このページの内容は最新ではありません。最新版の英語を参照するには、ここをクリックします。
通信システム パフォーマンスにおける RF 効果の影響
この例では、Communications Toolbox™ ブロックを使用して RF トランシーバーの熱ノイズ、位相ノイズ、および非線形性劣化をモデル化する方法について説明します。このモデルは、劣化要因が通信システムのビット エラー レート (BER) に及ぼす影響を測定します。
概要
次の図に示されている ImpactOfRFEffectsOnCommSystemPerformance
モデルには、送信機、チャネル、受信機をシミュレートするためのブロックと、通信リンクのパフォーマンスを測定および可視化するためのブロックが含まれています。
送信機は以下をモデル化します。
ランダムなビットの 16QAM 変調された波形
スペクトル漏れを制限し、干渉 (ISI) を最小限に抑えるためのルート レイズド コサイン (RRC) パルス整形フィルター
理想的 (無限) な 3 次インターセプト (IIP3) をもつ無記憶パワー アンプ (PA)。IIP3 値を変更することで、より現実的な PA をモデル化できます。リンクの最後で生じる劣化の主要な発生源であるため、送信機 PA は 3 次の非線形性をモデル化します。
チャネルは 138 dB の自由空間パス損失をモデル化します。
RF 受信機のフロント エンドは、アナログからデジタルへの変換前に、受信機のアナログ部分をモデル化します。以下が含まれます。
0 dB の理想的なノイズ指数 (NF) と 20 dB の電力ゲインをもつ低ノイズ増幅器 (LNA)。NF を変更することで、より現実的な LNA をモデル化できます。リンクの終端で、ノイズは非線形性よりもはるかに重要な劣化の発生源になります。
最小の位相ノイズをもつ RF 復調器 (RFD)。この値を変更することで、より現実的な RFD をモデル化することもできます。16QAM リンクの場合、位相ノイズが劣化の重要な発生源になる可能性があります。
量子化の前に信号を適切にスケーリングする自動ゲイン制御 (AGC)。
残りの受信機は以下をモデル化します。
12 ビットの量子化を使用する理想的なアナログ デジタル コンバーター (ADC)
ノイズ除去および ISI 最小化のための RRC フィルター
硬判定 16QAM 復調器
モデルのテストベンチには次が含まれます。
送信機 PA の前後の電力計
ADC の前後のパワー スペクトル スコープ (非線形増幅、ノイズ追加、位相ノイズ、量子化のスペクトル効果を示します)
エラー ベクトル振幅 (EVM) 計算をオンにした、受信フィルター後のコンスタレーション ダイアグラム
リセット可能な BER 計算
モデルはプリロード関数にベース ワークスペース変数を作成することで、いくつかのパラメーター値を設定します。Model Parameters
ブロックの初期化を通じて追加のベース ワークスペース変数を作成することで、追加の値を設定します。
シミュレーションの実行
既定のモデル コンフィギュレーションでは EVM は非ゼロで、下のコンスタレーション ダイアグラムに、送信と受信の FIR フィルターの有限長が原因で発生する信号の歪みが示されています。
同じ既定のコンフィギュレーションで、下に示す受信パワー スペクトルにはノイズが含まれず、非線形の歪みもありません。スペクトルのサイドローブは送信および受信フィルター応答から得られます。
Error Rate Calculation
(ERC) ブロックはシステムの BER を計算します。シミュレーションの開始時に過渡的な影響を破棄する ERC ブロックを使用する既定のコンフィギュレーションでは、BER は 0 です。
例の検証
Model Parameters
ブロックを使用することで、複数の RF 効果を調査できます。既定では、Model Parameters
ブロック マスクの既定設定に、送信機の IIP3、LNA ノイズ指数、RF 復調器の位相ノイズ、ADC のビット数に関する歪みのない値が適用されます。一般的な degraded 値レベルは、ブロック マスクのこれらの各パラメーターの '%' の後に示されます。これらの劣化した値セットのいずれか 1 つを使用してシミュレーションを実行した場合、その効果をコンスタレーション、スペクトル、または BER で確認できます。
シミュレーションを実行しながら、Model Parameters
ブロックの次のパラメーターをリセットできます。
送信機の IIP3
LNA ノイズ指数
ADC のビット数
ADC フル スケール電圧
新しい位相ノイズ値を指定するには、最初にモデルを停止します。
たとえば、送信機の IIP3 が 15 dBm に設定されている場合、信号のスペクトルおよびコンスタレーション ダイアグラムは劣化した信号を示し、BER は約 2.8e-3 に劣化します。
手動スイッチを 2 回ダブルクリックすることで、シミュレーションの実行中に BER カウンターをリセットできます。これは、シミュレーション中にパラメーター値を変更するときに、BER 効果を調べるのに役立ちます。
まとめ
この例では、さまざまな RF フロント エンド劣化 (増幅器の非線形性および位相ノイズなど) が通信システムのスペクトル、EVM、BER にどのように影響を及ぼす可能性があるかについて説明しました。