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AC3 - センサーなしベクトル制御の誘導モーター ドライブ

この例では、速度制御時におけるセンサーなしベクトル制御の誘導モーター ドライブを示します。

Souleman Njoya M., Louis-A. Dessaint (Ecole de technologie superieure, Montreal))

説明

この回路では、Specialized Power Systems ライブラリの AC3 ブロックの修正バージョンを使用します。これは、200 HP AC モーター用のブレーキ チョッパーを伴うセンサーなしベクトル制御 (FOC) の誘導モーター ドライブをモデル化したものです。モーター回転数は、MRAS (モデル規範形適応システム) の技法に基づいて端子電圧と端子電流から推定されます [1]。その結果、速度センサー (AC3 では必要) が不要となります。

誘導モーターには、Universal Bridge ブロックを使用して作成された PWM 電圧源インバーターから電力が供給されます。速度制御ループでは PI コントローラーを使用して、FOC コントローラーの磁束とトルクの基準を生成します。FOC コントローラーは、指標となる磁束とトルクに対応するモーターの三相の指令電流を計算し、三相電流制御器を使用してこれらの電流をモーターに供給します。

モーター電流、速度 (基準値、実際の値、推定値) およびトルクの信号は、ブロックの出力で利用できます。

シミュレーション

シミュレーションを開始します。モーターの固定子電流、回転子角速度、電磁トルクおよび DC 母線電圧を Scope で観察できます。速度指令値およびトルク指令値も表示されます。

t = 0 秒の時点で、速度指令値は 500 rpm です。速度が加速ランプに正確に追従していることを観察します。

t = 0.5 秒では、モーター回転数が最終値に近づき、全負荷トルクはモーター シャフトに適用されます。これによって電磁トルクはユーザー定義の最大値 (1200 N.m) まで増加し、速度の上昇が完了してモーターが 500 rpm に達すると、820 N.m で安定します。

t = 1 秒では、速度指令値は 0 rpm に変化します。速度は減速ランプに正確に追従して 0 rpm に減じますが、機械的負荷は t = 1.5 秒において 792 N.m から -792 N.m へと急激に反転します。すぐ後に、モーター回転数は 0 rpm で安定します。

最後に、シミュレーションを通して DC 母線電圧が効果的に制御される様子に注目してください。

メモ:

1) 電力システムは 2 us のタイム ステップで離散化されています。速度コントローラーは 100 us のサンプリング時間を、ベクトル コントローラーは 20 us のサンプリング時間を使用して、マイクロコントローラー制御デバイスのシミュレーションを実行しています。

2) 平均値インバーターを使用した簡略化バージョンのモデルは、グラフィカル ユーザー インターフェイスで [Model detail level] メニューの [平均値] を選択すると使用できます。ここで、タイム ステップは最大 40 us まで増やせます。これを行うには、ワークスペースで「Ts = 40e-6」と入力し、速度コントローラーのサンプリング時間を 120e-6 に、ベクトル コントローラーのサンプリング時間を 40e-6 に変更します。ac3_sensorless_simplified モデルも参照してください。

参考文献

1. Bose, Bimal K., "Modern Power Electronics And AC Drives", Prentice-Hall, Inc., Upper Saddle River, NJ 07458, 2002.