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重力のモデル化

重力モデル

重力は、自然のシステムや人工的なシステムの多くで、運動に影響を与えます。その規模は、太陽系を周回する惑星のようにきわめて大きなものから、自動車の重力によって駆動される振動を減衰するショック アブソーバのような比較的小さなものまでさまざまです。Simscape™ Multibody™ では、3 つの重力モデルを使用して、このようなシステムに重力を追加できます。

  • 一様な重力。地球上に限定されたシステムのほとんどで発生します。一様な重力が原因で各ボディにかかる力は、ボディの質量にのみ依存します。この力は、特定のボディについて空間上のどこでも一定ですが、時間によっては変化することがあります。一様な重力は、Mechanism Configuration ブロックを使用してモデル化します。

  • 重力場。太陽系の惑星で発生します。重力場によって各ボディにかかる力は、ボディの質量だけでなく、場の原点からの距離の逆二乗にも依存します。重力場は、Gravitational Field ブロックを使用してモデル化します。

  • 逆二乗の法則に従う力のペア。性質は重力場に似ていますが、1 つのペアのボディ間でのみ働きます。逆二乗の法則に従う力のペアは、Inverse Square Law Force ブロックを使用してモデル化します。ボディの質量と力の定数を明示的に指定しなければなりません。

重力の大きさ

重力は、逆二乗の法則に従う力です。つまり、場の原点からターゲット ボディへの距離の二乗に比例して減衰する力です。この力の大きさ Fg はニュートンの万有引力の法則に従います。それによれば、質量 M と m で距離 R だけ離れた 2 つのボディについて、次が成り立ちます。

Fg=GMmR2

ここで、G は重力定数です。これが、Gravitational Field ブロックまたは Inverse Square Law Force ブロックを介して重力を表す際にモデル化する力です。ソースとターゲットの質量間の距離が一定であれば、重力はより単純な形式にまとめられます。

Fg=mg

ここで、g はノミナル重力加速度です。地球の表面近くの、重力場の原点から地球の半径だけ離れた距離では、ノミナル加速度が次の値に等しくなります。

g=GMR29.80665m/s2

これが、Mechanism Configuration ブロックを介して重力を表す際にモデル化される重力です。次の図に、あるボディについて、一様な重力、重力場、逆二乗の法則に従う力のペアの影響下で、重力の大きさ (Fg) が距離 (R) に応じてどのように変化するかを示します。

力の位置と距離

物理システムにおいて、重力場が原因でかかる力は、ボディの重心 (シミュレーション中に自動的に計算される) に対して、重力場の原点と重心を結ぶ架空のラインに沿って働きます。これらは、Gravitational Field ブロックが与える、重力の作用点と方向でもあります。Simscape Multibody でボディ サブシステムを定義する方法の詳細については、ボディのモデル化を参照してください。

場の原点からはるか遠くでは、場の原点と重心を結ぶラインは、小規模から中規模な変位ではおおよそ一定に維持され、重力の方向は固定されているかのように動作します。これが、Mechanism Configuration ブロックで使用している近似です。重力は依然として各ボディの重心に働きますが、その方向は指定した重力ベクトルと同じ方向に固定されます。

ボディの重心以外の点における重力の影響をモデル化する場合は、目的の位置に座標系を追加して、その座標系に直接重力を適用できます。この力は Inverse Square Law Force ブロックを使用してモデル化します。この力の向きは、Inverse Square Law Force ブロックが接続する 2 つのボディの座標系を結ぶ架空のラインに沿って設定されます。

次の表は、各種のブロックによって与えられる重力の作用点と方向をまとめています。

ブロック位置方向
Mechanism Configuration重心指定した重力ベクトル
Gravitational Field重心場の原点と重心を結ぶライン
Inverse Square Law Force接続座標系base 座標系と follower 座標系を結ぶライン

重力トルク

重力トルクは、一様でない重力場に存在する大きなボディで発生することがあります。例としては、先端が常に地球の方を向いているレモン型の月があげられます。地球から異なる距離にあると、近い方の端と遠い方の端で異なる重力がかかるため、両端を結ぶラインが地球の中心と揃わなくなると、正味の重力トルクが発生します。

Simscape Multibody では、ボディに作用するさまざまな重力をモデル化することで、このようなトルクをモデル化できます。これを行うには、Inverse Square Law Force ブロックまたは Gravitational Field ブロックを使用します。Inverse Square Law Force ブロックを使用する場合、重力トルクへの応答をモデル化する各ボディに追加の座標系を作成しなければなりません。その後、各座標系に重力を明示的に適用しなければなりません。次の図に例を示します。

細長い形状の両端にかかる一様でない重力によって月に生じるトルク

Gravitational Field ブロックを使用する場合、各ボディは別々のセクションに分け、Weld Joint ブロックを介して接続しなければなりません。Gravitational Field ブロックは、各セクションの重心で力を自動的に適用します。それにより、ボディ (この場合は剛体マルチボディ システムとして扱われる) にかかるさまざまな重力の複合作用を近似します。次の図に例を示します。

細長い形状の両端にかかる一様でない重力によって月に生じるトルク

参考

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