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Bundle-Controlled Line Impedance Modulator (LIM) を使用した電力潮流の制御と線路の除氷

この例では、Line Impedance Modulator (LIM) テクノロジーを使用して電力潮流制御と伝送線路の除氷を実装する方法を説明します。

テクノロジーの説明

Bundle-Controlled Line Impedance Modulator (LIM) は、高電圧伝送線路のインピーダンスを増大させる機能をもつ分散 FACTS 装置です。LIM ではさらに、バンドルの各素導体に直列で接続されたスイッチを使用することで、それぞれの相電流を一度に 1 つの素導体に集中させることもできます。そうすることで、ジュール効果により素導体を 1 つずつ除氷することができます。この例では、LIM を使用して電力潮流制御と線路の除氷を実装する方法を説明します。詳細情報は参考文献に記載されています。

デモ

この例では、2 つの発電機と 10,000 MVA 相当の電力システムが、3 本の 735 kV 伝送線路に相互接続されています。線路 L1 と L2 はそれぞれ長さ 30 km と 90 km の、通常の伝送線路です。L3 は長さ 60 km の線路で、中間点に 2 台の切り換えモジュールが設置されています。2 つのライン セグメントをもつ線路 L3 は、連続した LIM を形成します。発電機 1 と発電機 2 の出力電力はそれぞれ 2400 MW と 2500 MW に設定されています。それぞれの負荷を与えられると (単純化のために 13.8 kV の場所に接続)、母線 B1 と B2 にそれぞれ 2000 MW を供給します。線路 L2 は L3 よりかなり長いため、LIM のスイッチがすべて閉じているときの通常の電力潮流は 1573 MW しかありません。L1 と L3 上の電力潮流はそれぞれ 415 MW と 2404 MW です。LIM に伝送されるインピーダンス制御コマンドは、LIM Impedance Control ブロック内の信号発生器によって生成されます。Z cmd 信号は、0.5 秒から 3 秒の間に、最小値 1.0 pu (4 つの素導体をすべて使用しているとき) から、最大値 1.642 pu (バンドルあたり 1 つの素導体のみを使用しているとき) まで上昇します。t = 4 秒に達した後は、ステップごとに変動します。LIM サブシステム内で示すとおり、ルックアップ テーブルによって、24 のスイッチ状態による 58 の組み合わせが、要求されたインピーダンス コマンドに関連付けられます。[6] で説明されているとおり、これらの組み合わせは、すべてのスイッチを閉じたときに、負またはゼロ シーケンスの電流を、観察されたレベル以下に維持するために選択されています。この例で使用する 58 種類のスイッチ状態の組み合わせは、1 対の BCL セグメントによって提供される 33,752 種類のスイッチ状態の組み合わせの、非常に小さなサブセットを示しています。それぞれのライン セグメントは、14 の導体からなる Exact-Pi セクションによって表されます。線路の抵抗、インダクタンス、静電容量は、LineImpedanceModulatorInit.m ファイルに記述されています。14 行 14 列のインピーダンスとアドミタンスの行列が、ワークスペースに自動的に読み込まれます ([ファイル]、[モデル プロパティ]、[コールバック]、[PreloadFcn] を参照)。

この例を実行し、Scope 1 で以下の一連のイベントを観察します。

  • t = 0 秒のとき、LIM のすべてのスイッチは閉じています。この例では、各線路の電力潮流を、各伝送線路の隣に青色の注釈で示します。

  • t = 0.5 秒のとき、インピーダンス信号 Zcmd が、黄色の軌跡で示されるように 1 pu から 1.642 pu まで急激に上昇します。Zcmd のそれぞれの値について、ルックアップ テーブルによって、対応するスイッチの組み合わせが提供されます。スイッチング モジュールに伝送されるスイッチの組み合わせは、ここでは 0.1 秒ごとにサンプリングされています。これによって、離散化されたインピーダンス信号 Zdisc (マゼンタ) が与えられます。

  • t = 3 秒で、LIM インピーダンスの値が最大になります。L2 (マゼンタ) と L3 (青) の電力潮流はほぼ等しいことに注意してください。この例では、この時点での電力潮流を、赤色の注釈で示します。

  • t = 4 秒で、LIM インピーダンスが 1 pu に設定され、これによりすべてのスイッチが閉じられます。この結果、1 サイクルの間で、線路内の電力潮流が著しく変化します。この摂動力により、同期発電機の調速機が反応し、電力潮流を t = 0 秒の時点の初期値に戻して安定化させます。

