Broadcom 社が低コスト3G向け半導体製品の開発に MATLAB プロダクトファミリを採用

「MATLAB はアルゴリズムの開発や検証を行う理想的な環境です。Simulink は MATLAB に統合されており、これらのツールにより我々は、ハードウェアを用いた場合と同様の検証結果を得ることが可能となり、きわめて迅速に開発を進めることができました。」

課題

2G 向けのチップと端末内で混在利用可能な低コスト 3G 向けベースバンドチップの開発

ソリューション

MATLAB プロダクトファミリを用いた、アルゴリズム開発やチップ内サブシステムのモデル化

結果

  • 数百万ドルにのぼるメーカーの製造コストの削減
  • 量産品へのモデルの再利用化
  • 開発期間の半減

SPinneRchipアドオンW-CDMaベースバンドプロセッサ

W-CDMA のような3Gシステムの導入により、移動体通信機器における高速データ通信や音声品質の改善が実現されます。GSM やGPRS のような既存の 2Gシステムと同様にW-CDMAをサポートするため、各携帯端末メーカーは開発コストや部品コストを最小限に抑えながら、市場への迅速な製品投入を行う必要性に直面しています。

Broadcom 社(買収される前は Zyray Wireless 社)は、W-CDMA 通信機器用チップである SPINNER ファミリの開発を迅速に行うため、モデルベースデザインを適用しました。特許となっている自空間処理技術を基にしたアドオン可能な W-CDMA のベースバンドプロセッサである SPINNERchip と既存の GPS や GPRS 向けの部品と組み合わせることにより、携帯端末メーカーは、コスト効率の良いデュアルモード機器を開発することが可能となりました。

「MATLAB プロダクトファミリによって、我々は W-CDMA 向けの製品ファミリを早く市場に投入することができました。そして、2チップ構成とすることによって、携帯端末メーカーは大幅にコストを削減することが可能となりました。」とマーケティングマネージャーである Larissa Kogan は説明しています。

課題

W-CDMA は、全く新しい標準規格であり、また、GSM よりもはるかに複雑な規格です。すでに機能しているシステム内に、W-CDMA の仕様を追加することに成功した会社はほとんどありませんでした。

「複雑なW-CDMA システムをすでに機能しているハードウェアの一部に取り込むことが主な課題です。」とシステムエンジニアリングディレクターである Mark Kent は言っています。

Broadcom 社に買収される以前、Zyray Wireless 社は比較的新しい会社であったため、予定通り、2年以内に製品を市場にリリースすることによって、信用を得なければなりませんでした。このゴールを達成するため、彼らはハードウェアを用いた実装に近い位置付けでソフトウェア設計を行う必要がありました。

ソリューション

MATLAB と Simulink による設計フローの手始めに、Broadcom 社は端末メーカーが2G向けチップと共に利用できる W-CDMA 向けのチップを開発しました。

W-CDMA の仕様に基づいて、Broadcom 社は MATLAB を使って送受信フィルタ、マルチパスサーチ、Rake受信、Forward Error Coding(FEC)等のアルゴリズムを開発しました。彼らは、MATLABの可視化機能を用いて、アルゴリズムや信号の検証を行い、その後スペクトル解析を用いて仕様に対する適合性検査を行いました。

「MATLAB の解析機能、可視化機能、データ操作機能によって、システムの機能や性能をより簡単に確認することができた。MATLAB 以外の環境では、このようなことはできないでしょう。」

その後、Simulink を用いて、要求仕様に沿ってシステムのモデル化と検証を行いました。アルゴリズムの開発と検証の後、Simulink の S- Function を用いてカスタマイズブロックを作成しました。MATLAB と Simulink により、基地局、無線チャネル、端末などを含む様々なサブシステムをモデル化しました。各サブシステムは、他のサブシステムのテストベンチに利用することができました。Simulink により、システム全体をハードウェア設計者がより容易に実現可能な構造的なサブシステムに迅速に分割することができました。

そして、カスタマイズブロックから生成されたテストベクタを用い、ハードウェアエンジニアが VHDL で記述したテストベクタの検証を行いました。

「我々のハードウェアエンジニアはVHDLで記述しなければならない機能を把握するために Simulink を使用しています。これはハードウェアエンジニアにとって非常に優れた手引き書となっています。」

Simulink により、Broadcom 社は管理の容易化、再利用、モデル内への組込みのために、ハンドコーディングしたCコードをカプセル化しました。実現設計レベルにおいても、彼らはシミュレーションデータをより詳細に解析するために MATLAB を利用しました。

「C言語によってシステム全体をシミュレーションすることは、ほとんど不可能だったでしょう。MATLAB であれば、各信号ベクタの生成と分割を数行の記述によって実現できます。そして、Simulink により、ハードウェア効率の良い実装方法を決定するができます。」

Broadcom 社は、実現設計レベルにおいては ASIC 開発ツールを使ってハードウェアを実現しました。

SPINNERchip1.1 のリリースにより、Broadcom 社は 3G 向けのコプロセッサをいち早く市場に提供した会社のうちの1社とな

結果

  • 数百万ドルにのぼるメーカーの製造コストの削減. MATLAB と Simulink を使うことによって、Broadcom 社は、シングルチップ実装と比較して携帯電話メーカーが10~20ドルのコスト削減が可能となるチップを提供し、1プロジェクトあたり2~3百万ドルのコスト削減を実現しました。
  • 量産品へのモデルの再利用化. Broadcom 社はバージョン1.0のコアブロックをバージョン1.1の量産製品に有効利用しました。「我々が作成した Simulink ブロックは、更なる機能拡張時における基盤となると共にタイムラインを提供するでしょう。」
  • 開発期間の半減. 「全てをC言語のプログラミングで実現していたら、少なくとも2倍の労力が必要だったでしょう。なぜなら、MATLAB のように迅速かつ容易にアルゴリズムを把握できなかったでしょうから。また、初期段階でシステムがどのように機能するかについての構想を得るだけのために、システム全てをハンドコーディングしなければならなかったでしょう。さらに、設計をハードウェア構造に近づけるために、別の再コーディング作業が必要となっていたでしょう。」