Lear 社がモデルベースデザインを適用して、高品質のボディ制御エレクトロニクスを短期間で完成

「モデルベースデザインを採用したのは、高品質のシステムを短時間で開発するためだけではなく、これが賢明な選択だと考えたからです。最近、当社では入札によってプロジェクトを獲得しました。競合各社の中にはこのプロジェクトの納期が厳しいために入札を 見送ったものもありましたが、モデルベースデザインを採用することで、当初の納期に問題なく間に合わせることができました」

課題

高品質の自動車用ボディ制御エレクトロニクスを設計、検証、実装すること

ソリューション

シミュレーション、SIL テスト、HIL テストを通じた初期検証と連続的な検証を可能にするために、 モデルベースデザインを適用

結果

  • 開発初期に要求仕様を検証
  • 開発期間を 40% 短縮
  • 保証問題の報告なし

自動車メーカーは、サプライヤーに対して、ECU ソフトウェアにより多くの機能を搭載するように要求しています。一方サプライヤーでは、コストを削減するために、ワイパーやライト、ウィンドウ、防犯システムからパワー系統まで、各種ボディ エレクトロニクスのための多くの制御機能を単一の ECU に統合することが多くなっています。ECU は一般的に、ボディ コントロール モジュール (BCM) またはスマート ジャンクション ボックスと呼ばれています。

システムの複雑さが急激に増し、業界全体において、要求仕様が適切に定義されなかったり、納期が守られなかったり、品質上の問題が発生したりするケースが増えています。Lear Corporation では、モデルベースデザイン (モデルベース開発、MBD)を適用してボディ制御エレクトロニクス システムを開発、検証、実装することで、これらの問題に対応しています。

Lear のシステムエンジニアリングのスーパーバイザーであるJason Bauman 氏は次のように述べています。「モデルベースデザインを利用すれば、実装を行う前に要件に関する問題を発見して解決できます。量産コードの自動生成と連続的な検証のおかげで、高品質のプロジェクトを予定通りに、予算内で 終わらせることができます」

課題

自動車のエレクトロシステムとパワーシステム系統は次第に複雑さを増してきているため、明確で完全に記述された、矛盾のない要求仕様が必要となっています。しかし、従来の手作業でコードを作成するワークフローでは、あいまいな要求や矛盾する要求が開発プロセスの終盤になって見つかることが多く、納期に間に合わなかったり、予算を超過したりする結果となっています。 また、何百もの入出力や高度なステート ロジックをともなうコントローラー用コードを手作業で作成した場合、管理や再利用が難しくなります。Lear の主任技術者、Jinming Yang 氏は次のように述べています。

「以前は、システムの特定の部分に技術変更要求を適用する場合、システムの他の部分に発生する問題を予測するのは困難でした」

ソリューション

Lear ではモデルベースデザインを採用して、多数のボディ エレクトロニクス システムの設計、検証、実装を行うことにしました。

ある BCM のプロジェクトでは、エンジニアが顧客からの要求仕様を分析して、システム全体を室内灯や外部のライト、バッテリ 管理、発進制御などのコンポーネントに分割しました。

次に、MATLAB®、Simulink®、Stateflow® を利用して、各コンポーネントに対し、すべての要求される入出力を含め、完全に機能するビヘイビア モデルを開発しました。

初期の単体テストでは、Simulink で Signal Builder ブロックを使用してテスト スティミュラスを生成し、モデルに組み込みました。またSimulink で機能テスト用のプラント モデルを開発しました。

さらに Simulink Check™, Simulink Coverage™, と Requirements Toolbox™ でモデル カバレッジを解析し、判定カバレッジと変更条件判定カバレッジ (MC/DC) を含め、満足のいくモデル カバレッジが達成されるまで、テスト ケース、設計、要求仕様の調整を繰り返しました。

このようにしてほぼ 400 個のユニット モデルを検証した後、Embedded Coder® で C コードの生成が行われました。このコードはSIL (Software-in-the-loop) テストによって検証され、SIL テストではユニット モデル テストのために生成されたテスト ケースが再利用されました。 Lear のエンジニアは各ユニット モデルに対して生成したコードを 20 ~ 30 の機能レベルのコンポーネントに統合した後、さらにこれらのモデルを完全なシステム モデルに統合しました。この時点で、顧客の立会いのもとでコンポーネントと完全なモデルのシミュレーションを行い、元の設計仕様であいまいだった点を明確にしました。 その後、MATLAB スクリプトを使用して、HIL (Hardware-in-the-Loop) テストと車両ベース テストに備えた、テスト ケースのテスト ベクターへの変換が自動化されました。またハードウェアからのテスト結果をイン ポートおよび解析するために、追加の MATLAB スクリプトが作成されました。

Lear は世界各地に点在する開発チームの間でモデルを共有して作業を分担することで、1 日の作業時間を有効に活用することができました。たとえば、いくつかのケースでは、北米のエンジニアが行った設計変更を、その日の夜にアジアにいるエンジニアがテストするといった体制がとられました。

また、国外の顧客のための別のプロジェクトでは、技術用語の翻訳の問題から特定の要求がよく

結果

  • 開発初期に要求仕様を検証. Bauman 氏は次のように述べています。「BCM プロジェクトでは、Simuulink で実行可能な機能モデルを使用して仮想的な統合とテストを行うことで、実装前に要求仕様に関する問題を 95% 以上特定することができました。モデルベースデザインを適用する前はわずか 30% の問題しか特定できなかったことを考えると、これは大きな進歩です。また、問題の解決もずっと初期の段階でできるようになりました。以前のようにプロジェクト開始から 1 年以上経ってからではなく、多くの場合わずか 6 週間で解決できました」
  • 開発期間を 40% 短縮. Yang 氏は次のように述べています。「BCM プロジェクトでは約 70 万行のコードを生成し、開発サイクルを通じてテスト ケースを再利用しました。この方法によって、全体的な開発期間を約 40% 短縮できました」
  • 保証問題の報告なし. Bauman 氏は次のように述べています。「ソフトウェアが複雑になるにつれて、業界全体で保証問題の件数が増加しています。モデルベースデザインを適用して当社が完成した最新の製品では、作業完了後 12 か月が経過しても、アプリケーション ソフトウェアに関連する保証問題はまだ 1 件も発生していません。これは記録的なことで、当社の現在および将来の顧客ともに、満足していただけることでしょう」