負荷が C 相に接続されたときに、相間の STATCOM DC 電圧の平衡が失われることがわかります。メモ: 個々のコンデンサの電圧平衡化制御により、各コンデンサから有効電力を生成/吸収するために電流がアームに流れ、位相/180 度位相シフトで小さい電圧が生成されます。そのため、コンデンサに流れ込む電流 (容量性または誘導性) が小さすぎて充電/放電に十分な有効電力を生成できない場合、この制御システムは適切に動作しません。この理由から、Qref_Limits サブシステムでは、-0.75 ~ +0.75 Mvar の Qref 値は許可されません。この制御の詳細については、参考文献 [2] を参照してください。並べ替えアルゴリズムなど、電圧平衡化の他の方法にこの制限はありません。この方法は、power_Grid_STATCOM の例で使用されています。

参考文献

[1] M. Pereira, Member, IEEE, D. Retzmann, Member, IEEE, J. Lottes, M. Wiesinger, G. Wong, SVC PLUS: An MMC STATCOM for Network and Grid Access Applications 2011 IEEE Trondheim PowerTech

[2] Hirofumi Akagi ; Shigenori Inoue ; Tsurugi Yoshii, Control and Performance of a Transformerless Cascade PWM STATCOM with Star Configuration IEEE Transactions on Industry Applications (Volume: 43, Issue: 4 , July-august 2007)