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gaspl

大気ガスによる RF 信号の減衰

説明

L = gaspl(range,freq,T,P,den) は、大気中を伝播する信号の減衰 L を返します。

  • range は信号のパス長を表します。

  • freq 信号の搬送波周波数を表します。

  • T は周囲温度を表します。

  • P は大気圧を表します。

  • den は大気中の水蒸気密度を表します。

関数 gaspl は、International Telecommunication Union (ITU) の大気ガス減衰モデル [1]を適用し、主に酸素および水蒸気による信号のパス損失を計算します。このモデルは、減衰を、周囲温度、圧力、水蒸気密度、および信号周波数による関数として計算します。

この関数において信号パスは、温度 T、大気圧 P、および水蒸気密度 den が信号パスに沿って変化しない、均一な環境に完全に含まれていなければなりません。Radar Toolbox で関数 tropopl と関数 atmositu を使用して、標高による大気のパラメーターの変化を考慮できます。

減衰モデルは、1–1000 GHz の周波数に対してのみ適用されます。

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大気圧 101.300 kPa で温度が 15C の場合の 1-1000 GHz の減衰スペクトルを計算します。水蒸気密度 7.5 g/m3 のスペクトルをプロットし、乾燥した大気 (水蒸気密度ゼロ) のスペクトルをプロットします。

減衰周波数を設定します。

freq = [1:1000]*1e9;

1 km のパスの距離を想定します。

R = 1000.0;

水蒸気を含む大気について減衰を計算します。

T = 15;
P = 101300.0;
W = 7.5;
L = gaspl(R,freq,T,P,W);

乾燥した大気について減衰を計算します。

L0 = gaspl(R,freq,T,P,0.0);

減衰をプロットします。

semilogy(freq/1e9,L)
hold on
semilogy(freq/1e9,L0)
grid
xlabel('Frequency (GHz)')
ylabel('Specific Attenuation (dB)')
hold off

Figure contains an axes object. The axes object with xlabel Frequency (GHz), ylabel Specific Attenuation (dB) contains 2 objects of type line.

最初に、1 GHz-1000 GHz の周波数に対して大気ガスの特定の減衰モデルをプロットします。海水面の乾燥した空気の大気圧を 101.325e5 kPa、水蒸気密度を 7.5 g/m3 と想定します。大気温度は、20C です。特定の減衰は、キロメートルあたりの dB 単位の損失として定義されます。次に、範囲内における 10 GHz での実際の減衰をプロットします。

特定の大気ガスによる減衰のプロット

大気温度、圧力、水蒸気密度を設定します。

T = 20.0;
Patm = 101.325e3;
rho_wv = 7.5;

伝播距離、光の速度、および周波数を設定します。

km = 1000.0;
c = physconst('LightSpeed');
freqs = [1:1000]*1e9;

大気ガス損失を計算およびプロットします。

loss = gaspl(km,freqs,T,Patm,rho_wv);
semilogy(freqs/1e9,loss)
grid on
xlabel('Frequency (GHz)')
ylabel('Specific Attenuation (dB/km)')

Figure contains an axes object. The axes object with xlabel Frequency (GHz), ylabel Specific Attenuation (dB/km) contains an object of type line.

実際の大気ガスおよび自由空間による減衰のプロット

10 GHz での自由空間による損失と大気ガスによる損失を 1-100 km の範囲について計算します。周波数は、X バンドのレーダーに対応します。次に、自由空間による損失と合計 (大気および自由空間による) 損失をプロットします。

ranges = [1:100]*1000;
freq_xband = 10e9;
loss_gas = gaspl(ranges,freq_xband,T,Patm,rho_wv);
lambda = c/freq_xband;
loss_fsp = fspl(ranges,lambda);
semilogx(ranges/1000,loss_gas + loss_fsp.',ranges/1000,loss_fsp)
legend('Atmospheric + Free Space Loss','Free Space Loss','Location','SouthEast')
xlabel('Range (km)')
ylabel('Loss (dB)')

Figure contains an axes object. The axes object with xlabel Range (km), ylabel Loss (dB) contains 2 objects of type line. These objects represent Atmospheric + Free Space Loss, Free Space Loss.

