manroland 社が商用印刷機用高精度コントローラーを開発

「MathWorks ツールにのおかげで、実装の詳細を気にすることなく、アイデアのテスト、新しいアルゴリズムの導入、および複数のコントローラーの比較を簡単に行えるようになりました。このため、コントローラーの構造をすばやく変更し、その結果をすぐに確認 できました。短時間で作業を繰り返し実行できるので、開発サイクル時間を大幅に短縮しながら、品質と機能を最適化できました」

課題

新しい設計プロセスを導入し、最先端の商業用印刷機のための高精度コントローラーの開発をサポートすること

ソリューション

コントローラーの設計とモデリング、リアルタイム シミュレーションの実行、量産システムへの実装に、MathWorks のモデルベースデザイン ツールを採用

結果

  • 開発期間を 50% 以上短縮
  • 以前は数週間要した設計の繰り返し作業を、数分で完了
  • エラー解析の合理化により、顧客への 回答時間を短縮

世界第 2 位の印刷システムのメーカーであり、オフセット輪転印刷機で市場をリードする manroland AG は、160 年以上にわたって印刷テクノロジーの革新を推進してきました。画像の鮮明さや、画像のページ内での正確な配置など、印刷の質をさらに向上させたいという顧客の要望に応えるため、manroland は新しい設計アプローチを必要としていました。つまり、複数のアイデアを試し、設計にテストを統合できるようなアプローチです。現在同社では、MathWorks のモデルベースデザイン (モデルベース開発、MBD) ツールを使用して高精度コントローラーを開発しています。

manroland の主任ソフトウェア エンジニアである Thomas Debes 氏は次のように述べています。「従来の設計プロセスとソフトウェアでは、達成できる範囲が限られていました。 このため、品質を新しいレベルに引き上げることのできるソリューションを必要としていました。現在は MathWorks ソフトウェアのおかげで、新しいアイデアや制御アルゴリズムをすばやくテストして、アルゴリズムを量産システムに取り入れることができます」

課題

最近のプロジェクトにおいて、manroland のエンジニアは商業用印刷機のカット レジスターの精度を向上しようとしていました。カット レジスターとは、印刷物を個々のページに断裁する前に、回転式カッターの下にあるマークのことです。高品質印刷の雑誌では、断裁の精度は 0.3 mm 以内でなければなりません。印刷物は印刷機の中を毎分最高 15m の速度で移動するため、制御アルゴリズムで断裁の見当合わせに与えられる時間はわずか 10 ミリ秒です。Debes 氏は次のように述べています。「必要なスピードと精度を実現するには、既存の制御ソフトウェアを完全に書き直す必要がありました」

manroland のエンジニアは、新しい制御アルゴリズムのテストと、設計のシミュレーションおよび比較を実行でき、さらに最終テストと実装のために高速でリアルタイム コントローラーを構築できる開発環境を必要としていました。

ソリューション

manroland では MathWorks のモデルベースデザイン ツールを使用して、最新の印刷機で使用するカット レジスターのための、量産可能な制御システムの設計、テスト、実装を行いました。

まず Simulink® で、稼働中の印刷機から収集されたパフォーマンス データを取り入れた、印刷機のプラント モデルが構築されました。次に、PID コントローラーに基づく制御システムの Simulink モデルが開発され、最適な方法を特定するためにいくつかの制御方法の開ループ テストが行われました。このモデルでは、DSP System Toolbox™ のカウンター ブロックとフィルター ブロックが使用されました。また、Stateflow® と Simulink Coder™ を利用して、稼働状況を制御する有限ステート マシンが実装されました。

プラント モデルとコントローラー モデルをリンクした後に、Simulink で閉ループ シミュレーションが実行され、コントローラーが検証されました。そして、非リアルタイム シミュレーションでコントローラーの機能的要求仕様が満たされたことが確認された後、Simulink Coder でプラント モデルとコントローラー モデルから C コードが生成されました。

さらに Simulink Real-Time™ を使用して、プラント モデルのコードを 1 台の標準的な PC で実行し、コントローラー モデルのコードは別の PC で実行して、リアルタイム シミュレーションが行われました。これらの 2 台の PC は、User Datagram Protocol (UDP) とフィールドバスを通じて通信を行いました。

コントローラー モデルには、Simulink を使用して TCP/IP インターフェイスが実装され、機械の速度などの設定ポイントの値を 3 台目のコンピューターからリモートで設定できるようにしました。

また、Simulink プラント モデルを使用して、実際の印刷機では再現が難しい、印刷機が異常な動作を見せた場合をシミュレーションしました。Debes 氏は次のように述べています。「MathWorks のツールを使用していなければ不可能だった、障害をもつ多くの状況でコントローラーをテストできました」

その後コントローラー モデルを微調整して性能が最適化され、Simulink Coder と Simulink Real-Time を使用してコントローラーの再生成と実装が行われました。

次に、Simulink Real-Time の PC とプラント モデルの接続が解除され、同じフィールドバスとネットワーク インターフェイスを使用して、Simulink Real-Time の PC が manroland の顧客の印刷工場で稼働中の印刷機に接続されました。シミュレーションが非常に正確であったため、コントローラーは稼働環境ですぐに設計通りに機能しました。それ以来、エラー率、精度、応答時間のいずれも顧客の仕様を常時満たすものとなっています。

結果

  • 開発期間を 50% 以上短縮. Debes 氏は次のように述べています。「MathWorks のモデルベースデザイン ツールを使用することで、約 10 ヶ月でコントローラーの開発を完了し、開発期間を 1 年以上短縮することができました。MathWorks ツールのおかげで製品化までの時間を大幅に短縮でき、他社との競争において大きな強みとなりました」

  • 以前は数週間要した設計の繰り返し作業を、数分で完了. Debes 氏は次のように述べています。「非常に複雑なモデルでも、設計とデバッグの繰り返しを約 10 分で完了できました。Simulink でコントローラーの構造を変更した場合でも、Simulink Coder でコードを再生成するだけです。従来の方法であれば、同様の変更を行うのに 1 週間以上かかったでしょう」

  • エラー解析の合理化により、顧客への 回答時間を短縮. Debes 氏は次のように述べています。「MathWorks ツールを利用すれば稼働中の印刷機からデータを収集して、障害の状況を社内でシミュレーションできます。これによって、障害発生時に顧客への対応にかかる時間が大幅に短縮されます。また、当社の印刷機は世界中で販売されているため、サポートや出張にかかる費用も削減できます。さらに、顧客の営業時間に制約されることがなく、トラブルシューティングを行うために顧客のリソースを利用することもありません」