小野測器が高精度車速計の開発期間を短縮

「MathWorks ツールを活用することで、開発、シミュレーション、コード生成、および PIL 検証でシームレスな環境が可能になりま した。コードを作成する代わりにモデルベースデザインを活用することで、計り知れないメリットが得られます」

課題

プロトタイプ車両用の高精度車速計を短納期で開発

ソリューション

MathWorks のモデルベースデザイン ツールを使用した、アルゴリズムの開発、組込みプロセッサ用の量産コードの生成、および PIL 検証の実行

結果

  • 開発期間を大幅に短縮
  • コード ベースを大幅に削減
  • システム モデルをテスト ベンチとして再利用
小野測器のGPS車速計「LC-8100」

自動車の性能試験を行う場合、ブレーキの性能や燃費を正確に測定するために、車の速度を毎時 0.1 km 以内の誤差で記録する必要があります。市販されている車速計には、全地球測位システム (GPS) テクノロジーを利用しているものもありますが、GPS システムはマルチパス フェージングの影響を受けやすいため、速度を高精度で安定して計測することはできません。たとえば、建物の影響によって GPS 無線信号が弱くなるような場所での試験では、測定の精度が劣化します。

小野測器では MATLAB®、Simulink®、および Embedded Coder®を活用して、マルチパス フェージングの影響を受けにくい、新しい高精度車速計を開発しました。 この新製品はIMU(慣性計測ユニット)を標準搭載し、衛星捕捉状態が悪化する場所でも高精度で、かつ安定した測定結果を得ることができ、GPSを使った車速計の適用範囲を格段に拡大しました。

小野測器の汎用計測グループのエンジニアである市川和宏氏は次のように述べています。「高精度GPS車速計の開発にモデルベースデザインを使用し、従来の開発手法よりもずっと効率的に開発することができました。当社では、実行可能な仕様を作成し、量産コードを自動的に生成した結果、開発期間を 大幅に短縮することができました。」

課題

小野測器のエンジニアは、自動車関連の測定機器や試験機器の開発における豊富な経験と知識はありましたが、高精度GPS車速計の開発において再利用可能な既存の設計モデルはありませんでした。必要とされる精度を達成するには、複数の状態変数を使用した複雑な行列演算を含む、新しいアルゴリズムを開発および実装する必要がありました。

プロジェクトの期間が短納期でしたが、開発チームはアルゴリズムをゼロから期限内に開発する必要に迫られました。小野測器では、車速計の開発においては、コードの開発を従来の方法で行っていました。新しい車速計の要件を解析した結果、特に厳しい納期を考えると、このプロジェクトに必要なアルゴリズムは大変複雑で、コード開発を手作業で行うのは困難という結論に達しました。

ソリューション

小野測器は MathWorks のモデルベースデザイン ツールを活用して、高精度GPS車速計の開発を期限内に完了しました。 まずシステムの動作がフロー チャートで表現され、その後、MATLAB で動作フローの各コンポーネント ブロックに対するアルゴリズムが開発されました。また、MATLAB でシミュレーションが行われ、コンポーネント レベルで機能が検証されました。次に Simulink で、MATLABで記述されたコンポーネントを埋め込んだシステムレベルのモデルが作成され、複雑な処理のタイミングとコンポーネント間の相互作用が検証されました。この実行可能な仕様書モデルを使用して数多くのシミュレーションが行われ、その結果、システム パフォーマンスが最大となるパラメーター値の組み合わせを特定することができました。

シミュレーションによって設計を検証した後、Embedded Coder を使用してモデルからコードが生成され、Texas Instruments™ 社の DSP に実装されました。

また、Embedded CoderのIDE リンク機能を使用して、実装のプロセッサ イン ザ ループ (PIL) 検証が行われました。その際、Simulink モデルをテスト ハーネスとして再利用し、DSP ターゲット上で実行されるコードが検証されました。

DSP 上での実行の結果、コンパイラーによって発生した不一致が見つかりました。この不一致は従来のワークフローでは見落とされていた可能性があります。さらに、Embedded CoderのIDE リンク機能を使用した PIL テストによって、量産へ移行する前にコードの問題を特定し、解決することができました。

このプロジェクトは現在量産段階へ移行しつつあり、小野測器では次世代の機器開発の基礎としてモデルを改善し続けています。

結果

  • 開発期間を大幅に短縮. 小野測器では、従来の開発手法を使用してコードを開発した場合、このプロジェクトは要求される納期どおりに完了させることは不可能でした。モデルベースデザインによりコードを自動的に生成することで、プロジェクト期間の短縮に成功し、プロジェクトを成功裏に終了させることができました。

  • コード ベースを大幅に削減. 小野測器のエンジニアは、手書きでコードを開発した場合、相当量のコードが必要であっただろうと推測しています。実際には当初の見積もりより少ない、MATLAB コードで同じアルゴリズムを実装することができました。市川氏は次のように述べています。「コードが少なくて済んだため、メンテナンスが容易で、バグの数も減少しました。」

  • システム モデルをテスト ベンチとして再利用. 市川氏は次のように述べています。「システムレベルの設計全体を Simulink で表現することで、1 つのコンポーネントに加えた変更が全体に与える影響を確認することができました。また、Simulink でアルゴリズムの動作を検証し、後で同じモデルを PIL テストのテスト ベンチとして利用したことで、組込みソフトウェアの品質を向上できました。」