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Simulink における cdma2000 の物理レイヤー
この例では、Simulink® 内で Communications Toolbox™ を使用して、(i) 規格準拠の cdma2000® 波形を取り扱う方法と (ii) 規格準拠の復号化器サブシステムを構築する方法を説明します。具体的には、このモデルは、無線構成 3、拡散レート 1 を使用した、基地局と移動局間のダウンリンク チャネルのフォワード基本チャネル (F-FCH) を主に対象としています。
はじめに
cdma2000 は、International Telecommunication Union (ITU) が策定した International Mobile Telecommunications (IMT)-2000 規格のフレームワーク内で開発された第 3 世代無線通信用の地上波無線インターフェイスです。cdma2000 システムの仕様は、Third Generation Partnership Project 2 (3GPP2) によって開発中です。
cdma2000 エアー インターフェイスは直接拡散テクノロジーです。つまり、符号化されたユーザー データを非常に広い帯域幅 (1x の場合 1.23 MHz) で比較的低速で拡散します。その際、非常に高速 (1.2288 Mcps) で、チップと呼ばれる一連の疑似ランダム単位を使用します。各ユーザーにユニークなコードを割り当てることにより、対象とするユーザーのコードを認識している受信機は目的の信号を受信した波形から正常に分離できます。
例の構造
フォワード cdma2000 物理レイヤーの主要コンポーネントは、送信基地局、チャネルおよび移動局 (受信機) です。
基地局は、規格準拠のフォワード波形で表されます。これは、関数
cdma2000ForwardWaveformGenerator
で生成され、MATLAB® ワークスペースからインポートされます。チャネルは、SISO フェージング チャネル、AWGN チャネルまたは空のサブシステムとして機能します。
移動受信機には、復号化器および受信機サブシステムが含まれます。これらが規格に準拠した波形の復号化に必要なすべての処理を実行します。
モデルのパラメーター
"Model Parameters" のラベルが付いた Configuration ブロックによって、生成する波形およびチャネル モデルを設定できます。
基地局
波形生成のために、データ転送速度、オーバーサンプリング比、QOF 指数およびウォルシュ符号をカスタマイズできます。カスタマイズするたびに、MATLAB ワークスペース内で規格準拠の波形が再生成されます。波形生成では、以下のステップが実行されます。
PN9 ビット シーケンスの生成
フレーム品質インジケーター ビット (CRC) の挿入
符号化前のテール ビット付加
畳み込み符号化
反復
パンクチャ
ブロック インターリーブ
マッピングおよびスケーリング
ウォルシュ符号による拡散
QOF (準直交関数) マスクによる拡散
ウォルシュ符号回転
PN (擬似ノイズ) シーケンスによる直交スクランブル
オーバーサンプリングされたルート レイズド コサイン フィルターによる送信フィルター処理
チャネル
既定のチャネル モデルには、マルチパス レイリー フェージングと加法性ホワイト ガウス ノイズの両方の効果が含まれています。あるいは、ガウス ノイズのみのソースとして、または空のサブシステムとしてチャネルを使用することもできます。モデルの左上隅にある Model Parameters ブロックを使用して、チャネル特性を設定できます。
受信機
受信機サブシステムで最も重要な部分は、RAKE 受信機およびチャネル推定器です。
これら 2 つのコンポーネント以外の受信機演算には、一部の波形生成の直接逆演算があります。
復号化器
復号化器サブシステムは、残りの波形生成演算の逆演算を行います。
結果と表示
BER 計算コンポーネントは、復号化された信号をデータ ソースの信号と比較します。モデルに変更が行われていないと仮定すると、波形生成で可能なすべての設定で BER がゼロになります。信号遅延が適切に処理され、フレームが揃えられていることに注意してください。
データをグラフィカルに表示するには、[Open Scopes] アイコンをダブルクリックしてスコープを開きます。スコープは、次の情報を表示します。
'Tx Waveform: Spectrum' スコープには、生成された波形のパワー スペクトルが表示されます。
'Tx Waveform: Constellation' スコープには、生成された波形が I-Q 平面に表示されます。拡散の結果、送信信号が散乱していることがわかります。
'From Channel' スペクトル スコープでは、チャネルの受信信号への影響がはっきりと示されています。
'From Channel' コンスタレーション スコープには、チャネルの I-Q 出力が表示されます。信号はまだ拡散されています。
'After Derotation' コンスタレーション スコープには、受信機サブシステムが信号を逆拡散し、チャネルで発生した位相回転を補正した後のデータが表示されます。信号は、まだいくらかマルチパス フェージング チャネルの影響を受けています。
'After Rake' コンスタレーション スコープには、チャネルで発生した減衰を RAKE 受信機が補正した後の RAKE 受信機の出力が表示されます。この段階でも一部のビット誤りが残っている可能性がありますが、後で効果的な復号化処理によって補正されます。
例で示されている Simulink の手法
cdma2000 の用途の説明に加え、この例では、Simulink 内でのモデリング手法についてもいくつか説明します。特に、この例では以下の方法を説明しています。
1.無線システムの実装での Communications Toolbox の広範な利用。
2.サブシステムを使用した、設計のアーキテクチャの表現。
3.MATLAB ワークスペースからの信号のインポート。
4.カスタム ビルド ブロックの再利用と共有。この例をライブラリから表示するには、モデルの右上隅にある [cdma2000 Library] アイコンをダブルクリックします。
5.構成ダイアログ ボックスを使用した、シミュレーションのパラメーターのコントロール。
6.エンドツーエンドでの遅延の処理およびフレームの整列の実行。
参考文献
[1] C.S0002-F v2.0: Physical Layer Standard for cdma2000 Spread Spectrum Systems.
[2] E.G. Tiedemann, "cdma2000 1X: New Capabilities for CDMA Networks," IEEE Vehicular Technology Society News, vol. 48, no. 4, pp. 4-12, Nov. 2001.
[3] TIA/EIA/IS-2000.2-A, Physical Layer Standard for cdma2000 Spread Spectrum Systems, Telecommunications Industry Association, Arlington, VA, March 2000.