入力引数

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減衰を計算するために使用される信号のパス長。非負の実数値スカラーまたはベクトルとして指定します。複数のパス長を同時に指定できます。単位はメートルです。

例: [13000.0,14000.0]

信号の周波数。正の実数値スカラー、あるいは N 行 1 列の非負の実数値ベクトルまたは 1 行 N 列の非負の実数値ベクトルとして指定します。複数の周波数を同時に指定できます。周波数は 1-1000 GHz の範囲でなければなりません。単位はヘルツです。

例: [1.4e9,2.0e9]

周囲温度。実数値スカラーとして指定します。単位は度数 (摂氏) です。

例: -10.0

乾燥した空気の大気圧。正の実数値スカラーとして指定します。単位は Pa です。海水面の標準気圧は、101325 Pa です。

例: 101300.0

水蒸気密度 (絶対湿度)。非負の実数値スカラーとして指定します。単位は g/m3 です。30° C での大気の最大水蒸気密度は、約 30.0 g/m3 です。0° C での大気の最大水蒸気密度は、約 5.0 g/m3 です。

例: 4.0

出力引数

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信号の減衰。実数値の M 行 N 列の行列として返されます。各行列の行は、異なるパスを表します。ここで、M はパスの数です。各列は、異なる周波数を表します。ここで、N は周波数の数です。単位は dB です。

詳細

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大気ガスによる減衰モデル

このモデルは、大気ガスを通って伝播する信号の減衰を計算します。

電磁信号は、大気を通って伝播するときに減衰します。この効果は主に、酸素と水蒸気の吸収共鳴線によるもので、窒素ガスによる影響もわずかにあります。また、このモデルは 10 GHz 未満の連続的吸収スペクトルを含みます。ITU モデル Recommendation ITU-R P.676-10: Attenuation by atmospheric gases を使用します。このモデルは、信号の特定の減衰 (キロメートルごとの減衰) を、温度、圧力、水蒸気密度、および信号周波数による関数として計算します。この大気ガス モデルは 1-1000 GHz の周波数に対して有効であり、偏波の領域にも偏波でない領域にも適用されます。

各周波数の特定の減衰に対する式は、次のとおりです。

γ=γo(f)+γw(f)=0.1820fN(f).

ここで、量 N"() は複素数の大気屈折率の虚数部で、次のようなスペクトル線成分と連続成分で構成されます。

N(f)=iSiFi+ND(f)

スペクトル成分は、離散スペクトルの個別の項の合計で構成され、これは、局在化された周波数帯域関数 F(f)i にスペクトル線の強度 Si をかけたもので構成されます。大気中の酸素については、各スペクトル線の強度は次のように計算されます。

Si=a1×107(300T)3exp[a2(1(300T)]P.

大気中の水蒸気については、各スペクトル線の強度は次のように計算されます。

Si=b1×101(300T)3.5exp[b2(1(300T)]W.

P は乾燥した空気の大気圧、W は水蒸気分圧、T は周囲温度です。圧力の単位はヘクトパスカル (hPa)、温度はケルビン度です。水蒸気分圧 W は、水蒸気密度 ρ と次のような関係があります。

W=ρT216.7.

合計大気圧は P + W です。

各酸素の線について、Si は、2 つのパラメーター a1 と a2 によって変化します。同様に、各水蒸気の線は、2 つのパラメーター b1 と b2 によって変化します。このセクションの最後に記載している ITU の文献には、これらのパラメーターの表が周波数の関数として含まれています。

局在化された周波数帯域関数 Fi(f) は、周波数についての複雑な関数であり、以下に記載する ITU の参考文献で説明されています。また、この関数は、文献内で表にもなっている経験的モデル パラメーターに依存します。

パスに沿った狭帯域信号の合計の減衰を計算するために、関数はパス長 R を特定の減衰にかけます。それにより、合計の減衰は、Lg= R(γo + γw) となります。

この減衰モデルは、広帯域信号に適用できます。最初に、広帯域信号を周波数サブバンドに分割し、各サブバンドに減衰を適用します。次に、すべての減衰したサブバンド信号を足して、合計の減衰した信号を算出します。

参照

[1] Radiocommunication Sector of International Telecommunication Union. Recommendation ITU-R P.676-10: Attenuation by atmospheric gases 2013.

拡張機能

バージョン履歴

R2017b で導入

参考

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