  • t = 5 秒で、LIM インピーダンス信号は 1.642 pu に戻り、再び電力潮流の摂動が誘発されます。

  • 6.3 秒で、LIM インピーダンスは 3 つの大きなステップにより 1 pu に減少します。

電力潮流の制御

例に示すように、LIM のスイッチを操作すると、線路 L3 のインピーダンスは、スイッチング モジュールあたり 1 個のスイッチのみが閉じられている状態に至るまで、徐々に上昇します。バンドルあたり 1 つの導体しか稼働していない状態では、線路 L2 と L3 の電力潮流は、L2 が L3 より 50% 長いにもかかわらず、ほぼ等しくなります。線路 L1 の電力潮流は、ほとんどゼロになります。これにより、LIM にはオーバーロードの伝送線路の電力潮流を減少させる機能があることが示されます。t = 4 秒以降のステップの変化は、LIM では、必要に応じて線路のインピーダンスをすばやく変化させることも可能であることを示します。スコープ 2 は、母線 B2 のシーケンス電圧と、B2 を流れ出て線路 L3 に向かうシーケンス電流を示します。これは、連続した LIM の線電流です。使用したすべてのスイッチ組み合わせについて、負またはゼロのシーケンス電圧とシーケンス電流は、すべてのスイッチを閉じた状態で得た初期値より低い値に維持されていることがわかります。したがって、LIM を操作して、負またはゼロのシーケンス レベルを上昇させずに、電力上昇または電力ステップを生成することができます。スコープ 3 は、母線 B2 の側に設置されている A 相のスイッチング モジュールのスイッチ全体にかかる電圧を示します。過渡電圧が 35 kV 以内に収まっていることがわかります。これにより、中電圧のスイッチング装置を使用できます。定常状態における最大実効電圧は t = 3.9 秒のときに現れ、値は 13.4 kV です。

線路の除氷

スコープ 3 は、母線 B2 の側に設置されている A 相のスイッチング モジュールのスイッチ間にかかるスイッチ電流も示します。すべてのスイッチを閉じた状態では、スイッチ電流の実効値は初期値の 465 A です。t = 3.9 秒では、1 個を除きすべてのスイッチが開いています。この状態では、素導体のスイッチ電流の実効値が 1533 A に達することがわかります。したがって、線路 L3 の電力潮流が 17% 減少しているにもかかわらず、素導体の電流は 3.3 倍増加します。このような電流は、両方の 30 km BCL セグメントにおいて、3 つの素導体 (相あたり 1 つ) をジュール効果によって同時に除氷するのに十分な大きさです。両方の BCL セグメントの各バンドルで、最初の素導体が除氷されると、その他 3 つのスイッチの組み合わせを使用して、伝送線路を完全に除氷できます。この例で示したスイッチの組み合わせのテーブルは、電力潮流の制御に適していることに注意してください。特定の素導体を強制的に除氷したり、バンドルの回転を防止するには、他のスイッチ組み合わせのテーブルを使用します。ただし、初期の線電流の値が小さすぎて除氷レベルに達しなかった場合は、1 つの 30 km セグメントのスイッチのみが開くこともあります。1 つの BCL セグメントではインピーダンスの上昇が小さくなるため、除氷する素導体の電流が大きくなります。さらに、各線路にスイッチング モジュールを装備するスマート電力網のコンセプト [4-5] では、線路 L2 のインピーダンスを大きくして、さらに多くの電流を線路 L3 に流し込むことも考えられます。

参考文献

  1. [1] P. Couture, J. Brochu, G. Sybille, P. Giroux and A. O. Barry, "Power flow and stability control using an integrated HV bundle-controlled line-impedance modulator", IEEE Trans. Power Del., vol. 25, no. 4, pp. 2940-2949, Oct. 2010.

  2. [2] P. Couture, "Smart Power Line and Photonic de-icer concepts for transmission-line capacity and reliability improvement" Cold Reg. Sci. Technol. 65 (2011), Jan., 13-22.

  3. [3] P. Couture, "Switching modules for the extraction/injection of power (without ground or phase reference) from a bundled HV line," IEEE Trans. Power Delivery, vol. 19, No3, pp. 1259-1266, July 2004.

  4. [4] P. Couture, "Switching apparatus, control system and method for varying an impedance of a phase line", Patent pending, PCT/CA2011/00850, July 22, 2011.

  5. [5] P. Couture, J. Brochu, B. Francoeur, R. Morin, D. H. Nguyen, K. Slimani, A. Turgeon and P. Van Dyke, "Smart Power Line (SPL) experimental research project," CIGRE 2014.

  6. [6] J. Brochu and P. Couture, "Load Flow Modeling of the Integrated Bundle-controlled Line Impedance Modulator," IEEE Trans. Power Delivery (受理されており、現在 IEEExplore で入手可能)。