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通過帯域変調

このモデルでは、複素正弦波を使用して複素変調信号を乗算し、周波数のアップコンバージョンを実行することで通過帯域変調を実行する簡単な方法を示します。一般に、システムのモデル化は複素ベースバンドでの実行が適切です。しかし状況によっては、実数のパスバンドでシステムをモデル化する必要があります。たとえば、隣接した帯域信号が非線形に処理されているために関心のある帯域で干渉を生じる場合などです。このモデルはこのような干渉の影響も示します。

例の構造

このモデルの通信リンクには以下のコンポーネントが含まれています。

  • ランダム データのソースとして使用される Random Integer Generator ブロック。

  • QPSK 変調とルート レイズド コサイン パルス整形を実行する変調器およびパルス整形フィルター。

  • 変調された信号を搬送波周波数で乗算する Upconverter ブロック。

  • トーン干渉の原因。この干渉には 3 次非線形性があり、有効と無効を切り替えることができます。非線形性が無効の場合は干渉は帯域から完全に外れますが、有効の場合はトーンの第 3 高調波が目的の帯域に入るため同一チャネル干渉の原因となります。

  • Eb/No モードに設定された AWGN Channel ブロック。変調形式が QPSK であるため、シンボルあたり 2 ビットを指定します。信号強度は 1/(2*8) ワットです。これは、変調器の元の信号強度が 1 ワットであるためです。ルート レイズド コサイン フィルターは信号を 8 倍にアップサンプリングします。これにより、強度が 8 分の 1 に減少します。周波数アップコンバージョン ブロック出力は信号の実数部のみを受け取るため、ここでも強度が (この場合は 2 分の 1 に) 低減されます。最後に、シンボル周期は 1e-6 秒で、Random Integer Generator ソースの元のサンプル時間と一致します。

  • 実数のパスバンドから複素ベースバンドに信号を変換する Downconverter ブロック。

  • 1 シンボルあたり、もとの 1 サンプルへ間引くルート レイズド コサイン パルス整形フィルターおよび QPSK 復調器ブロック。

  • BER および RMS EVM メトリクス計算ブロック。

結果と表示

シミュレーションを実行すると、2 つのスペクトル アナライザーと、1 つの散布図が開きます。

最初のスペクトル アナライザーは、パスバンドの信号と干渉信号を表示します。非線形性を無効にすると、トーン干渉源のスペクトルが目的の信号の帯域外に位置します。3 次非線形性を有効にすると、干渉の第 3 高調波が目的の信号の帯域内に位置します。

2 番目のスコープは、受信機のベースバンドにダウンコンバートされてはいるが、ルート レイズド コサイン フィルターがまだ適用されていない信号を示します。非線形性を有効にすると、トーン干渉源がベースバンド信号と共に表示されることに注意してください。

3 番目のスコープは受信信号の散布図を示します。非線形性の有効と無効を切り替えることで、散布図での干渉の影響を表示できます。非線形性を有効にすると、非線形性が存在しない場合よりも信号コンスタレーションが拡散します。

このモデルには、2 つの数値表示が含まれています。最初の数値表示にはリンクの BER が表示されます。BER 計算は、非線形性を有効または無効にするたびにリセットされます。

2 番目の数値表示は、EVM Measurementブロックで測定される RMS エラー ベクトル振幅 (EVM) です。

例を試す

Nonlinearity on/off ブロックをダブルクリックして、干渉信号の非線形性を切り替えます。これによって受信スペクトル、コンスタレーション、BER、および EVM で生じる変化を観察してください。

Eb/No パラメーターを変化させて BER 曲線を生成し、モデルの結果を理論上の結果と比較することができます。このモデルで非線形性を無効にすると、QPSK について想定される理論上の結果 [ 1 ] が得られることを確認してください。さらに、非線形性が BER 全体に与える影響を確認することができます。

その場合は、AWGN チャネル ブロックで Eb/No パラメーターの値を変更する、干渉信号のパワーを変更するなど、試してみてください。干渉信号の強度を変更するには、Interference with Nonlinearity サブシステムを開いて、ゲイン値を変更します。

参考

Downconverter は、単純な複素数乗算を使用してダウンコンバージョンを実行します。IF サブサンプリングを使用した、より効率的なダウンコンバージョンを示す例を複素マルチレート フィルターを使用する IF サブサンプリングで参照できます。

参考文献

  1. Proakis, John G., Digital Communications, Fourth Ed., sec. 5.2.7, New York, McGraw-Hill, 2001.